※内容を忘れてしまう前に先に投稿しておきます。
■2025年3 月3日(月) ■
今回の旅の最大の目的である”Inside No.9 Stage/Fright” 。 BBC TWOで10年間に渡り放送されていたTVシリーズ”Inside No.9 ” (邦題は「9から始まる奇妙な物語」)を舞台化し、 全エピソードの脚本と出演を担当している二人組、スティーヴ・ペンバートン とリース・シェアスミス がこの舞台でも主演します。
劇場は地下鉄レスター・スクエア駅を出てすぐのウィンダムズ劇場 。 今回は発売初日に予約した、前から3列目のほぼ中心、ストールの最良席。 真正面から二人の姿を拝むことが出来ました。 出来ればもう1公演くらい見たかったけれど、渡航前にはすでに全公演完売! このシリーズと彼らの人気の高さが伺えます。
客層は見た感じ40代以上が多そうな年齢高めな雰囲気 。女性よりは男性の方が若干多い印象。
販売していたグッズの内容は
未公開台本付きプログラム=£15
マグカップ=£14
Tシャツ(2種)=£25
A3ポスター=£15
この他にも通常の劇場プログラム(£5)も販売していたそうですが、 こちらはよく舞台で売っているスチール写真と広告が半々ぐらいの一般的なプログラムで、 公演が始まった頃はこちらを購入してしまった人もいたみたいです。
以下、本編の内容を振り返ります。 劇場内でもSNS上でネタバレをしないように再三周知が出ていた ので、内容を知りたくない方はご注意ください。 記憶が曖昧な部分もあるので、鑑賞された方の投稿や劇評も参考にしています。 場面が前後していたり間違っている部分があるかもしれませんが、ご了承の上でお読みください。
■No talking. No noise.■
客入りが終わると、突然 どーん! という雷鳴のような大きな音が鳴り暗転。 その後、沈黙があり、観客は驚かせるための音だと気づいて笑い始めます。 と同時に「あと1分で開演します。携帯電話はオフにし…」という注意喚起のアナウンスが流れると、 舞台が明るくなり、私たち観客と向かい合うように何列かの客席が段になって現れます。
舞台上の客席には、2列目に青年が一人座り、その後、足元の覚束ない老人を連れた女性 がやってきます。 この女性、金木り声で父親らしい老人に喋りかけ、 (彼らが見ている)舞台ではすでにハムレットの上演が始まっているのに、 itsu(日本食を中心としたファストフード店)の紙袋からガサゴソ大きく音を鳴らしながら 取り出した寿司を父親に食べさせようとする、わかりやすい迷惑な観客。 すぐ後ろにいる青年がピーナッツ?のおつまみを食べようとすると、「うちの父はアレルギーがあるんだからやめてちょうだい!」 と文句を言います。 不快に思った青年はその席を後にし、入れ替わりに別のスーツを着た男性(リース) がその席に座ります。
これだけでは終わらず、今度はビジネスマン(スティーヴ) が最後列にやってくると、 彼の携帯電話の着信音が何度も鳴り響き、リースが冷ややかな視線を向ける中電話に出ると「今劇場にいるから話せないんだよ!」と大声で会話。 通話を終えたかと思うと、スマホの音声文字変換でテキストのやりとりを始め、 ついにはパソコンを広げて客席で仕事をし始めます。
堪忍袋の尾が切れたリース演じる男性は、女性が離席したタイミングで老人の手にする寿司にピーナッツをふりかけ、 それに気づかず寿司を食した老人は泡を吹いてガックリ 。 そしてビジネスマンのスティーヴに水を浴びせかけて、パソコンを通じて感電死 させ、 最後に戻ってきた女性の頭を水筒?で強打 。 他の観客が息絶え、血まみれになったリースは最後に一言「皆さん、ここは劇場です。携帯電話での通話、迷惑行為はご遠慮ください」
≪感想・引用ネタ≫ リースの内なる怒りが大爆発するプロローグ(笑)。 次々と舞台上の迷惑な観客たちを残虐に成敗していく様を見て、観客は大爆笑 。 こんなに舞台で人が始末されて大喜びしてる観客たちも珍しい(笑)。 スマホの音声変換場面は「Hope that's OK」というと 「Ho that's so gay」 とテキストが誤送信するといった、スティーヴお得意のダジャレネタ 。リーグ・オブ・ジェントルマン(以下TLoG) ライブツアーでの観客を迎えた必ず英語の下ネタに聞こえてしまうドイツ語授業 を思い出しました。
■Bloody Bellの呪い■
