今回からタイトルの頭に「経営者保証ガイドラインを斬る」を入れました。今回で10回目です。私が斬られないように気合いを入れて書かせていただきます。
経営者保証を見直す場合に、中小企業側がまずすべきことは、次の2つです。
(1) 現状を確認すること
(2) 良きアドバイザーに相談すること
今回は、現状を確認することについて説明します。
自社の財務状況、融資の状況、保証の状況、担保の状況について、資料を整理して、現状がどうなのかを中小企業が認識すること、これが最初にすべきことです。次のような資料を揃えます。
①自社の財務状況
自社の債務者区分が推測できるようなもの、過去の推移が分かるもの、今後の見込みが分かるもの
決算書、個別注記表、科目内訳書、税務申告書、事業計画書等
②融資の状況
金融機関別の融資残高、融資の種類、契約の内容が分かる資料
③保証の状況
金融機関別の保証人の氏名、会社との関係、保証金額等がわかる資料
保証契約書の写し、管理資料等
④担保の状況
金融機関別の担保提供資産、その資産の所有者、担保の種類、担保設定額、担保提供資産の時価が分かる資料
全部事項証明書、固定資産税評価証明書等
これらの資料を基に、経営者保証に関して、自社の目指すべき方向性を検討します。
自社だけでできる場合もありますが、できればアドバイザー(専門家)に相談して方がいいでしょう。
何をどのように検討するかは、次回、解説します。
元地方銀行マンのオッサン公認会計士でした。
では、また。
前回は、経営者保証に関するガイドラインの「3.ガイドラインの適用となり得る保証契約」について、私の意見も交えて、解説しましたが、今回は、その次の項目である「4.経営者保証に依存しない融資の一層の促進」についてです。
この項は、(1)主たる債務者及び保証人における対応と(2)対象債権者における対応の2つに分かれています。
まずタイトルですが、「経営者保証に依存しない融資の一層の促進」です。私の経験からは、現在の融資のほとんどは経営者保証に依存していません。経営者が資産をたくさん持っているから融資をしているわけではありません。(中には、そんな融資案件もありますが、数はものすごく少ないと思います。)
じゃぁ、何のために経営者保証をとっているのかというと、一番の理由は、経営者に対する「規律付け」であろうと考えます。
中小企業の場合、経営者と中小企業が一体となっている場合がほとんどなのです。だから、好き勝手にやった末に、
「これは企業が借りてんだから、俺とは無関係だよん。」
なんてことを言ってもらっては困るということです。
逆に、きちんとしている経営者であれば、業績、財務状況、担保等を考慮して、経営者保証を限定しても良いと金融機関が考えるのではないでしょうか。
このように金融機関が、「きちんとしている」と判断するための項目が、(1)主たる債務者及び保証人における対応にあげられています。次の3つです。
①法人と経営者との関係の明確な区分・分離
②財務基盤の強化
③財務状態、適時適切な情報開示等に経営の透明性確保
これらの3つができていたなら、なんでもかんでも経営者保証をとるということはしないでくださいと当ガイドラインは言っているのです。
当ガイドラインに強制力はありませんので、最終的には、金融機関の判断となります。
「なんだよぉー。結局、最後は金融機関に依存じゃねぇか。」
と思われる方もいると思います。
次回以降、①②③について、私の考え方を交えて解説してみようと思います。ハチャメチャにならないように気を付けます。
こんなかんやについて書いた拙著「本音を言わない銀行、言っても解らない中小企業の社長」は、左のおススメの本から購入できます。是非、ご一読ください。
地方銀行出身の52歳のオッサン公認会計士でした。
では、また。
中小企業の側に立つとすれば、
はじめに
1.目的
2.経営者保証の準則
は、すっとばして、
3.ガイドラインの適用対象となる保証契約
からが重要となります。
対象となるのは、基本的には、中小企業の経営者(個人)が債務保証をしている場合です。ただし、経営者の配偶者や事業承継予定者等が対象となる場合もあります。
中小企業及び保証人が、反社会的勢力でなく、弁済について誠実であり、銀行等の金融機関の請求により、それぞれの財産状況等(負債の状況を含む)について、適時適切に開示していいることが必要です。
これって当たり前じゃん、と思われる方もいるかもしれませんが、意外とそうではありません。
私は、22年間、地方銀行に勤務していた経験を有する公認会計士ですが、私の経験上、弁済について不誠実であったり、保証人個人の財産について情報を提供しないような経営者もいたことは事実です。
この点については、金融機関の判断になると思いますが、中小企業の側からは抑えておく重要なポイントだと考えます。
