だから、ここに来た!

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【今週のウチシネマ】潜入捜査と友情、似て非なる映画

2005-12-03 | movie/【今週のウチシネマ】

クエンティン・タランティーノの作品に
「インスピレーションを与えている」映画を追いかけると、
掘り出し物映画のいい勉強になりそうですね。
たくさんありすぎてキリなさそう。

あまりタランティーノ映画は観なかったんですが、
ただ観るのはつまらないので、
『レザボア・ドッグス』と、『レザボア…』に影響を与えたという
『友は風の彼方に』を一緒に観てみました。

結局『友は…』が観たいだけなんですけどね、はい。


友は風の彼方に デジタル・リマスター版 [DVD]

『友は風の彼方に』は簡単にいえば《潜入捜査もの》

宝石強盗団を追跡していた潜入捜査官が殺され、
その上司であったラウ警部(ソン・イェー)は、
甥であるチャウ刑事(チョウ・ユンファ)に彼の後釜になり、
組織に入りこむように命ずるのですが、
過去の潜入捜査で仲間を裏切り、
厭な思いをしていたチャウは、前向きになれません。

そうしてるうちに、強盗団による事件が起こり、
古株のラウ警部は、署長の命令で、
この捜査班長を本庁からやってきた対立する若手のジョンに奪われてしまい、
酒浸りになります。

そして、死んだ息子の写真を見ながら落ち込む叔父の姿を見たチャウは
やっと決意を固め、組織潜入のためにたったひとりで動きだすのでした…。


前半は、このチャウの孤独な捜査を追っていきます。

結婚の約束までしていた恋人に仕事の話もできず、
激怒されるのを承知で、ただ「結婚は延ばしてほしい」としか言えないチャウ。

叔父から秘密の司令を受けて動いているために、刑事であるにもかかわらず、
ラウ警部を目の敵にしているジョンの部下に犯人一味と疑われて追われ続け、
だからといって警官だと明かせば組織の人間に殺されてしまう…
そんな状況の中で、銃の密売人としてなんとか強盗団の仲間として受け入れられます。

後半は、この強盗団の幹部ホー(ダニー・リー)とチャウが
心を通わす様子が描かれます。

ダニー・リーにユンファ、
わーい! 『狼』コンビですね。
男の友情にこの二人あり!
ですが、私は前半が特に好きです。

ジョンの部下から逃げるチャウの全力疾走は、他では見たことないくらい、
こっちまで息苦しくなるほどの素晴らしい疾走映像。

撮影監督が『インファナル・アフェア』のアンドリュー・ラウなんですよね。
さすが。
テレコを腹に巻き付ける場面や、ボーリング場の場面など、
チャウの一人シーンがとっても好きです。

何が物足りないかというと、
この作品、前半と後半で方向が変わってしまっているのがよくないと思うのですね。
なんだかとってつけたように友情物語になってしまって、
あれ?と思ってしまいます。

どうしても『狼』と比べちゃいますが、友情を描くなら、
はじめからダニー・リーや強盗団のキャラクターをはっきり見せるべきなんです。
死んだ潜入捜査官からの入りじゃなくて。
これを見ているとチャウの個人の事情の方が強く出ている。
だったら私はチャウがもっと孤独になっていく方がいいよ。
ひどい観客だけど(笑)。

その一方で、
『レザボア・ドッグス』は始めからそれぞれのキャラクターを分からせておいて
「裏切りものはだれか」見つけようと騒ぐ犯人たちという
到達点を置いているから見やすかった。

確かに単調で長く感じる部分もありますが、
一貫して重い映画にしていないところに好感を覚えます。



宝石強盗の仕事のために集められた男たち、
ところが、彼らの作戦は警察に囲まれていたことで失敗。

Mr.ホワイト(ハーベイ・カイテル)と、腹を撃たれたMr.オレンジ(ティム・ロス)が、
集合場所である倉庫に到着します。
ホワイトがオレンジを励まし続けていると
後からやってきたMr.ピンク(スティーブ・ブシェミ)は
「仲間の中に裏切り者がいる」と発言。
宝石店での大虐殺で堅気を大量に殺害したMr.ブロンド(マイケル・マドセン)も戻り、
それぞれがお互いを罵り、疑いながら、
彼らを集めたジョー(ローレンス・ティアニー)との出会いの回想が挿入されます。

有名なオープニング、「リトル・グリーン・バック」に乗せて
黒づくめの男たちが車に向かうスローモーション。
文句ナシにカッコイイです。

台詞が多く、舞台劇を思わせる映画ですね。
誰が裏切ったのかは早い段階で分かりますが、
分かったとしても、私は全然平気でした。
潜入までの経緯をちゃんと見せてもらって満足です。
なんだか潜入捜査官の立場で物語を見てしまいがち…(笑)。

他にもこの作品に影響を与えてる作品は多そうですが、
…「現金に体を張れ」とかね。
観ながら「どのへんが『友は…』のパクリなんだぁ?」
と思ってましたが、ちゃんと出てきました。
最後のあたり、まんま『友は…』の見所を使ってました

友情の見せ方としては『レザボア…』の方がうまく出来ています。
キャラクターの分かりやすさもこちらに軍配。
映画としてのまとめ方が成功してます。

ただこの手のストーリーの暗さを味わうなら『友は…』を薦めますよ。
ファッショナブルに犯罪ものを楽しむなら『レザボア・ドッグス』、
潜入の辛さを繊細な映像で味わうなら『友は風の彼方へ』。

さあ、どっちが好みでしょうか?


レザボア・ドッグス [DVD]

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【今週のウチシネマ】臥せる虎、隠れる龍

2005-11-25 | movie/【今週のウチシネマ】


チャン・ツィイーと言えば、近日公開の『SAYURI』ですね。

彼女が日本の芸者を演じるにあたって、
違和感を持っている人はアメリカにもいるらしい。
なんて言ってるかというと「なぜ小雪を使わない?」だって。

やれやれという感じですが、
私が気になるのは、渡辺健の演じる会長役を、
キャスティング次第ではユンファ先生が演じていたかもしれない
ってことで。

それはツィイーとのツーショットの画像見ただけでもわかる。
「わー、これは潤發先生のハマり役のはずじゃん! 素敵!」
ですが、出なくてよかったかもね。
この手の映画はもう出る人なんて決まってる。
それにミシェル・ヨーも出てるし、
まるっきり『グリーン・デスティニー』ですもんね。