深紅の幕が閉じると、左右のボックス席にスポットが当たり、2人のヴァイオリニストが番組のテーマを演奏! 舞台から普段着風のスティーヴとリースが本人として登場 します。
見終わった後は外でネタバレしないでくださいね!という注意喚起とともに、 劇場スタッフが注意パネルを持っていて、そこに書かれているのは「No M*******」(劇場内自慰禁止)の文字 。 そして二人はこの劇場にまつわる怪談を語り始めます。
なんでも、昔この劇場で「精神病院の恐怖」”Terror in the Asylum” という演目を上演中に 主演女優が演出上の事故で亡くなってしまったとか… そしてその霊”Bloody Bell” が今でもこの劇場に取り憑いているというではありませんか… 呪われたウィンダムズ劇場で恐ろしいことが起こるのはその霊が原因だとか。 (スティーヴ曰く、ケネス・ブラナーの「リア王」 が酷評だった?のもそのせいらしい。笑)
リースはこの怪談を信じている様子ですが、スティーヴは懐疑的で、 悲しみの記憶が霊として現れるのであって、愛する人の思い出の記憶なんだ と自論を展開します。 そしてスタンドランプ を持ち込むスティーヴ。 このランプが光っている時は、霊が近くにいる証拠らしい。
説明の途中で黙って舞台袖にはけようとするリース。 「どこに行くんだよ?」とスティーヴに訊かれると、「いや、次のシーンの衣装替えだけど?」
リースを見送ったスティーヴは劇場に霊を呼び出すため、 観客に3回「Bloody Bell」と唱えさせます。 すると、客席に幽霊が出た!とF9席にスポットライトが。 (その席に座る何も知らない観客は注目を浴びるはめに…)
≪感想・引用ネタ≫
素の姿で登場したリースは確かジャケット姿、スティーヴは黒いセーター。 数年ぶりに間近でみる二人はめちゃくちゃカッコ良かった!! ドレスアップしたヴァイオリニストによるお馴染みのテーマの生演奏も 「本当に”Inside No.9”の舞台を見にきたんだ!!」と気持ちが昂りました。 最後の観客席にスポットが当たる客弄りは、去年見に行ったナイロン100℃の演出 を思い出したなー。
■"Bernie Clifton's Dressing Room" 再び■
リースが着替えていた衣装は「アングリートマト」の創設者トーマス 。
そう、TVシリーズの名作エピソード の一つ"Bernie Clifton's Dressing Room(以下BCDR)" の再演が始まります。 別々の人生を歩んでいる、30年ぶりに再会したお笑いコンビ「チーズ&クラッカー」 が久しぶりのネタ合わせ。
Inside No. 9 - "Bernie Clifton's Dressing Room"
Inside No. 9 - "Bernie Clifton's Dressing Room" [エンターテイメント] イギリスのコメディ・チーム「リーグ・オブ・ジェントルマン」のメンバー2人(リ...
ニコニコ動画
セリフはほとんどTVシリーズと同じですが、 リース演じるトミーがアングリートマトの従業員数を話していた時に、 「それじゃあ、お尻がくすぐったいだろう?」とスティーヴ演じるレンがトミーの尻を叩いたり 、 レンが一人芝居でパントマイムをするシーンは、 コートの人物が無理やりレンにキスしたり股間を揉んだり(笑) 、動きが激しめ。
途中、ブリテンズ・ゴット・タレントにエントリーしたと告げたレンが煙草を吸いに行っている間、 レンから新ネタとして手渡された台本をトミーが読み始めます。 それが次のシーンにつながっていくのです。
≪感想・引用ネタ≫
BCDR…ファンにとっては何度も鑑賞しているエピソードのはずですが、 私としては理解出来ているストーリーを追えるのはとても楽ちんだし、 何より大好きなエピソードを生で見られる幸せで胸がいっぱい。
この舞台の観客はTVシリーズをほとんど視聴済のダイハードファンばかりが集まっていると思い込んでいたのですが、 意外にもこのシリーズ内の名作の一つであるBCDRを初めて観る観客も少なくなかった らしく、 トミーがなんのためにレンに会いに来たか分かる場面ではハッと息を呑む声 があちこちから聞こえました。 一人で映像を見る時には感じることの出来ない、ライヴならではの空気感。
■"A Quiet Night In"のコンビとゲストの共演!■
レンが考えた台本のト書きをトミーが音読すると、劇場の幕に文字が映し出されます。 その新ネタとは、TVシリーズの人気エピソード"A Quiet Night In" のコソ泥二人組レイ(リース) とエディ(スティーヴ) が登場するスケッチ(コント)。 テレビでは一切喋らなかった二人ですが、この舞台では普通に会話します。
