フルマウスでの即時荷重、特に上顎の場合、All-on-4で言われるように、前歯小臼歯部の骨は深さがあり、長いインプラントを植立して即時荷重することが可能になります。
この場合、バイコルチカルサポートにするのが私は最適であろう、と考えております。
この辺の所は、私ごときが解説しないでも、先生は百もご承知で釈迦に説法だろうとも思われますので止めて、顎位の決め方前歯部領域で負担をさせて大丈夫なのか、顎位の私の考えを説明させていただきます。
多少長くなるかと思われますが、ご容赦下さい。
これらの話は、勿論総義歯始めとする補綴全般に関わる私の考え方です。
即時荷重の成功の鍵は、咬合が握っている、と私は確信しております。
前歯部のインプラントを35Nを軽く振り切れるトルクで植立出来ても、側方力が加わり続ければ必ず駄目になります。
そこでの疑問ではないか、と存じます。
早春塾でもお話しましたが、前歯部のインプラントでしっかりと植立し、小臼歯部にも出来れば同様に植立し、所謂APスプレッドですか、インプラントで支える面積を前後的にも広く取り、出来る限り台形に近い形に配置して支えます。
ALL-on-4と同じ考え方です。
そして、プロビが脆弱では困りますので、治癒期間は患者さんに我慢していただいて、咬合面観でブロック塀のようなプロビに必ずします。
それで、顎位の決め方ですが、下顎の前歯小臼歯部しか当りませんから、そこで手練りの即時重合レジンの塊に圧痕を付けます。
その際、最重要なのは顎位の高さではないか、と私は考えております。
顎位の高さに関しては、総義歯の考え方に準じて、患者さんの顔貌を見て決めるのがいつもの方法です。
しかし、多分なのですが、私の場合、殆どの総義歯臨床家の先生方に比較して高い設定をしていると思います。
個人的考えですが、低く設定すればするほど横振れ等の動きが惹起されやすく、噛み締めとか舌の位置諸問題で色々出るのではないか、と考えております。
個人的経験則でしかないのですが、私自身も総義歯臨床家の端くれを自負しておりますが、かねがね諸先生方の設定は低いのでは、と感じております。
ある程度の高さを付与することで、患者さんの顎運動は横振れが小さくなり、安定するのではないか、と考えています。
又、自傷咬合の傾向のある患者さんも、咬合の低下が問題なのだろうと考えています。
(但し、歯牙で象牙質が露出する位の自傷咬合の方の場合は、歯牙が磨り減ってもその分廷出して補っている場合が多く、それに普通の歯冠を回復してはいけないのだろう、とは考えていますが。)
それで、即時荷重で上顎フルのケースの場合ですが、必ずバイトは浅くします。
当然、深くするとアンテリアガイダンス等の側方力がもろに掛かり、インプラントが広がる方向に力を受け止めることになり、駄目になるのが明白だからです。
どの程度浅くするのだ、が肝心なのだと思いますが、これは患者さんのケースバイケースでかなり違ってきます。
今回プレゼンさせていただいた患者さんのケースでは、下の歯もやや揺れが出ていましたので、非常に難しかったのですが、スーパーボンドで固定して可及的に動かないようにして、咬合を再構成して行きました。
フルのケースでは、基本的に総義歯に準じて考えて、出来るだけ動かないようにしたら動かされないようにしろ、が鉄則だと思います。
従って、プロビ上についている圧痕を元にして、そこから咬合面テーブルを作製します。
ひたすら咬合調整が肝要で、仰臥位、セミファーラー位、座位等々全ての体位で、チャンと無理なく集束する場所を探します。
その場合、咬合力の向かう方向がインプラントに対して内側、口蓋側に伝わる、つまり、インプラントを骨へ押し付ける方法への調整をすること、集束している顎位で触診でフレミタスを殆ど触れない状態になるまで調整します。
ここら辺の所で総義歯臨床と非常に通じるものがある、と確信しております。
コツとしては、唾液を飲み込みやすい位置、ゴックンしやすい位置がベストではないか、と考えています。
後は、ひたすらフォローです。
極端な場合、毎日にでも来ていただいて、その度毎に咬合調整します。
先生もご存知の通り、顎位は1発1回では決めきれません。
必ず、快適な位置にしてあげると、もっとより良い位置へ動きます。
それを追従してチャントして行くこと、これが最も大事なことなのかも知れません。
やがて、患者さんの顎位は必ず集束します。
その時間の掛かり方は1人1人違いますので、決まりはないと思います。
でも今回のプレゼンのような重症歯周病患者さんは意外なほど顎関節の異常は来たしていないので、決めるのに総義歯の難しい患者さんよりも余程決めやすい、と思っています。
フラットな咬合面で、と言う疑問ですが、ある程度の高目の咬合位、顎位を付与することで、横揺れは惹起させないで済む、と考えています。
後、私は毎回、インプラントの動揺度をペリオテストで調べています。
それで、セメント離脱しているのも早期に発見出来、その場合は慎重にプロビを外してキチンと装着し直します。
そうしないと、力を受け止めてくれるインプラント本数が減り、トラブルを招くからです。
このような場合でも、インプラント軸を可及的に平行に揃えて置くことで真っ直ぐにリムーバーでやれば取れます。
咬合面テーブルをしっかり作るには、ネジ留め穴があったら、私には出来ないのです。
それで、あのような方法で解決しております。
又、穴があればその分プロビの強度も落ちて、折れるトラブルのあるのが怖いです。
以上で回答になっておりますでしょうか。
ちゃんとお答えできなかったので申し訳なく思い、お送りしました。
失礼しました。
以下は、補足で次にお送りしたメールです。
犬歯は小臼歯化させている形態にします。
犬歯と第1小臼歯での咬合の位置、決め方が非常に重要である、と考えています。
その後、大臼歯部のインプラントが落ち着いたら、プロビに加え全体的に咬合を安定化させていきます。
現在全て手練りでさせていただいているので、無難な咬合面にせざるを得なく、それで特段患者さんが問題なく経過してくれるので、最終的に仕上げています。
但し、前歯部に関しましては、即時荷重していた時のままでは浅い状況に終わってしまったり、短い歯になってしまいかねないので、審美的な形態の要件と機能的要件を満たせるようにやはり筆盛り等で修正し、全体的なアーチを前後左右で整えてスピーの弯曲、モンソンカーブを修正して、グループファンクションになるように仕上げています。
咬合の運動に関しましては、順次誘導を師匠に教わって以来25年信じて行なっております。
先程のメールで不足していたと思いましたので、補足致しました。
失礼しました。