そんなわけで、『SAYURI』は置いておいて、『グリーン・デスティニー』です。
食わず嫌いでずっと避けてきたのですが、とうとう見ちゃいました。



女剣士シューリン(ミシェル・ヨー)の元に、
師にあたる剣の名手リー・ムーバイ(チョウ・ユンファ)が、瞑想の修業を中断し、
自身が持つ名刀・碧銘剣を手放し北京の名士に届けるように頼むところから始まるんですが、
そもそも、ムーバイが本当に剣を手放す気があるのか謎。

その他にも分からない点が多い。
貴族の令嬢イェンがこの剣を盗むけど、その意味も分かりにくい。
彼女は本当に剣の道を極めたいのか、
それとも自由な愛を求めたいのか、気持ちを抑えているのか。
すべてぼんやりしている。

万人向けに中国の伝統の描写を妥協するなら、完璧に妥協して
もっと登場人物の描き方に明確さを出していいんじゃないかと思う。
コメンタリーを聞いていても、悪役の死に方とか気にしてる問題が違う。
本当に意味の深い作品として世に出すならともかく、
スタンスがちょっと半端なのではないだろうか。
耐えて秘められた愛なら、もっとそれだけの圧力を感じたかった。

それに中盤の回想場面は、中だるみしているような気がする。
後でこの映画が二時間だと知って、本当に?と思ったほど。
三時間あるのかと思っていたから。

もしかしたら、もっと中国の思想の根底にあるものを理解していたなら、
そのそれぞれの繊細な気持ちを感じ取ることが出来たのかもしれないけど、
だとしたら、アカデミー賞を獲った理由はなんだったんだろう。
アジアのエキゾチックな要素ですか? ワイヤーワーク?

ワイヤーワークを否定したりはしませんが、私はあんまり好きではないなー。
というか、これだけ美しい映像なら、ワイヤーワークなんていらないのに。

有名な竹林での戦闘ももちろんですが、
ムーバイとシューリンのツーショットの場面の窓から見える竹林の美しさといったら!
そして、賊のローとイェンが馬で走る中国北部の広大な風景。
スタッフがCGと見紛うほどの現実離れした自然の神秘です。
撮影監督はピーター・パオ。
今まで見てきた『フル・ブラッド』や『狼…』なんかもこの人だったので、
妙に好感が持てたりして。
美しい背景にスクリーン映えする俳優たち。うっとりです。

ところでタイトルに【今週の亜州影帝】と入れなかったのは、
この映画の主役がチャン・ツィイーだからです。
当時はまだ知名度が今ほどあったわけではないけど、
この映画を見て心奪われる部分があるとすれば、チャン・ツィイーの活躍です。
酒場での戦闘シーンは最後のキメポーズで笑っちゃいます。
一番、香港映画的な場面な気もする。

イェンとシューリンの一騎打ちも素晴らしいアクションです。
可憐なチャン・ツィイーと成熟したミシェル・ヨーのアクション。
闘う女って素敵だ!





テレビで観てもよかったかなーなんて思ってたら、
12月16日に日本テレビで『グリーン・デスティニー』をやるそうです。
あちゃー! タイミング間違った!
これも『SAYURI』にあわせての放送なんだな。
なんで放送する可能性を考えなかったんだろう。
またよく見てその奥深さをしっかり考えますよ…。

それと、テレビ東京で12月9日には深夜に『非情の街』を放送します。
ティ・ロンさんとユンファ先生の『…挽歌』コンビですね。

 


グリーン・デスティニー [Blu-ray]

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【今週の亜州影帝】「祝いの酒は買ってやれんぞ。」

2005-11-22 | movie/【今週のウチシネマ】

私、駆け引きができないたちなので、恋愛もカードゲームもかなり苦手です。
ハッタリかますこととか出来ないんですよね。
だから、ギャンブルの話はすごく好き。憧れの目で見てしまいます。

そんなギャンブルの憧れ部分と、
ある意味『大丈夫日記』より笑えるズッコケ部分が混在した、
バリー・ウォン監督の『ゴッド・ギャンブラー 完全版』
実在の人物を元にして、
潤發先生が負け知らずの伝説のギャンブラー〔賭神〕こと、
コウ・ジョンを演じています。



日本のヤクザとの対戦に勝利したコウ・ジョンは、
その腕を見込まれ、組の小宮山に、
チョウという指名手配されている狡猾な大物賭博師との勝負を依頼される。
対戦するには危険な相手だが、
組の行く末がかかっていることを知り、依頼を受けるコウ。

香港に戻り、コウは弟分のドラゴに代わってバカラの負けを取り戻すが、
そこで勝って受け取った大金の小切手をめぐって狙われるはめに。
ボディガードのロンの助けもあり、なんとか追っ手をまいたコウだったが、
足を踏み外して坂を転がり落ちてしまう。

実は、けちな博打に明け暮れるチンピラのトウ(アンディ・ラウ)が、
気に入らないインド人を罠にはめるために仕掛けた悪戯に
引っ掛かってしまったのである。



…はい。
ここまでだけでもいっぱい突っ込みどころが出てきますよー。
まず、日本での勝負。

鐸のなかにサイコロを6つ入れて、より小さい目を出した方が勝ちの試合で、
相手の、肩に入れ墨入った姉さんが出した目はなんと全て1の目。
そこでコウさんが勝つために採った勝負師らしい選択がちょっと笑えます。
そういうジョークみたいな結果で勝ちが決まってしまうのかー、
博打の世界も気が利いてるなー。

それに、トウが仕掛けた罠。
仕掛けてる最中は、そんなわかりやすい罠に引っ掛かる人いるんですかぁ?

と思って見てたんですが、

コウさん、見事に引っ掛かってました

インド人が連れてる犬を見つめるだけでおとなしくさせてしまうような、
賭博師というかもはや催眠術師のコウさんが、
なんであんなちゃっちい穴にはまっちゃうのか。
そこをもっと透視してみなさい!と言いたくなっちゃいます。
きっと突っ込むことで成り立つんだわ、この映画って(笑)。


そしてコウさんは、トウと恋人のザン、弟分のウーグワイに助けられるんですが、
頭を打ったショックから、自分が賭神であることを忘れ、
さらには、10歳児並みの知性に退行してしまいます。
身元もわからないまま、大好きなチョコレートばかりねだるコウに、
トウたちは「チョコレート」と名付け、
自分たちの出入りする賭博場に連れていって、
持っている大金を使わせて儲けようとしますが、
そこで、彼らは「チョコレート」にギャンブルの才能があることを知るのでした。