指示役の元、指定の家から住人を誘拐してきたエディ。 頭に袋をかぶせられたガウン姿の人質の顔を覗き込んでびっくり。 状況を確認しにきた共犯者のレイに、人質の名前をジェスチャーゲーム で伝えようとします。 うまく伝わらず、頭から袋を取り外すと、そこにはジェーン・ホロックス が! どうやらエディは住所の6と9番地を間違えて 、有名人を連れてきてしまった ようです。 別人を連れてきてしまった2人はスマホの向こうにいる指示役に本物の人質だと取り繕おうと、 ジェーンにフラメンコを躍らせたり、トランペットを吹かせたり。 結局、解放されたジェーンは悪態を吐きながら(笑)2階へと階段を上っていきますが、 レイが掲げた銃が意図せず暴発し、被弾したジェーン(の人形)が階段を転がり落ちます。
オチがついた後、トミーがレンの台本の出来の悪さを嘆いていると レンが戻ってきて、"BCDR"のエピソードの終盤へ。
£25を受け取ったトミーがレンへの感謝の言葉をつぶやくと 冒頭でスティーヴが舞台に持ち込んできたスタンドランプが舞台後方でビリビリと光り輝きます 。 「…レン?」 トミーが呼びかけても、奥からは誰からも返事はありません。 気のせいかと部屋を後にするトミー。
そこに突如、舞台上に”Bloody Bell”の幽霊が出た!!!
ぎゃー!!!
…ここで第一幕は終了。
≪感想・引用ネタ≫
日替わりスペシャルゲストのコーナー!サー・イアン・マッケラン 、デヴィッド・テナント 、マイケル・シーン 、マーティン・フリーマン 、サイモン・ペッグ などなど、 毎日豪華ゲストが出演し、アドリブでこのシーンに臨んでいます。 もちろんTLoGの仲間、マーク・ゲイティス も2月22日に出演。
毎日ゲストが違うので、レイに有名人の名前を伝える際もゲストによってジェスチャーが違います。 観客との絡みに強いスティーヴが得意そうなコーナーですね! ジェーンの時にどうやって伝えようとしてたか忘れちゃったけど、 マーク・ゲイティスの時は「マーゲート(Margate)」 と伝えようとしていたらしい。
エディは登場する有名人のファンを自称し、一方のレイは顔を見ても全くそれが誰か分からないので、 エディがゲストの代表作を伝えようとするのですが、それが毎回間違っていて、 ジェーンの場合は「アブソリュートリー・ファビュラス」 を何度も間違えられてました。 マークはTLoGを言い間違えられて「お前も出てただろうが!」 と怒ってたみたい(笑)。
(ウェールズ出身で知られる)マイケル・シーンの場合は、「最も優れた”イングランド”の俳優」 と紹介され「グッド・オーメンズ」 を「グッド・ローマンズ」 と間違えたエディに怒り、 去り際に「人生でこんなに屈辱的なことはなかった…デヴィッド・テナントと仕事したこともあるのに!」 と言ったとか。
リースが自分の演技に自信満々なのか、ちょいちょいドヤ顔 してるのが面白かったですが、 相変わらずゲストとのやりとりの間で役を忘れて笑ってしまう 場面もありました。
このコソ泥二人組はもちろん"A Quiet Night In" の登場人物ですが、その他にもTVシリーズの引用が沢山あります。 誘拐犯が6と9で家を間違えたのは”Once Removed” と同じ。 タンスの中に片方だけの靴や、何故かキャストが隠れているのは、"Diddle Diddle Dumpling" と"Sardines" の引用。 劇中に登場したものは必然性がなければならないという「チェーホフの銃」発言は"The Riddle of the Sphinx" にも登場。 誘拐された有名人は"Mulberry Close” に住んでいて、 舞台となる部屋が18号室になっていたらしく、Inside No.9の劇中劇だから倍になっている?? それにトミーが受け取った25ポンド入りのカードのデザインは"Wise Owl" だったらしい。 TVシリーズで毎回小道具として置かれている野兎像 は階段においてありました。
■精神病院の恐怖〜Terror in the Asylum■
第二幕の舞台は、ヴィクトリア朝の精神病院 。 雷鳴が響き渡る中、実験室のような病院の手術室に引かれたカーテンに、 何者かがベッドに横になる人物に刃物を振り上げ、血飛沫が飛び散る様子が映し出されます 。
