朝米首脳の熾烈な駆け引き…対話の接点見出せるか
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長とドナルド・トランプ米大統領が熾烈な駆け引きを繰り広げている。トランプ大統領がメディアとのインタビューで「金正恩(国務委員長)に連絡する」と述べ、対話のシグナルを送ったが、金正恩委員長は「核の盾の強化」を掲げ、それを無視した。「絶対に核を放棄しない」という態度を維持し、「非核化交渉はない」という従来の路線を再確認したのだ。二人はまだ対話に乗り出す接点を見出せずにいる。
北朝鮮官営「労働新聞」の29日付の報道によると、金委員長は「核物質生産基地と核兵器研究所」を視察し、「今年の兵器級核物質生産計画を超過遂行し、国の核の盾を強化することで画期的な成果を成し遂げなければならない」と指示したという。同紙は金委員長の訪問した日付と施設の具体的な位置については明らかにしなかった。
北朝鮮が金委員長による核物質生産基地・核兵器研究所の視察を報道したのは、昨年9月13日の「労働新聞」の初報道以来だ。特に今回の報道は、トランプ大統領が23日(現地時間)のFOXニュースのインタビューで、金委員長は「宗教的狂信者ではなく『賢い男』(smart guy)」だとし「彼に連絡する」と述べた後に出てきた。そのうえ、トランプ大統領は就任当日(20日)にも、「金正恩は核を持っているが(nuclear power)、我々はうまく行っていた。彼は私の復帰を歓迎すると思う」とし、「会って話したい」という意向をほのめかしている。
金委員長が訪問した両施設は、北朝鮮の核能力の頭脳や心臓に匹敵するだけに、今回の報道が発信する政治的シグナルであることは明らかだ。金委員長が北朝鮮の安全保障について「最も奸悪な敵対国との長期的対決が避けられない状況」だとしながらも、「核の盾の不断の強化」を強調した部分で、簡単に交渉テーブルに座るつもりはないという意向が読み取れる。金委員長は「力による平和、力による安全保障」を強調し、「核対応態勢を無限に進化させることは確固たる政治・軍事的立場」だと明らかにした。金委員長はトランプ大統領の再選が確定した直後の昨年末、労働党中央委員会第8期第11回全員会議(2024年12月23~27日)でも、米国を「反共を国是としている最も反動的な国家的実体」だとし、「最強硬対米対応戦略」を掲げた。
ただし、「これまで歩んできた道を突き進む」という金委員長の態度が「頑なな拒否」とは限らない。核物質の生産基地を視察した事実を公開することで、「今この時間にも北朝鮮の核能力は強化されている」という無言の示威を行い、「追い込まれて焦っているのは、私ではなくトランプの方」であることを知らしめようとしているともいえる。
こうした中、米国家安全保障会議(NSC)のブライアン・ヒューズ報道官は28日、「聯合ニュース」のインタビューで、「トランプ大統領は政権1期目と同様、北朝鮮の完全な非核化を目指す」と明らかにした。トランプ大統領が北朝鮮を「核保有国」(nuclear power)とし、「現実」に焦点を合わせたとすれば、NSC報道官は「原則」を強調し、一種の「役割分担」をしているとみられる。
「非核化」問題をめぐり全く異なる認識を示した朝米が、まず「核能力の凍結」と制裁緩和および関係正常化の推進などをまとめて「段階的包括交渉」を試みるまでは、少なからぬ時間を要するというのが大方の見解だ。ご飯を食べるためには、苗を植えて夏の間に育てて収穫をし、米を洗って釜で炊くという長い忍苦の時間が欠かせない世の理と変わらない。元政府高官は30日、「核問題をめぐる朝米の交渉の試みを韓国は積極的に支持・鼓舞し、その中で韓国の役割を拡大しようとする戦略的アプローチを考えなければならない」と語った。