このへんが潤發先生の役者魂を感じさせる部分ですね!
始めの、余裕の微笑みを絶やさない、
常に冷静でスマートな切れ者コウさんを演じる一方で、
ぼさぼさ頭でぼんやり口が開きっ放しの小学生みたいにになっちゃった
「チョコレート」のわがままな不貞腐れぶり、吹っ切れたような演技は、
二挺拳銃と並ぶ彼の真骨頂です。

取って付けたような記憶喪失ですけどね。
だからこそ賭神が余計かっこよくみえるってもんです。

ドラゴの負けを取り戻すシーンで、
相手の挑発を受けたコウさんの
「いい雰囲気になってきたな…よし、俺がやろう」
には痺れましたよ。
そのあとの勝ちっぷりも。

後半のチャンとの勝負も、結果は分かっていてもドキドキしますな。
カードを片手で散らせて、最後の一枚をピッと相手に投げ付ける、
…あれ、やってみたい。
はぁ。コウさんはかっこいいし、
チョコレートは可愛いし(実際面倒見るのは大変そうだが…)、
やっぱり潤發先生素敵だ!

(気になるんだけど、記憶の戻ったコウさんは、
 自分のしでかした幼稚な言動に、頭抱えたりしないのかな?)

アンディも、三枚目のお兄ちゃん役で、
変にかっこつけた二枚目より私はこっちの方が好きです。
虎の威をかる狐キャラというか、強気だけど威張れるのはウーグワイにだけ。
(この弟分、見た目ブシェミみたいでおもしろいけど、
 意外と兄貴よりしっかりしてそう)
トウはやんちゃなだけで根っからの悪者じゃないんだよね。
チョコレートを置き去りにする場面は、家族もの映画としても見られます(笑)。

彼女のザン=ジョイ・ウォンの可愛さを見るだけでも満足出来るし、
物語の完成度は低くても、見所は多いです(笑)。

バカラのトリックが妙に古めかしかったり、
悪者が時代劇ばりに
「これで私たちの勝利は間違いないですな…ワーハッハッハ」
なんて高笑いしたり、
全然意味のないスローモーションが多様されたり、
ちょっとどうかなーと思うところ多数ですが、
まあ、いいんじゃないですか、バリー・ウォンだし。

監督自ら出演もしてますが、監督の見た目と作品の色合いが
見事マッチしてる気がして、ひそかに笑っちゃいます。
確か、『狼…』にも、リーの上司役で出ていたような。

あとは、出ていると気になってしまう存在、
金貸し役のン・マンタもいい味出してます。

この作品はパロディと、
そのパロディをパクッてしまった続編の方がヒットしていますが、
下手に手を出してチャウ・シンチーにハマるのが恐いです。
何しろ世間の波に逆らって『少林サッカー』
(『カンフーハッスル』金馬奨受賞おめでとうございます)
も見ていない私。
ちょっと時間を置いてから見ようかと思ってます。
喜劇王まで追い掛けたら大変だ。
今は亜州影帝に浸かっていたいのよ。

ちなみに、今回の記事タイトルの台詞には、
あまりにかっこよすぎて、爆笑してしまいました。

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【今週の亜州影帝】Oh~、ベリーナイシー!!

2005-11-13 | movie/【今週のウチシネマ】
ユンファが歌う主題歌が頭から離れません。歌えるようになりたいくらいです。


誰が言ったか知らないが、
周潤發を好きになったものが、必ず一度は経験しなければならない映画、
それが『大丈夫日記』

私は、本当に潤發の映画が好きだと言い切れるようになったら、
この映画を観ようと心に決めていました。
なんとなく、刺激が強そうだからね。
そして今週、ついにその封印を解いたのです!

潤發演じる主人公・ファッツァイは「高給とり」の証券会社勤務。
雨の日に出会ったサリーとジョイ、ふたりの女性と付き合いだしたファは、
どちらと結婚すべきか悩んでいるところで、
ジョイに持っていた指輪を偶然渡してしまい、結婚に同意されてしまう。
それじゃあ、サリーとは別れるしかないと彼女に会いにいくと、
プロポーズされると勘違いされ、今度は指輪を渡される。
かくしてnoと言えないファッツァイの過酷な二重結婚生活が始まるのです。

あの、分かりにくいかもしれませんが、二重生活から寝不足のため、まぶたに目を書いています。この場面、なんか好きです…



はっきり言って、笑えます。
目を覆いたくなるような、ハラハラもののスクリューボールコメディ。
そしてチョウ・ユンファほどの人が、なぜこんな役を?と考えただけで
笑いが込み上げてきます。

これが『男たちの挽歌』のマーク?
これが『狼…』のジェフリー??
これが『アンナと王様』のシャムの王様???

この演技派俳優の欠片も感じられないマヌケっぷりはなんだ!

重婚がバレないように、その場しのぎで言い逃れ、
なんとか女たちをだまくらかし、しょっちゅう冷や汗タラタラ、
ビクビクしながら親友にすがる状況に陥っているにもかかわらず、
乗り切ると、妙に自信満々に
「ビック・マン(大丈夫)は俺だ!」と歌いだす陽気さ!
しかもその歌声もすばらしくヘタクソで最高!
ずり落ちたデカ縁メガネがまたまたマヌケさ倍増、面白すぎます!


酔った妻のご機嫌とりに、フランスパンを頭につけ、
眼鏡を逆にかけて「Drスランプ」の歌を踊り付きで歌いだしたときにゃあ、
そこまでバカやってくれると逆にかっこよくも見えてくるってもんです。


楽観的なのにピンチになると
「神様ぁ、僕が何をしたというんですぅ?」と嘆く、
そのコメディ的切り返しがすごいうまくて、
さすが!とも思えます。
ファが観てる側に語りかけてくるのも個人的にツボ。
(『フェリスはある朝突然に』と同じ。こういうの弱いんです。)


また、『男たちの挽歌』で、兄貴分だったマークを乞食同然に扱うボスを演じた
レイ・チーホン
が、親友の同僚役でファの重婚生活を支えるために、
身を粉にして奔走するのもまた痛快です。
いいように利用された挙げ句入院させられて、ファの写真をペンで刺しながら
「死ね! 死ね!」と言ってるのに、なぜかまた助けようとするところが泣ける!