その後場面は変わり、偏頭痛に悩まされているブロンドボブヘアーの若い女性シュゼット (ミランダ・ヘネシー)が 不気味な看護婦長クラッグ (アンナ・フランコリーニ)に連れられて診察室へとやってきます。 クラッグ曰く、診察室に飾られた肖像画は首を切られて亡くなった医師の妻のものだとか。 不穏な話を聞かされた後に一人薄暗い診察室に残されたシュゼット。 そこにマッドサイエンティストのようなヒューゴ (リース)が飛び込んできます。 彼は狂ったように元素記号の歌 を歌い始めますが、 先ほどの婦長が現れ、実は彼は医者ではなく入院患者だということが判明。
ヒューゴが連れていかれると、本物の担当医グードロン (スティーヴ)が登場し、 偏頭痛に悩むシュゼットに頭蓋骨にドリルで穴を開ける穿頭術を勧めます。 不安になるシュゼットに、グードロンは催眠術を使うために痛みはない ことを説明。 すっかり大人しくなったヒューゴが車いすで連れてこられると、 効果を証明するためにグードロンの催眠術にかけられ、自らのこぎりで片足を切り落とします。 グードロンが催眠を解くと、ヒューゴは痛みに絶叫し、再び連れていかれるのでした。
シュゼットは恐怖のあまり診察室から逃げようとしますが閉じ込められ、 かつてこの病院の患者だった彼女の姉をグードロンが虐待し、 その事実を知った妻に手をかけるグードロンの姿を目撃したショック が 彼女の偏頭痛の原因 だとグードロン自身から明かされます。
シュゼットの記憶を抹殺するため、穿頭術を実行しようと迫るグードロン。 彼女は自分の顔に酸をかけると脅しますが、誤って居合わせた婦長の顔にかけてしまいます。 クラッグは絶叫し、その顔は溶け、手のひらの上に目玉がこぼれ落ちて…
そこに、差し入れのコスタコーヒーを持ってきた劇場スタッフのアビー (ギャビー・フレンチ)が客席から登場。 そう、実はこれは舞台「精神病院の恐怖」 のリハーサルの最中だったのです。
≪感想・引用ネタ≫
ここからは舞台オリジナルの、コテコテのホラーストーリー。 ヒューゴが披露した元素記号の歌は、Tom Lehrer の"The Elements " という曲らしい。 個人的にはミュージカルドラマ”Galavant” でリースが披露した”Time Is of the Essence ” を思い出しました。 グードロン医師に扮したスティーヴは、それまで登場した役柄とガラッと変わり、 爬虫類のような青白い肌色に尖った眉をしていて全くの別人になりきっている!百面相! そして、リースが自ら足を切るのは”Mother Ruin” の引用。 実際に間近で見ると、ヒューゴの朦朧とした表情と合わせてそら恐ろしかったです…
■不穏なリハーサル■
アビーが入ってきたことによって舞台「精神病院の恐怖」 のリハーサルは中断。 休憩する俳優たちの会話から、それぞれの立場が明らかになってきます。 ベテラン俳優らしいヴィンス (スティーヴ)は、シュゼット役の歌手シェリー (ミランダ)を TikTokでバズってるだけの馬鹿な女とみなしていますが、 演出家であるマーカス (リース)は彼女の知名度を生かして公演を成功させようと目論んでいます。アマゾン製作の「神曲」シリーズのオーディション を受ける予定のシェリーは 役者志望のアビーにシュゼット役のアンダースタディにしてもらえるようマーカスに頼んではどうかと提案。
中断を経て、マーカスは診察室のセットを取り払い、カメラを持ち込んで 舞台上の巨大スクリーンでも役者を映し出すという、現代的な演出を試みることに。 しかし、今じゃ目新しい演出でもないと皮肉るヴィンス。「シャフツベリー・アベニューを歩けばカメラを持ったバカばかりだ」
穿頭術のシーンからリハーサルは再開し、これまで以上に大袈裟に演技する役者たち。 本当に死んでしまったのではないかと勘違いさせたいとマーカスが言い出すと、 シェリーはその提案に反応せず、本当に死んだように見せかけて周囲をドキリとさせますが、 アビーが実際にこの劇場で同じ演目を上演中に主演女優が亡くなったのだと明かします。 シェリーは初めて聞く幽霊の話にショックを受けてリハーサルを去り、 一方、ヴィンス(というよりもスティーヴ)の様子もおかしく、 ダニエル・デイ・ルイスがハムレットの上演中に父親姿を見て降板したエピソードを話しながら、 マーカス(というかリース?)にハグをしてリハーサルを離れます。
≪感想・引用ネタ≫
