いつも思うのですが、歯科の手術は難しいものだ、ということを患者さん達は全く知らないなー、と言うことです。
外科の先生方の中には分かって下さる方もたまにはいて、狭い口の中で見る方向が限られていて暗いし、ど真ん中に動き回って邪魔する舌があって、大変ですね、と言ってくれます。
しかも、殆どの手術が局所麻酔で、患者さんは意識があり、不随意運動を何時起こすのかも分らない状況でしていて、と。
外科の大きな手術は、全身麻酔を掛け、患者さんは殆んど身動きできない状態にコントロールされて行われます。
そして、凄く明るいライトで照らし出して、ハッキリと見える状況を確保して手術します。
我々の場合は、狭い暗い結構奥深い、真ん中に舌があって動き回って邪魔する、と言う悪い条件が幾つも重なり合って独特の難しさがある訳で、全身麻酔して切開して開いて見える状況にして出来るなんてとても羨ましい、と感じたりします。
これらの悪条件をクリアーする為に、私はライト付きの10倍の拡大鏡を用いて、海外とかから手に入れた極細かい道具とかを駆使して施術する工夫をしています。
そうして、極々細かい小さい仕事を、正確に丁寧に綺麗に行う工夫を一所懸命にしています。
なので、元々然程手先が器用でない私の手術は、申し訳ないことに時間が掛かることが多くなります。
通常医科の世界では全身麻酔して手術する基準は聞くところによると1時間以上だそうです。
私の場合、抜歯即時植立即時荷重とかまでさせていただくと、1時間では絶対に終われません。
抜歯自体から丁寧に骨とか歯茎とかを傷付けないように細心の注意を払ってしますから、それだけでも1時間掛かることすら起きます。
病巣の除去も、混み入っている病巣だと、その除去だけでも又1時間掛かることすら起きます。
そこまでやれてインプラント植立に関しては、5~10分位でしょうか。
インプラント植立は呆気ないほど直ぐに終わることが殆どです。
そこからGBR骨再生、歯茎再生と審美的仮歯を作製するので、又1時間位掛かることもあります。
狭い暗い奥深い、舌があると言う条件の悪い所で手術して、99%以上成功させられるには、このような手順が必須なのです。
歯の手術、と言う感じで抜歯の延長上で簡単なものと勘違いされてしまって、手術は非常に大変なものと後から思われてしまう、と言う残念な事態を招いてしまいかねないのも事実なのです。
3時間を越える大変な手術に成ることもしばしばなので、尚更私は低侵襲でやり、腫れたり痛んだりさせないこと、結果的に楽であって1回で終わって貰って良かった、と言っていただける為に頑張っています。
又、こう言う風にも言っています。
私が抜歯すると、やはり丁寧に綺麗に抜歯して、骨とか歯茎の再生を期待する施術をするので、病巣は徹底的に取りますし、結構な時間はいただくのです。
インプラントの植立手術に余計に掛かる時間は、結局5~10分なのです。
ですから、もし宜しければインプラントを植立する所までしませんか?と。
そのお陰なのか、結果的に私は即時植立させていただける次第なのです。
更に私が言う話は、医学的に正しい治療は、患者さんのお体から病巣を取り切って、悪いものをなくして差し上げて、後は生体の治癒を期待出来る状態にすることなんです。
なので、抜歯だけさっさとして、終わりは絶対にありません。
必ず10倍とかの強拡大で良く見て、病巣とか骨とか歯茎とかの状態を見て、病巣の取り残しはないのか、これで良いのか、と見直しを徹底して行います。
ですから、インプラント植立は実は医学的効果の中では2次的なものなんです。
本来は病巣をなくすこと、これが最も大事なことで、インプラントはその後の話なんです、と。
ここを履き違えてはいけないと、私は患者さんに良く説明しています。
体を治す、生体から悪いものだけを取り切る、これが医学の正しい姿なんです、と。
インプラントとかになると、皆インプラントの方に意識が傾きます。
でも、それは医学的に間違いなんです、と話しています。
私はそう考えています。
時々こうやって、本当に医学的に正しいことって何だろうとか、生物学的に、科学的に正しいことって何だろう、と考えます。
そうすると意外なほど歯科界はドグマが渦巻いている社会ではないか、と思ったりします。
歯科学だけの観点だけではなく、大きな観点からの考察、それを患者さん達に伝え理解していただくこと。
大事なことではないでしょうか?