チーホンよ、どうしてそこまでしてファを助ける!
これもまた潤發映画によくある友情の深さなのか??
(「お前とは前世で何かあったな」というようなファッツァイの発言があるので、
 おそらく、『挽歌』の頃の復讐をここでしているんでしょうね…)

あとは、ラジオをつけたファが、
「主演男優賞は、チョウ・ユンファです!」というアナウンスを聞いて
「またあいつかよー!」と言ってみたり、
『上海灘』の最終回を観ようというチーホンの婚約者に
「最後はユンファがババババって撃たれちゃうんだよ!」
と説明したりするご本人からのサービス付きです。


豪華女優二人(ジョイ・ウォン、サリー・イップ)が共演っていうのも贅沢。
ファと歌うシーンはすごくエレガントでかわいい!

クライマックスからオチまで、香港映画ならではのムチャクチャ加減ですが、
一度受け入れたらくせになりそうですよ。


とりあえず、観る気になった方は、
まず『男たちの挽歌』のマークの屈辱を観てから『大丈夫日記』を観ましょうね。
『男たちの挽歌』レビューはこちら

ここからマストバイ『大丈夫日記』!『男たちの挽歌』!



さて、ほかにも周潤發出演作を観ました。
まず『ストーリー・ローズ~恋を追いかけて~』
マギー・チャン演じる、ボーイフレンドにはこと欠かない美人学生ローズが、
大好きな自分のお兄さんのような男性に出会うまでを描いています。


兄と妹の再会



彼女が大好きな保護者代わりの兄貴は、もちろん潤發なんですが、
ローズの恋人ガミンと二役を演じています。

問題は、ローズは一体だれが一番好きなのか、
はっきり分からないんです。

初めて深く好きになった人とダメになったときに、
忘れるためにパリに留学すると言いだすけど、
そこまで入れ込んでたのか分からなかったし、
兄貴も兄貴で、ただ妹が心配なのかシスコン入ってるのかいまいち分かりにくい。

それで最後までひたすら雰囲気が暗くて、つらかった。
映画としてどういうスタンスで描きたいのか分かりにくいです。

あえて、ミーハー路線で観るならば、ガミンの笑顔満載なところ。
潤發の笑顔フェチは萌え~です。おそらく。
あとベッドシーンがたまりません(笑)。
次の日にローズとガミンが初体験の話をしてるとき、
「あなたはいつ?」とローズが聞くと
「うーん…昨日の夜」とおどけてみせるガミン。


ひゃー。


ところでまるっきりネタバレですが、
潤發の死に方の美しさがこの映画でまた拝めます。
なんであんなにも切なく死ねるんだろうか。
意識を失っていくまでのあの演技、悲しいよー。
余計暗ぁーくなってしまいました。


あと一本は『アゲイン/明日への誓い』
これは『男たちの挽歌』の前日談なんですが、
監督がジョン・ウーからツイ・ハークに替わったせいか、
まったく別物映画になってます。

マークがベトナムにいる、いとこと叔父を
女ボスの協力を得て香港に渡らせるんですが、
なんでホー兄貴の前日談じゃないんだろう。
続編である意味がない内容です。

あ、時任三郎が思いっきり吹き替えで出演していて、
なんで出てるんだろうかと思ってしまいました。
香港の日系の方でいいような。

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【今週の亜州影帝】完璧映画『狼/男たちの挽歌 最終章』

2005-11-13 | movie/【今週のウチシネマ】

亜州影帝ことチョウ・ユンファ周潤發にすっかり心奪われてから
毎週チマチマ出演作を観ているので、
すっかり【今週のウチシネマ】というか、【今週の亜州影帝】と化していますが、
ちゃんと他の映画も見てるんですよ、私。
でも観てもなんとなくうわの空。

この調子じゃ、好きな映画に出会えても、うっかり気付かないまま通り過ぎそう。
だけど、とっておきの映画はたいてい、
誰かに夢中になってるときにふいに出会ったりするものだ。

たとえば『博士の異常な愛情』にしても、そこにはキューブリック監督の、とか、
ピーター・セラーズの出演作で、という見えない前提がある。

彼らが関わっていることで出会った作品であると同時に、
はっきりと映画として純粋に気に入っていると言える。
だから、潤發が好きな今の私だって
最高の映画に出会えるチャンスがあるはずなんだ。


そう思っているときに観たのが
『狼/男たちの挽歌 最終章』THE KILLERだった。

killer2killer1



「男たちの挽歌」と入ってはいても、続編ではなく、
ジョン・ウー監督、ツイ・ハーク製作、チョウ・ユンファ主演の
三つ巴がまた揃っていることからついているだけで、
ストーリーもまったく異なります。

私の求めていた映画だ!
観始めてすぐに思った。
純粋に体がこの映画を喜んでいるのがわかる。
泣かされもせず、大げさな感動もしない、
でもどこかのパズルのピースがぴったりはまる。
私はこの映画を探してた!



組織のボスを襲撃する際に、誤ってある歌手の視力を失わせてしまった
殺し屋のジェフリー(チョウ・ユンファ)。
責任を感じ、彼女の角膜移植手術の資金を稼ぐため、
これを最後と、元・殺し屋の親友シドニーから暗殺の仕事を引き受けた。
ターゲットは中南米麻薬裏組織の大物・トニー・ウェン。

一方、VIPとしてドラゴンレースに招かれているトニーの警備に当たる
リー(ダニー・リー)という刑事がいる。

銃の不法取引のおとり捜査の最中に、通りかかった警官を目の前で殺され、
リーは犯人を追い、バスの中で男を射殺した。
彼にとっては追い続けていたヤマに決着をつけると同時に、
打たれた警官の復讐を果たす当然の行為であったが、
結果しか見ない上司は、民間人の中で銃を発砲したことを問題視し、リーを非難する。
納得できないまま渡された次の仕事で、彼は殺人犯のジェフリーを追うことになる。


ジェニーの部屋で再会する二人



殺し屋と刑事。
この相反する人間たちは、本来憎み合うべき相手なのに、どうしてか似ている。
いつかまた離れていくだろうふたりの、ひとときの友情。
なんて刹那的で、これ以上ないくらい美しいんだろう!

