誰でも、大きな手術します、大変な手術します、と言われたら嫌でしょう。
私だって嫌です。
ですから、最近インプラント治療の解説に、うちは低侵襲を心掛けています、と言うのはお約束になっている、と言っても良い位でしょう。
では、その実態はどうなっているのか?
同じ用語を使っているから、同じレベルなのか?
全く違います!
実は学問的に統一されている用語ではなく、それぞれのDRが自称しているだけ、と言うのが実態です。
特に、今日こだわるのは、抜歯即時植立インプラント治療に関してです。
巷で、現在最も流行しているのは某HAインプラントを用いて行う抜歯即時植立でしょう。
この治療方法に置いて利点がとても多く、その成果が素晴らしいとして広く用いられ始めています。
では、その実態は如何なものなのでしょう?
彼らの主張はこうです。
純チタン系のインプラントでは初期固定が得られないといけないから難しい、HAインプラントなら初期固定にこだわらないから成功し易くて良い。
確かに開祖のDRの成績は良いものなのでしょう。
でも、ではその信者のDRが同じ成績なのかと言うと、それは違う、と言うのは事実なのです。
このことは大きな問題です。
抜歯即時植立は元々非常に繊細で難しい手術です。
でも、1回限りの手術で終われるから、と言う利点で一時広く行われるようになりました。
そしてその実態はどうだったのかと言えば、本来のインプラントの成功率97%以上には程遠い70%を切るかもしれない、と言う成績だったのです。
その為に、抜歯即時植立は現在では簡単には行われない手術になっています。
その隙間を縫うようにして、HAインプラントなら上手く行く、と言うのが今現在の流行です。
本当にそうでしょうか?
まだまだ完全な実態の把握は私にも出来ていませんが、陰で聞こえてくる話では、やっぱり簡単じゃないよね、HAだから上手く行く訳じゃないね、逆に炎症が起きると一気に波及して骨が大変なことに成ってしまうね、歯茎が大変な羽目になるよね、と少しずつですが聞こえて来ています。
さて、事実は如何なものなのでしょうか?
私の解説は以下のものです。
抜歯即時植立インプラント手術の要諦は、抜歯と病巣の除去にある!です。
これがちゃんと出来ないと純チタンとかHAとかではなく成功しない!なのです。
殆どのDRがいまだに拡大鏡一つ使わないし、ライトを当ててしっかり見ていないのが実態です。
見もしないで、病巣が取り切れる筈がないじゃないか、が私の答えです。
更に言えば、低侵襲を言うならば、強拡大視野での極小さい手術で行う事も兼ね備えるべきです。
個人的に、低侵襲外科手術を定義しますと、
①、強拡大鏡5倍以上の拡大視野での極小さい処置を必ず行うこと
②、可及的に1回の手術で全てを終わらせること
③、歯茎を切開して骨から剥がしたり捲ったりして手術を行わないこと
④、治癒期間が従来よりも4割以上短いこと
⑤、患者さんの日常生活に殆ど影響を与えないこと(腫らさない、痛がらせない等々)
以上の5条件は最低限満たすべきと提案します。
分かり易い題材として、HAインプラントを遡上に乗せてしまいましたが、使い方を誤らなければ決して悪いインプラントではない、と私も思っています。
但し、私の考えがあって、使っていませんが。
ついでですが、何故使わないのかの私の理由を書きます。
一、まだまだ歴史が浅く、世界の中でもデータが圧倒的に少ないこと。
二、HAとチタンとの結合と骨とHAの結合と言う2重の結合でなっているので、どちらかの結合に問題を生じる可能性が純チタンに比べて2倍になるような気がする。
三、HAインプラントは炎症に弱い、一気に波及して骨を喪失する等のトラブルの報告が相次いでいる。
四、HAインプラントが一旦骨にくっ付くと、何かの問題があった時に逆回転させて取り除くのが非常に難しい。
五、インプラント周囲炎を起こした時に、純チタンインプラントのようなリカバリー処置が出来ないし、一気に深刻化する。
以上の5大問題を解決できていないので使っていません。
更に、某メーカーに関して言えば、エクスターナル方式しかないので、私には使い難いし、あの爪みたいなのが折れるトラブルを見ているので、今一つ信じ切れない、があります。
でも、これらも問題を解決出来る、納得の行く答えが得られるなら使います。
低侵襲インプラント治療を話題にして、あちこちに話が飛びましたが、抜歯即時植立に関して私の言いたいことはまだあります。
皆さん、抜歯即時植立と言うとインプラントに気が行き過ぎている、と思います。
医学的に考えるなら、医療人は患者さんの体から病気の元を取り除くのが最も大事な仕事の筈です。
インプラントはその後の話です。
病気の元を取り除く、それも出来る限り侵襲を小さく、楽に早く治るように、これが医学の道でしょう。
如何にインプラントを上手く手術したとか、早く出来たとか、何本植立したとかで気にしているのは 、抜歯即時植立では医学的には本末転倒です。
病巣の除去をどれだけチャンと出来たのか、患者さんの体を健康体に出来たのか、が最重要です。
ここを履き違えるから、インプラントが上手く行かないんです。
低侵襲の代表例とされる抜歯即時植立インプラント治療。
しかし、その実態は全くDRによって違います。
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