フィリップスのストレスは限界だった。朝起きるとフロアーにピーナッツの殻やバナナの皮が散乱していた。オマールもチャーリーもこれじゃまるでモンキーだと言った。開錠されるとフィリップスは飛び出してグラウンドを歩き回った。
朝、ぼくはいつもの生活パターンでチェーシングをやっていた。今までぼくとは全く付き合いのなかったインド系イギリス人のボブが吸っているぼくの横に座り動こうとしない。彼は見栄も誇りも捨て東洋人のぼくに一服だけで良いから吸わせてくれないかと頼んできた。ぼくは黙って吸い続けた。彼は再び頼んだ。ぼくは振り向いて彼の顔を見、それは出来ないと断った。外房の壁の前に座り膝を抱いて俯いたボブをぼくは見た。彼が禁断に囚われている事は分かっている。しかし彼は既にお金もなく借りられる信用も失っていた。スタッフの手当てが出来ない彼に一回、助けてやっても意味はない、その場の禁断から逃れる事が出来ても。苦しいけど何れ襲ってくる禁断と正面から向かい合わなければならないのだから。迷い込んだドラッグの深い闇、どういう形であれ自分で決めるしかない。皆が寝静まった夜、ボブは外房の鉄格子にロープを架け首を吊った。長く続く禁断に絶望し奴は病院へ運ばれた。生きているのだろうか?