そして彼らは友人ともまた深い信頼関係を持っている。
ジェフリーに、体を張って仁義を通そうとするシドニー(チョウ・コン)、
リーを理解し、忠実に従うチェン刑事(ケネス・ツァン)、
たとえ一度憎みあうことがあっても、友情は変わることがない、
この二組の絆もまた熱く、魅力的。


この作品のすごいところは、実はもともとラブストーリーだったってこと。
元々は、殺し屋と歌手の恋愛がメインで撮影される予定だった。
ところが、ジェニー役のサリー・イップが歌手としての活動に専念するため、
なかなか撮影に入れなかった。
そのため、恋愛映画にするには女の出番が少なくなってしまうことに。

普通、そこから男同士の友情ものに移していくと、
どこかしら歪みが生まれるものですが、この映画ではまったく感じない。
もともとこういう映画だったとしか思えない完成度です。
私は見る前に、その事情をよく考えて観賞したので、余計に感心しちゃいました。

おそらくカットされたシーン



そして演出の確かさ。
ジョン・ウー監督は前にも書きましたが、本当にストーリー展開に無駄がない。
これはつまり物語の主流しか作らないということで、
粗捜しを始めたらボロボロ突っ込みどころは出てきますが、
それは「映画だからね」と見逃せる範囲内。
粗を捜すくらいなら、素晴らしい演出を目に焼き付ける方がどんなにためになることか。

はじめからサービス精神旺盛な銃撃戦、
ジェフリーとトニーの魂をダブらせる手法、
それに『リプレイスメント・キラー』で多様された、
「手前に人が通ると消える殺し屋」ね。
(『リプレイス…』はこれをお手本にしているんだね。それにしても雲泥の差が…)

ジェフリーのライフルを構えるタイミングから、
逃げた後狙われてることに気付くときの間合い(これがまたかっこいいんだ)まで、
すべてがベストと言える出来。
映画教科書あるならこれを一本まるごと掲載してもらいたいね。



もちろん潤發様もかっこよくて鼻血出ます。つつーっと。
どの作品よりも男前です。

女子供(カタギ)への優しさと、
殺し屋としての技術の高さを感じさせる演技にしびれます。
そしてジョン・ウーがインタビューでも語っていた、
裏切られた人間の表情は必見。
笑いとも悲しみともつかない複雑な感情が「再現」されています。アッパレ。

そんなわけで、この映画は私のベスト映画の仲間入り。
潤發映画でどれを観るべきか聞かれたら、これを薦めます。
で、気に入ったら『大丈夫日記』を薦めます(笑)!
『大丈夫日記』レビューはこちら

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【今週のウチシネマ】英雄本色2、と見せかけてボビー・ダーリンについて

2005-11-03 | movie/【今週のウチシネマ】

最近思うんだけども、
『シティーハンター』の実写が發仔主演だったらどんなによかっただろうかと…
私だってジャッキーさんは好きですし、
テレ東の深夜に映画やってたら見ますよ、そりゃ。

だけど、初期の渋いハードボイルドなシティーハンターを
軽いタッチで再現してぴったりくるのは彼だけのような気がするのです。
「ママに遺言状の書き方を教わっときな」とか、言って欲しかったわけです。

なんて言いだしたのは、先週に引き続き『男たちの挽歌2』を観たからでありますが。

『男たちの挽歌』の正統な続編。
服役中のホー(ティ・ロン)に弟のキッドや、
タクシー会社のキンさんもちゃんとでてきます。

そして死んだはずの潤發の役もちゃんとあるわけだ!

一作目に比べると話の質は落ちますが、
アクションシーンでいうとこっちの方が断然上です。
はじめっから見なくていいから、とりあえず最後の銃撃戦だけ観て欲しい。



手下に組織を乗っ取られた上に娘を殺され、
さらには渡米して身を寄せた友人の神父まで殺され、
絶望から精神に異常をきたしてしまった元マフィアのボス・ルンが病から立ち直り、
警察から組織を壊滅させるために協力を要請され出所したかつての子分であるホー、
そしてルンを病から救った恩人であり、
前作で40発の銃弾を受けて散ったマークの双子の弟(!)ケンとともに、
組織のアジトに乗り込んでいく場面。

どんだけ撃たれても彼らは死にません。不死身。
でもいいんです。迫力があるから。
撃たれた敵が必要以上に飛び上がって倒れたって、
いいんです、派手だから。

ケンが、(マークの形見の)コートの穴に引っ掛けた手榴弾を投げた時の
あの爆発の迫力といったら!
あそこは映画史に残るスローモーション名場面です、間違いなく。
ホー兄貴が振り回す日本刀もグッドです。

ほかにも、ケンがヤンを守ってアパートの階段を滑りながら
二丁拳銃で応戦する場面も見所だし、
前作よりずっと大人になったキッドが、
潜入する組織の信用を得るためにひとりで偽札を奪い返すシーン、
先に組織のなかに入りこんだホーにキッドが
自分を撃つようにささやくシーンなども見せ場で、
人物のなかではキッドが一番おいしい役になってますが、その分犠牲は大きいと…

それでですね、マークはすでに伝説になっていて、
NYにいるホーの知り合いがマークの絵を描いて部屋に置いているんですが、
その中にシティーハンターの扉絵とまったく同じ構図の絵があって
驚いちゃったわけです。

扉絵は85年頃に描かれているので映画の方が後。
まさか漫画の影響はないでしょうが、なんとなくうれしいのでした。
今後はひとりで、漫画のあの回を実写にしたら…などと考えて楽しみたいと思います。
佐藤由美子登場の回あたりがいいなー、っつっても仕方ないか(笑)。


男たちの挽歌II <日本語吹替収録版> [Blu-ray]

さて、お話変わって、今度は太平洋の向こう側の映画について。
今年の中頃は偉大なミュージシャンの伝記映画が多かったですね。

『Ray』のレイ・チャールズ、
『五線譜のラブレター』のコール・ポーター、
そして『ビヨンド・ザ・シー』のボビー・ダーリン。

『五線譜…』はコール・ポーターの人生を舞台で上演すると見立てて
生涯を振りかえるつくりになってましたが、
『ビヨンド…』はボビー自身が彼の伝記映画に出演している設定で
話が進んでいきます。
ボビーを誘うのは、子供時代のボビー自身。

小さいころから心臓を患い、
十五歳まで生きられればいいほうだと言われていた彼の支えになったのは、
ショウガールだった母から教わった音楽。

「あなたはいつか、シナトラ以上のスターになるのよ」

コパカバーナの前に通りかかると母は彼にそう教え込み、
かくして彼の人生の目標は、尊敬し愛する母の望むスターになることと心に誓うのでした。

いまいち盛り上がりに欠けるというか、
人の人生を盛り上がるように描くこと自体難しい気もしますが、
わかりやすいクライマックスがあるわけではなく、映画は淡々と進んでいきます。

一番注目すべきなのはケビン・スペイシーのそっくり加減です!