弁済について誠実であることは当然のことですが、個人財産をすべて開示することは、諸刃の剣であり、中小企業の業績、担保状況、今後の方向性等を考慮して、慎重に判断した方がいいと思います。
拙著「本音を言わない銀行、言っても解らない中小企業の社長」でも書きましたが、中小企業の経営者に対するアドバイスとして、融資を受けている金融機関以外に裏金を貯めることを薦めています。「いざlというときの金融機関への対抗手段とするためです。(左のおススメの本から購入できます。よろしければ、いや、是非、ご一読くささい。)
中小企業金融を経験しているような良いアドバイザーが近くにいれば、その方に相談するといいでしょう。顧問税理士に相談しても構いませんが、顧問税理士だけに相談して決断するのはやめた方がいいです。税理士は税務の専門家であり、中小企業金融の専門家でも、経営管理の専門家でもないからです。顧問税理士を含め、複数の方に相談して、個人財産をすべて開示するかどうかを決めることがいいでしょう。
次回は、最重要ポイントである中小企業及び保証人が、どのような対応をとれば、いいのかについて解説したいと思います。
このブログを読んでくれた中小企業の経営者の方々が、良い方向に向かうことを願います。
地方銀行出身の公認会計士、中小企業診断士、税理士のオッサンでした。
では、また。
経営者保証に関するガイドラインは、ガイドライン本文が14ページ、Q&Aが25ページとなっています。それほど多くありません。
全部で、8つの大きな項目から成っています。
1.目的
2.経営者保証の準則
3.ガイドラインの適用対象となり得る保証契約
4.経営者保証に依存しない融資の一層の促進
5.経営者保証の契約時の対象債権者の対応
6.既存の保証契約の適切な見直し
7.保証債務の整理
8.その他
これらのうち7.保証債務の整理に多くのページがあてられています。これは、現状において、業績の悪くなった中小企業の事業再生が進まないことが一因としてあると思われます。
当ガイドラインの冒頭の「はじめに」でも、経営者保証が、「早期の事業再生を阻害する要因となっている」としています。
でも、事業再生が進まない第一の要因は、金融機関の数が多過ぎるということだと私は考えています。第二の要因は、経営者の認識力不足です。問題を先延ばしにしていると思われます。
業績が悪くても債務超過でも、金融機関等がなんとかしてくれるんだから・・・?
しかし、私の考えは、前回のブログで書いたように、経営者保証が現状のままでいいというものではありません。
次回以降、当ガイドラインの解説をしながら、私の意見を述べさせていただきます。
こんなかんやが書かれた拙著「本音を言わない銀行、言っても解らない中小企業の社長」は、左のおススメの本から購入可能です。是非、ご一読ください。
元地方銀行マンの公認会計士、中小企業診断士、税理士のオッサンでした。
地方銀行には22年勤務しましたが、融資業務だけでなく、ベンチャー投資、M&A、コンサルティング、ビジネスマッチング、企業再生等を経験できました。
では、また。
経営者保証に関するガイドラインに期待する面は、当該ガイドラインが活用されることにより、管理がきちんとした中小企業が多くなってくれれば良いということです。
経営者保証額≠融資額となるためには、経営成績(利益額)、財政状態(健全な資産)、内部管理ができていること、経営者の資産と会社の資産が分離されていること等が必要と考えれれます。
利益や資産内容も大切ですが、特に、管理が重要であると私は考えています。
きちんと管理ができている中小企業は、経営者保証について、必ずしも融資額と等しくなくても良いと考えています。
もう一方の危惧する面は、「中小企業が弱い立場だから」という美名の下に、本来あるべき基準を逸脱したような、経営者保証に関するガイドラインの行き過ぎた適用が行われることです。
何でもかんでも、経営者保証をゼロにするというようなことです。その状態は経営者の責任もゼロになるということです。
私は、経営者保証が、0%か、100%か、ではなく、その間であるべきで、それは中小企業毎に違っていい、会計年度毎に変わっていいと考えています。
そうすることで、融資する側も、融資を受ける側も、今よりもきちんと管理をするようになれば、簡単に業績がぶれない中小企業が多くなるものと思います。
経営者保証に関するガイドラインが、どのような形で浸透していくかは、今後の状況を見なければ分かりませんが、見せ掛けではなく、実質的に中小企業の管理強化につながってくれることを願っています。
こんなかんやが書かれた拙著「本音を言わない銀行、言っても解らない中小企業の社長」は、左のおススメの本から購入可能です。
是非、ご一読ください。
元地方銀行マンの公認会計士、中小企業診断士、税理士のオッサンでした。
では、また。