ベネズエラのマドゥーロ大統領も正々堂々と出席(RSvia Fotos Publicas)
ブラジルはBRICS議長国として、その中国とロシアの存在を無視することはできない。 国際関係のアナリストであるセザル・ロエデル氏は、BRICSの目的は多極化である一方、実際の方向性は中国とロシア両国の利害が優先され、ブラジルはその影響力に屈することになると予測。ブラジルの外交政策が「独裁政権に対して従属している」と批判し、特にルーラ大統領とセルソ・アモリン大統領付外交問題特別顧問の影響を指摘。「彼らは、ブラジルが『指導的な役割』を果たす新たな国際秩序が自国に有利に働くと信じている。だが実際には、その秩序の中では独裁的な体制が支配し、ブラジルはロシアと中国の操り人形に過ぎないだろう」と評価した。 一方で、「BRICSの反西洋的な立場がブラジルに与える影響については慎重に考慮しなければならない」との声も強い。ブラジルは伝統的に西洋諸国との協力関係を重視してきたが、その立ち位置を調整する必要がある。特に、ブラジル内での民主主義や人権に対する価値観が、BRICS内の一部の国々の政権体制とは相容れない部分があるという指摘があるからだ。従来の中国やロシアに加え、新加盟国としてイランやアラブ首長国連邦などの「非民主的」な政権が増えたこともブラジルの立場を複雑にしている。 今後、ブラジルがBRICS内でのリーダーシップを強化するためには、これらの価値観のギャップを乗り越え、バランスを取ることが重要な課題と
カザンBRICS会議の様子(Kremlin)
ブラジルは議長国として、米ドルを使用しない代替的な決済手段「BRICSペイ」の推進を引き継ぐことになる。このシステムは、BRICS諸国間で自国通貨による支払いや受け取りが可能な決済プラットフォームで、2018年から導入が議論されていたが、ロシアがSWIFTから排除されたことを契機に実現に向けた動きが加速した。 BRICSペイは、国際貿易でのドル依存を減らし、西洋主導の金融システムからの独立を目指すと同時に、自らの経済的影響力を強化しようとする狙いがある。特に中国とロシアにとって重要な意味を持ち、この2大圧力により、ブラジルはこれまで以上に導入への加速を求められると見られている。 この動きは、BRICSの経済的な側面を越え、政治的な立場を強化するための重要なツールとして機能する可能性が高いと専門家らは見ている。 一方で、1月20日に就任するトランプ次期大統領は、米ドルの代替通貨創設に強く反対しており、そのような動きを試みる国に対して100%の関税を課す可能性があると警告している。
G7に対抗する形で拡大するのか
24年10月のBRICS首脳会議で、新たに「パートナー国」枠を創設し、キューバ、ボリビア、トルコ、ナイジェリア、インドネシアなど13カ国参加が承認された。 ブラジリア大学経済学部のジョゼ・オレイロ教授は、BRICSの拡大は「覇権争い」を象徴しており、世界各地で影響力を拡大しようとする中国とロシアの地政学的な利益が強く反映されていると指摘。「例えばパートナー国に加盟したキューバは、BRICSには経済的利益はほぼない。だが、実際には新たな影響圏を創出することになる。これは経済的利益ではなく、地政学的な関心の問題だ」と説明した。 BRICS拡大がブラジルにどのような意味を持つかについては専門家の間で意見が分かれており、ブラジルの米国市場への依存度を減少させる可能性がある一方で、他の新加盟国との経済的な利益調整が難しくなるリスクも存在するという。 BRICSがG7に対抗する形で影響力を行使する一方で、その内部での意見対立や協調の難しさも浮き彫りになっている。 今後、BRICSの拡大は経済的な側面にとどまらず、政治的・戦略的でも注目が集まることになる。特に、BRICSがグローバル・サウスの代表として、既存の国際秩序に挑戦する姿勢を強化している点が、世界の地政学的動向にどのように影響を与えるかが、今後の重要な焦点となると専門家らは指摘している。