歌も見事に歌いこなし、ダンスも軽やかに披露しています。
それだけで見る価値があると言えるでしょう。
話がかつらに触れる時はかなりどきどきしちゃいますが。

『ビヨンド』といい『五線譜』といい、
構成に懲りすぎて中身がぼんやりしてくるきらいがあります。

なぜ素直に人生を見せようとしないのでしょうか。
彼らの音楽や生い立ちは、変わったプロットで飾らなければ見せられないものなのかなぁ。
私は彼らの音楽の世界観を表現してくれればそれだけで十分映画たりえると思うのですが。
でも、最後の小さいボビーと一緒に踊るシーンはすごく素敵でしたね。

ウォールデン(彼の本名)は死んでも、ボビー・ダーリンは生き続ける…。
小さいボビーがウォールデンとして命を背負って旅立っていったように思える最後は、
美しく見えました。

確かこの映画が公開して何週かたった頃、
ボビーの奥さんであったサンドラ・ディーが亡くなっているはずです。
まるで、世の中に彼の名前が広まるのを見届けるように去っていくようで、
感慨深いものがありました。
彼女の台詞(実際にいったかどうかは分からないけれど)、
「観客は見た目だけで判断するものよ」という言葉は、
彼にとって本来の自分のあり方を気付かせるものだったと思いますね。
だからこそ、自分がスターを演じることに喜びと苦しみを同時に抱えていたことを
実感したのかもしれませんよね。


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【今週のウチシネマ】英雄本色

2005-10-26 | movie/【今週のウチシネマ】

abettertommorowなんでおいらは男に生まれなかったのかなぁと、こういうときに思います。
つまり、女子供の出る幕がない、男の熱い世界に触れたとき。
大切な誰かのために命を投げ打つ男たちが私は好きだ。
ホー兄貴ィー!!


なんつって、テリー・ギリアムに会えた興奮に酔い痴れる一方で、
すっかり『男たちの挽歌』の世界にもハマってます。

とは言っても、まだ一作目しか見てないけども。

ジョン・ウーってまったく無駄なことしない娯楽映画監督だなと改めて思いました。
すべての要素を万遍無く入れ込んでもバラバラにならない、
それこそハリウッド的な予想通りのストーリー運びはキレイ過ぎてあまり好みではないですが、
面白くて見てるとあっという間に終わっちゃいます。
これが二時間? 嘘だろ!ってくらいに。



偽造紙幣を持ち込む仕事に行った台湾で、
身内に裏切られ、警察に捕まったギャングの幹部・ホーと、
兄の本当の仕事を知らないまま警官になった弟・キッド、
そしてホーの仇を打つためにひとりで敵の中に乗り込んでいく親友・マーク。

ホーの出所後の彼らの運命を、ドラマチックに描いています。


印象的なのは、やっぱりマークの敵討ち場面だなー。
2丁拳銃はそれほど好きじゃないけど、
オフィスでのあのマークの決意が漲った表情が好きです。


裏切り者のところにいくまでのスローモーション、
オネエチャンといちゃつきながら植木鉢に射す拳銃、
容赦なく打ち込む無数の弾丸。

これぞユンファ様! 熱いです。
しかしながら、あのあと、かっこつけないで
もっと用心していたらあんなことには…とも思えます。

ホー役のティ・ロンは『酔拳2』に出ていた役者で…見たことあったかなぁ。
カンフーのシーンはないですが、
鉄パイプかなにかでヤクザたちを殴り付けるところのキレはさすがです。
やり手幹部としての落ち着いた風情、
弟とマークをを見つめる優しい眼差しがぐっときます。

弟・キッドはレスリー・チャン…
はまりすぎ!
何も知らないときの無邪気さと、兄に反抗する必要以上に意固地な態度が
キッドの若さを象徴してます。
カメラ目線で銃をまっすぐに構えたところが好きです!

そういやぁ【ウチシネマ】をやり始めてから初めてかもしれない、泣いたのは。
どこでかというと、ホーがマークを見つけ、
「こんなになってまでおまえ…」
と言うところまで。
「過ぎゆく時の中で」だって泣かなかったのに。
がっしり抱き合うホーとマーク。
だぁーっ!(←涙)



あと一本は『アンナと王様』を鑑賞。
だから、ユンファ特集だから、ね。
ついてこいみんな!
絢爛豪華な『王様と私』に比べると非常にリアルな描写です。
それに政治的なエピソードが印象に残ったんですが、
昔のにはあんなのあったかな?

アンナのような、はっきり主張を持った女性がちいさい頃から憧れだったなぁ。
危機的状態から王家を救っちゃうっていうのは、
劇的とはいえやりすぎな気もしないでもないけど。

他に一言つけ加えるなら、
王様と王女が一緒の場面が微笑ましくて好きでした。
ユンファと子供のセットに弱い私。
マークと王様。同じ人とは思えない。

テリー・ギリアムの『ジャバーウォッキー』は、また改めて。

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【今週のウチシネマ】All about Ah-long

2005-10-19 | movie/【今週のウチシネマ】

『ウェイキング・ライフ』の他に観た映画は、
先週に引き続き《チョウ・ユンファ特集》です。

ahlongまず『過ぎゆく時の中で』。
私、この映画は一週間の間に何度も見直してしまいました。
…家族ものに弱いんです。
監督は『PTU』『Needing You』などのジョニー・トゥー。
チョウ・ユンファ、シルビア・チャン主演。
二人は脚本にも関わっています。


元バイクレーサーのアロンは、男手ひとりで一人息子のポーキーを
トラック運転手をしながら育てています。
仲のいいふたりは、お金はなくてもお互いに信頼し合い、毎日楽しく暮らしていました。

子供服のCMを撮影するために自転車がうまい子供を探しているという話を紹介され、
ポーキーをオーディションに出したアロン。
ポーキーはディレクターの目に止まり、見事採用されることになるのですが、
契約の為にアロンがディレクターのオフィスを尋ねると、
そこには見覚えのある女性が…。
実はディレクターの彼女こそ、10年前に姿を消したアロンの恋人であり
ポーキーの母親のシルビアだったのです…


ばっと見、香港版「クレイマー、クレイマー」といった感じですが、
女にだらしがなく、遊びが派手な主人公の元を去った女が、
無事に産んだ事実も知らされないまま残していった息子と再会し、
主人公が彼女のことをあきらめきれずによりを戻そうする点で
また違った趣のある作品です。
(まぁ意識はしていたと思いますが…)

母親と息子の初対面のぎこちなさや、父と息子の絆、愛情の表と裏を垣間見れて、
親子ってこんなところあるよねとうなずいてしまうところもあります。

あと、なんつっても、ウォン・コンコン演じるポーキーがかわいいんだなー!
子供のかわいさと憎たらしさを見事に演じてます。
彼はこの作品で香港アカデミー賞助演賞にノミネートされてますね。

