ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅              ブラック・アウト・・・15

2012-08-21 | 2章 ブラック・アウト
 裁判所へ出頭した。法廷の入口から裁判官の横顔を見ると前回、送金について親切にアドバイスをしてくれた方だった。裁判官へ会釈し前列の椅子に座ろうとしたとき、裁判官はいきなり強い口調でぼくを呼びつけた。不機嫌そうな顔から、一目見て彼が怒っているのが分かる。分かるが何故そんな剣幕でぼくを呼びつける必要があるのか。興奮すると声は少し大きくなる。彼は早口で喋りだした。会話は全体を理解しなくても良い、ポイントさえ掴めば何とかなる。聞き耳を立てていると裁判官が言わんとする意味が分かってきた。
「どうして君は、決められた日に法廷へ出頭しなかったのか」
何を言ってるんだ彼は。ぼくは彼の言い分が全く理解出来ない。出頭日の今日、ぼくはこうして裁判所に来ているではないか。
「ぼくはこの様に決められた日に出頭しています」
このぼくの言葉を聞いた裁判官は、何を言うか、と益々頭に血が上ったようだ。何をそんなに怒っているのか、ぼくにはさっぱり不明だ。
「今日がその決められた日なのか、君にとって」
書記官はまずいなぁという顔をしている。
「どういう意味ですか」
ぼくもちょっと頭にきてむきになった。
「君は11月20日の月曜日に、当法廷へ出頭しなければならなかった。分かるか」
「イェッサー」
「今日は何日だ、答えろ」
「今日は11月20日の月曜日です」
裁判官へそう答えながらぼくは不安に囚われるのを感じた。
「今日は11月23日の木曜日だ」
裁判官は確信に満ちた顔でそう言うと、ど~んと机を叩いた。

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