舞台にカメラとスクリーンを持ち込む演出が最近流行っているという言及はジェイミー・ロイド演出の「サンセット大通り」 を示唆しています。 そして、スティーヴがリースにハグをして立ち去った時に、なんだかセリフが唐突で変、後の場面に繋がってるのかな? と思ったのですが、この理由は後で説明されます。 シェリーがオーディションを受ける「神曲」は、”Plodding On” でスティーヴがオーディションを受けて出演する予定だったドラマシリーズ。 また、舞台上のテストスクリーン右下にウサギのシルエット とhare productions の表記がありました。
■マーカスの企み、そして…■
劇場に戻ってきたシェリーは”Ninth Circle” というシリーズのオーディション用のビデオ撮影に挑みます。 「精神病院の恐怖」で使われているカメラで撮影を手伝うアビー。 舞台と同じように撮影中の映像はスクリーンに映し出されます。 しかしその途中、ハッとしてシェリーの背後に何かがいた 、と立ち上がるアビー。 映像データを巻き戻し、スクリーン上で再生しながら、 シェリーは自分の背後の舞台袖にゆっくりと近づいていきます。 映像の中に影を認めたアビーは他のスタッフを探しに行きますが、 残されたシェリーはカメラを手に取り、カメラの付属ライトをつけて舞台裏へ 。 カメラの映像は舞台上に映されたまま、劇場の奥へと進んでいくシェリー。 物音のした方に目を向けると、そこに小道具の帽子用の箱を見つけます。 シェリーが恐る恐る中を開けると、中には野兎像が 。と、その瞬間、舞台の天井から生首がドン!!と落下! カメラを持って戻ってきたシェリーは舞台上に転がった生首を見つけるのです。
「畜生!こんなもんで怖がったりするもんか!」
ブチギレたシェリーは啖呵を切りますが、その背後に”Bloody Bell”が出現! 驚いたシュゼットは劇場から逃げ出していきます。
「よくやった、上出来だ」
劇場にアナウンスが流れると、”Bloody Bell”が扮装を脱ぎ、そこにはアビーが。 実は演出家マーカスとアビーはシェリーを追い出すために、”Bloody Bell”の怪談話を利用したのです。 シェリーが怖がって逃げたことで、より公演の話題性が増すと語るマーカス。 二人の雰囲気から親密な関係であることが感じ取れますが、 アビーの期待をよそにマーカスはシェリーの代役にはシェリダン・スミス が適役だと語り、 アビーはグードロン夫人を配役するからと、自分の部屋に誘います。 彼女の頬に手を添えるマーカス。 しかし、アビーはその瞬間、両手でマーカスの首をへし折ります 。 崩れ落ちるマーカスを置いて、一歩一歩、舞台奥へと去っていくアビー。 そして最後にまた!!本物の”Bloody Bell”の幽霊が!!!
ぎゃー!!!
≪感想・引用ネタ≫
”Ninth Circle”は"Simon Says" で言及されるテレビシリーズ。 シェリダン・スミスはこちらも名作回"The 12 Days of Christine " で主役を演じています。 シェリーがカメラを持って舞台裏を見回るシーンは、もちろん生放送回"Dead Line " の再現そのもの。 真っ暗な中、音もなく、揺れるカメラのライトだけが観客も照らし、 突然何かが飛び出してくるのではないかと、最高に 緊張感が高まる 場面でした。 首が落ちてきた時には、覚悟していたものの、やっぱり怖かったー。 リース演じるマーカスがアビーにいちゃつくシーン は貴重だからもっと見たかったけど、 すぐに首をへし折られちゃって残念(笑)。
■悲しみのカーテンコール?■
カーテンコールでキャストが舞台に登場。 ところが、あれ? 何故かスティーヴの隣にリースがおらず、代わりに出演者の一人トビーが立っています。 スティーヴは一人前へ出て観客に感謝を表すのですが、「リースがここにいないのが残念です…」 と報告。 なんでも、リースは上演中に落とし扉から落下するという不慮の事故に遭い、亡くなったらしい …。 スティーヴは「先ほどは途中で舞台を降りてすみません」 と詫びながら、 代役のトビーに「親友のリースが本当にそこにいるように見えて、心が乱れるほどでした」 と感謝を述べます。 そしてリースを偲んで、舞台上には彼のポートレートと共に「Reece Shearsmith 1969-2025」 という文字が映しだされます。
カーテンコールが終わっても、出演者のマイクは生きたままで、 スティーヴと共演者たちはリースが居ない公演を続けられるのかを話し合い。 ところが、今度は幕に映し出されたスティーヴのシルエットに、 天井から照明が落下してきて…!
