ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

出店のババ・・・2

2005-02-22 | 第3話 出店のババ
 いつからだろうアシュラムの別館下に露店が出始めたのは。ガンガを背にして巾30㎝長さ50㎝ぐらいの商品ケースを置いてババが坐っている。何やら怪しげな品物を売っているのが出店のババだ。10時からの第2瞑想までまだ時間がある、ひやかしで遊んでいた。商売気のないババだ、客が立ち止まってケースを覗いているのに相手もせずにぼっと坐っている。何か面白い物を持っているのではないか、ぼくはケースの横に坐り込んで中を覗いている。外国人が覗きにきた事などなかったのだろうか、出店のババは落ち着きがない。銅の台に安物の石をつけたリングや菩提樹の実、それに法螺貝などガラクタも多いが中には興味を引く品物もある。一見、哲学者の風貌で顔面は髭におおわれ眼光は鋭い。しかしどうもおっちょこちょいの親爺という感じがしないでもない。ぼくは冗談半分で「チャラス・欲しい・買う」とヒンディー語で聞いてみると、ババはキョトンとしていたがギョロと目をむいてぼくを見る。だが初めて会ったジャパニーにどう返事をすれば良いのか迷っているようだ。前の露店の親爺を見たり周りを気のするようにキョロキョロしている。だが気持ちの整理がついたのかババは横に置いてあるずだ袋に手を入れた。ごそごそと手を動かしながらもギョロ目はぼくを見ている。ババはやっと何かを掴んだようで、ずだ袋から手を出した。手にはチャラスの塊りを持っている。ババはどうだという顔をしてぼくの目の前に手を突き出した。
「おぅ、チャラス。ケトナ・パイサ?」(幾らだ?)「エックトラ・ソールピア」(1トラで100ルピーだ)どうだ買うかジャパニーという顔をしているババ。「チョータ・エックトラ・ナイナイ」(小さい、1トラはない)とぼくは反論する。結局ぼくはチャラス半トラを50ルピーで買った。チャラスがぼくの物になると
「ジャパニーババ、スモーク?」
と出店のババが誘いをかけてくる。
「おースモーク、スモーク」
とぼくが言うと、今のチャラスを出せとババは手を出しやがった。チャラスを渡すとまた手を出し今度は煙草を呉れという。ふざけた野郎だと思いながら渋々1本渡すぼくに、まぁまぁとなだめるような手の仕草をした。ババはチラムを吸う準備を始める。手馴れたものだ、手のひらの上だけで素早くチラムを作っていく。
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第3話 出店のババ  片目のババについて・・・1

2005-02-22 | 第3話 出店のババ
 出店のババと流れのババは仲が良い。流れのババと片目のババも仲が良い。流れのババは40歳ぐらいの元気盛りでちょくちょく何処へ行くのか姿を消す。それでも最後に移動するときは片目のババを連れて行く。片目のババは片目が見えないのではない。掛けている眼鏡の左側のレンズだけがどうしたのか付いていない。その眼鏡をいつも掛けているのだがババにはどのように見えているのだろうか。まあ毎日、仕事をしているわけではない、1日中別館下でゴロゴロしているだけだから不自由はないのかもしれない。リシケシの町への行き帰りは本通りがあるのだがバスやオート力車が走って危ないし埃が立つ。乾季にはガンガの水位が下がり河畔に1本の小道ができる。リシケシの町を出て途中からガンガ河畔に出るとその小道と出合いアシュラムの別館の下まで続いている。別館を過ぎるとすぐ本通りへ出る階段がある、それを上り右へ行くと広場があるが、それはオート力車の発着所だ。真直ぐ延びている通りはラムジュラにつながっている。途中には左の山肌に土産物屋の小さな建物が並び右側はガートになっている。
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