ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・25

2012-02-06 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録

 デリー警察はアフリカン・ドラッグ・シンジケートを徹底的に取締まり、デリー中央刑務所に収監したが組織はその刑務所内でさえ生き続けた。パテラハウス高裁は収監事由を判断することなくドラッグによる収監者をリリースしている。バザールに戻った売人達はドラッグ・ビジネスに余念がない。
「トミー、ベストスタッフがある、どうだ」
「マナリの良いチャラスが手に入った」
そんなメインバザールに戻って、ぼくは自分をコントロールする事が出来るだろうか、無理な話だ。退院したら直ぐにやり始めるだろう、アルファーがぼくのスタッフを持っているが、100gはある。
 12月4日、ぼくはいつもより多くのスタッフを吸い裁判所へ出頭し、その足で大使館へ向った。病院へ行き治療を受けるとBさんとの約束した日である。大使館のBさんはぼくが約束通り来るとは思っていなかったようだ。ぼくはスタッフのオーバードースで心身ともに限界に達し毎夜、自意識を失い桃源郷を彷徨い続けていた。これから先どうなるのか、何が起こっても不思議ではない状況までぼくは追い込まれていた。ぼくは1本の注射器にすべてを託したのかもしれない。生きろ、生き続けろ、とぼくの身体と心がぼくを目覚めさせた。
 何でこんな病院に入ってしまったのか、自分の頭がおかしくなりそうだ。変な女が入院してきた。何度も逃げ出そうとしては引き戻され、女の叫び声がぼくの病室まで震わせる。ぼくだって早く回復して病院から逃げ出したいんだ。それなのに何だ、こんな患者と一緒とは症状が悪化しそうだ。しばらく続いていた女の叫び声が静かになった。注射を打たれたか薬を飲まされたのだろう。煙草をくれた気の良い2人のインド人が退院した。大使館は何とも言ってこない、マリーも来ない。

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