≪感想・引用ネタ≫
リースが死んでしまったという設定も、生放送回"Dead Line " の再現。 プロローグでリースがトビーと入れ替わって入ってきたり、 愛する人の思い出が幽霊になると言う発言や、 第二幕でスティーヴが唐突にリースとハグして舞台から去ったりしたのは、 リースに見えたり見えなかったりしていたっていう、この設定のためだったのか! もちろん観客は、彼らがこの後の展開をまだ隠しているんだろうと分かっているので、 真面目にトビーへの感謝とリースを失った悲しみを語るスティーヴを見ながらクスクス笑い始めます 。 私も、どこからかリースが出てくるのではないかと、ヒントを探して劇場中をキョロキョロ探してしまいました。 相方が死んだ体で遺影が出てくるのって、とんねるずの木梨憲武追悼特番 を思い出すなぁ…
■大団円■
再び幕が開くと、そこには倒れたスティーヴと落下してきた照明が転がっています。 そこに死んだはずのリースが白い服を着て、二人分のコーヒーを持って登場。
「いつも通り、床に転がって死んだふりだな」 「お前…トビーなのか?」 「トビーじゃねえよ!」 「…まさかお前がずっと幽霊だったってオチだとは思わなかった…」 「ひでえよな。ネタ切れだよ」
リースが迎えにきて自分が死んだことを自覚するスティーヴ。
「これからどうしたらいい?」
するとリースは"Bernie Clifton's Dressing Room"の最後をカットしてただろ、 それを終わらせなきゃとスティーヴに提案します。
そして二人が去ると、舞台は天国のような明るい雲の背景 になり、 白いスーツやタッセル付きのレオタードに身を包んだキャストが 羽付き扇を手に、軽やかに舞台へと躍り出ます。 そして、白いタキシードに身を包んだスティーヴとリースが再登場。 二人は手に手を取ってステップを踏みながら壮大なミュージカル調にアレンジされた "BCDR"に登場する名曲"Tears of laughter " を歌います。
二人は♪ Laughter is my memory of… ♪ まで歌った後、 最後に客席を指して…
YOU!
そうして、"Inside No.9 Stage/Fright"は大喝采の中で本当のカーテンコールを迎えたのでした。
≪感想・引用ネタ≫
"Tears of laughter"! スティーヴとリースが葬式にかけて欲しい曲 というほどお気に入りの曲です。 それを「天国」で二人が披露するなんて! まるで「モンティ・パイソン 人生狂騒曲」の”Christmas in Heaven ” みたい! 二人ともミュージカル映えしてて、二人ともまたミュージカルも やれるんじゃないの?? いつもの死んだふり、と言うのは、二人がネタづくりをする時に、先に仕事部屋に入った方がドッキリを仕掛けて後から来た相方を驚かせる という お決まりのルーティーンのことを指しています。
実はこの舞台のチケットを取ってから本当に見にいくか、色々あってかなり迷っていた のですが、彼らのおかげで私のこの英国を旅するという挑戦が始まった んだよなと思い出し、初心に戻った気分 で、やっぱり来てよかったと心底思いました。 近くで見た二人の姿は自信に満ち溢れ、輝いていて、本当にかっこよかった… TVシリーズの焼き直しなんて書いている劇評もありましたが、 TLoGでも名スケッチは何度やってくれても全然飽きないし、 引用を散りばめながら新しい素材も出してくれて、この番組のファンにとってこれ以上ない贈り物だった と断言出来ます。 番組を始めから応援してきてよかったと、心から思いました。
ちなみに出待ちも長蛇の列 。 たくさん話す余裕はなさそうだったのでサインだけ頂いてきましたが、 スティーヴに一言「素晴らしかったです」 と伝えたら あの素敵な青い瞳をこちらに向けて「ありがとう!」とニッコリ微笑んでくれました 。
VIDEO
(2025-03-23 03:25:44 投稿)