そしてこの時、主演賞を受賞したのがチョウ・ユンファ。
もっと早くにこれを観ていたら、今と同じように彼の作品を追いかけたくなったはずです。
それほど彼の演技はいい! いいです!!
アロンの様々な顔…子供を大切にする父親であったり、女に手をあげるダメ男だったり、
命を賭けて戦うレーサーであったり、
その全てが彼であるという説得力が観客を満足させます。

はじめはすごいボサボサ長髪頭で衝撃的だけどね。
その髪型はないんじゃないの!
でもそのわけも後で分かるわけです。
「だからもっさり頭だったのねー」って感じで。

シルビア・チャンもこの役にぴったり。
ソバージュが似合ってます。
(なんか髪型の感想になってるな…)


この話の中では、アロンの髪型以上にショッキングな出来事があり、
あまりの辛さに私はしばらく呆然としてしまいましたが、
その部分すら、やはり三人の演技ですっかり美しく見えてしまい、
なんだか複雑な心境です。
これから見るという人がいるなら、是非なんにも考えずに見始めて欲しいものです。
エンディングの曲も、アロンの人生を表しているようで絶妙です。

台詞も人物描写もかなりうまく出来た佳作だと思います。
私はこれで、リマスターDVD買う決心がつきました!
12月が楽しみだわ~。


過ぎゆく時の中で デジタル・リマスター版 [DVD]

そしてもう一本は、同じくチョウ・ユンファ主演の「リプレイスメント・キラー」ですが、
これはもうガンガンスキップして観ちゃった。

replaceユンファ先生が、行かなきゃいいのに行っちゃったハリウッドでの初仕事ですが、
かっこいいけどさー、だからなんだろう?という感想になってしまいます。

確かに定番の二丁拳銃もハマってるし、
指令に背いてマフィアに立ち向かう無口な暗殺者っていうのも素敵ではあるし、
スリムで身のこなしも軽やかで申し分ないけど、
話はつまらんよ!

あまりにこじんまりとまとまり過ぎていて、人物の深みがない。
「ウェイキング・ライフ」の中でも言ってたけど、
映画はストーリーで見せるもんじゃないんだってことがよく分かります。
そこにいる人物がどういう本質を持っているかを分からせないでは話は進まない。
寡黙ならかっこいいかっていうのはお門違い。
もっと主人公に背くだけの理由の強さがなければダメだ!

ハリウッドで活躍するユンファ先生を見ても、今まで魅力的とも思わなかったのは、
決して本人のせいではなく、彼の演技を出させない映画の方がいけなかったんだなと、
この二本を見てはっきりと感じました。

12月までの間に、また『過ぎゆく時の中で』借りようかなーと思うくらいだな。


リプレイスメント・キラー [DVD]

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【今週のウチシネマ】Dream is destiny

2005-10-19 | movie/【今週のウチシネマ】
夢ってのは脈絡がない。
妙にリアルだったり、急に全く関係のない風景に出くわしたりする。

私は眠たくもないのに必要以上に睡眠を採っている。
現実に飽き飽きしているからかもしれない。
とにかく、眠らないではいられない。
おかげで近ごろは眠りに落ちる瞬間の、魂が抜ける感じも分かる。

そうすると夢もたくさん見る。
昔は逃げる夢が多かったけれど、最近は外国の夢が多い。
それと母の夢。今ではもう会うこともない友達もよく交替しながら出てくる。
彼らは私の願望なのか、テレパシーなのか、いまだに分からないけれど、
現実とは違うthe other side of my lifeと言ってもいいのかもしれない。
実際、私は夢の方が現実に思えそうなときだってある。


『ウェイキング・ライフ』という映画は、『恋人までの距離〈ディスタンス〉』、
『ビフォア・サンセット』のリチャード・リンクレーター監督作品で、
この2作品に出ているイーサン・ホーク、ジュリー・デルピーが
同じ役で一場面出演している。

たとえば彼らは「意識」について語り合っている。

「私の人生は妙に醒めていて、老女が回想しているようなものに思える」
と彼女が言うと、
彼は死んだ人間の脳は死の直後、5分から数十分は生きている話をする。

「つまり、きみの人生はその数分に老婆が見る夢なわけだ」

そして彼女は彼がいつか話した「魂の輪廻」の話を思い出して、
魂が何度も生まれ変わるには人口の比率が合わないと言う。
じゃあきみは新しい魂が生まれてくるっていうの?と彼が聞くと、
彼女はそうじゃなくて、と返す。

「魂って記憶の集合体なんじゃない?」

新しく生まれてくる命は、人類の種の記憶を持っている、
だから、ヒトは本能の記憶を生まれながら持っているという話をする。

この場面も、主人公が見る夢の一部なわけですが、
私は、監督は霊能力者なんじゃないかしら?と思ってしまいました。
この会話は非常に意味がある気がする。
前にもここで書いたけれど、私は輪廻転生を信じる派で、
でもそれは理論があるわけではなくて「希望」としての信念だったわけです。
でも、この話はすごく理に適ってる。
最近ある本にも同じことが書いてあって目から鱗が落ちる思いだった。

つまり、魂・記憶が素粒子だという考え方。

だとすると、夢の正体も説明出来そうな気がする。
体を離れて記憶が解放されて、昔の思い出や最近の視覚的な刺激、
それに昔の魂の記憶?が混在して形になる。
死もその状態に近いはずだ。

そうすると、この映画に出てくる、
「死は生の外の夢だ」
という台詞に繋がる。

この映画、おそらく実写の上に色を乗せてアニメにしているんだと思うんですが、わざと動きを歪ませてあって、見る前に「バス酔いみたいになるよ」という話を聞いてました。
確かに始めは辛いけど、後半は曖昧さがかえって好感持てました。
夢なんて、あんな感じでしょ(笑)!

私は暑苦しいくらいに様々な概念について語りかけてくるこの作品がかなり好きです。
全部スクリプト起したいくらい。
『恋人たち…』を10回観るとしたら20回は観たいかも。
今更だけどDVD買おうかな。
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【今週のウチシネマ】ベスト盤的ゴッタ煮映画

2005-10-11 | movie/【今週のウチシネマ】

そういえば、チョウ・ユンファって『パイレーツ・オブ・カリビアン3』に出演するんですよね。

映画秘宝などでお馴染みの町山さんのブログに
オーランド・ブルームがユンファ先生と共演出来て感激していたと書いてあった。
オーリーは彼のファンだったらしい。
あれ、もう撮ってるのか。

実はお恥ずかしいミスで言いたくないけど『パイレーツ…』を見逃しているので、
2が始まる前までにちゃんと見ておきたいと思っております。

さてさて、そのユンファ先生の作品から『フル・ブラッド』が今週の家映画。
(花旗少林TREASURE HUNT 1994年 ジェフ・ラウ監督)
かなりネタバレです。

treasurehunt中国に渡り「国宝」を奪ってくるよう指令を受けた
米国工作員のチャン(チョウ・ユンファ)が、
国宝の真相が分からないまま、少林寺に身を隠すことになる。
そこで出会うのが精神病で部屋に拘束されているという
不思議な力を持った少女・シウチン(ン・シンリン)。
チャンは寺で過ごすうちに、彼女や僧侶たちと心を通わすようになる――

この映画、作品ガイドなんかでは「アクション」の枠で紹介されているので、
タイトルから言っても、さぞかし渋いハードボイルドアクションなんだろう、
と思って観始めたら大間違い。

始めは「あれ、コメディ?」と思わされ、そのうち銃撃戦が出てきてほっとすると、
今度はカンフー映画? あれ、ラブストーリー?とどんどん印象が変わってくる。

改めて考えてみると、はじめのアメリカのシーンは必要なかったんじゃないか?
おじさんに相棒のマイケル、駅まで送ってくれた彼女はどうなっちゃったの??
ほったらかしかよ!
強引なストーリー展開で呆気にとられます。
イマイチ国宝の奪い合いの仕組みが説明不足のような気もするし。

ジャンル分けが出来ない映画は、よく出来た映画とは言い難い気がするんだけど、
よく考えてみると、これだけ色んな要素を盛り込めるって、ものすごい技術がいるのかも?
それに場面場面で観てみるとすごく面白く出来ています。

住職とタクシー運転手の功夫シーンとか
(なんで戦う必要があるのかも不明…)、
メガネ小僧のチンランの存在そのもの(かわいいです)、
チェンが寺の慣習に反発するところは「天使にラブソングを…」的な展開だし、
(だからといってゲームボーイあげたりジャンクフードを持ち出すのはどうかと思うけど。)
チャンとシウチンの飛行シーンなんかはファンタジー映画です。感動的。
シウチンの場面は特に色彩が美しい。

トータルで見るとコンセプトがないけど、部分部分はいいとこどり、
映画のベスト盤みたいな感じでしょうか。

私が好きだったのは、チャンの安全と引き換えに売られることに同意したシウチンを
チャンが助けに行く場面。

祝杯をあげる密売の首謀者トンと部下たちがいる食堂の外で、
見張りの男たちが乗っていた車のラジオをつけるチャン。

「月夜の下で 私を見つめて――」

ふたりの過ごした日々を思わせる歌が流れる中、
食堂で、寺の部屋から見えた梅の枝を手に、ひとりうつむくシウチン。

「愛しているかと訊くあなた――」

賑やかに酒をグラスに注ぐ男たちの手元から、
一升瓶にガソリン?を注ぐチャンの手に画面が移る。
ゆっくりとした足取りで一升瓶を道の脇に等間隔でおいていく。

「私の心は決まってるけど
 月を見て黙っていました――」

足に紐を巻きつけた犬が食堂の中に忍び込み、
テーブルの足に紐を絡み付ける。

犬が入ってきたドアから外気が入り、
何かいるのかと外へ出て行く店員たち。
素早くチャンが鍵をかける。

「月夜の下で私を見つめて
 愛しているかと訊くあなた――」

トンがライターで煙草に火を点けると、
マッチ箱の中のマッチ全てに火をつけるチャン。
食堂の向こう側には「給油所」という看板。

「どうかあなた気付いてください
 月が何か語りませんか――」

ラジオから流れる歌が間奏に入った…
と次の瞬間、大爆発が起こる。

急発車した車に結ばれた紐で食堂のテーブルが転倒し、出口が塞がれる。
外に繋がった紐から火が伝い、それを見た男たちが窓ガラスを割り次々と外に出ると、
そこにマシンガンを構えたチャンが!


カカカカッコイ―――!!!

やっぱ男たるもの、女を命がけで守らにゃあきません!
「構わないさ 彼女のためなら死んでもいい」と言えにゃああきません!

…ここだけ説明するとハードボイルド+ラブストーリーなんだけどね。
自分の記憶力のよさに感心しちゃった。
ちなみにこの曲、テレサ・テンの「月亮代表我的心」という曲。
どおりで沁みるわー。
「いつの日かこの愛を」に先に使われていたようです。

そんなわけでこの映画、三回くらい見ると愛着が湧いてきます。
キーワードは「召し上がれ」「上海灘」「風鈴」「卵」、
あと「雪」と「花」ね。

こちらのページに画像が載ってて卒倒しそうでした。
ン・シンリンかわいい!
当時、自分と同じ年とは思えない…

なんだかすでに懐かしささえ感じちゃうわ。
良作じゃないのに愛すべき映画です。

 


フル・ブラッド [DVD]


二本目は『恋人までの距離<ディスタンス>』のふたりが再会する続編、
beforesunset『ビフォア・サンセット』ですが、
もうこれは何もコメントしません。



見なさい!



おすぎ口調であえて言わせていただきたい。
私は『恋人までの距離<ディスタンス>』『ビフォア・サンセット』を枕元において寝るよ。
それほど愛すべき映画。
一言付け加えると、イーサン・ホークが一瞬、
『マシニスト』のクリスチャン・ベールかと思いました。
顔、ガリガリです。
ジュリー・デルピーはほとんど変わってないのに…

1:99それと『1:99 電影行動』というのも観ました。
これはSARSなどで元気を失った香港を、
映画界から活気を復活させようという試みの映像集。

そうか…SARS、あったなぁ。
忘れないというためにもこういう作品は残す意義があるのかもね。

チャウ・シンチー、アンドリュー・ラウ、アラン・マック、ツイ・ハーク、フルーツ・チャン、メイベル・チャン、アレックス・ロウ、アンディ・ラウ、 トニー・レオン、サム・リー、アンソニー・ウォン、ジャッキー・チュン、エディソン・チャン、 カリーナ・ラウ、チャップマン・トー、ショーン・ユー、アーロン・クォック、などなどなどのそうそうたるたるメンバーで制作されています。
分からない人にも、観たことある人ばっかりという、
短いながらも豪華なボランティア映像集です。

 


ビフォア・サンセット [DVD]


1:99 電影行動 [DVD]

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