もう10回以上ロンドンに来ているので、ほとんど観光地と言われるところは見て回ってしまい、
今回どこを訪れていいのか見当がつかず、どこかオススメの場所はないですか?と募ったところ、
留学中にクラスメイトだった子から「ナローボートに乗ったら?」と提案してくれました。
早速調べてみたものの、急にナローボートのツアーを探してみても出ていないか埋まっている状態。
しかし、知る人ぞ知るロンドン博物館がないかネット検索していたら、
キングスクロス近くにロンドン運河博物館があるじゃないですか!
ここならアクセスもしやすいし好都合!
ホテルに荷物を預けた後に徒歩で博物館へと向かいました。
入場料は£7.5。入口にスタッフがいて、しおりと簡単な順路の説明をしてくれます。
希望すればツアーのように一緒について解説してくれるみたい。
私はまだ渡英したてで解説を聞き取れる自信がなかったので、しおり片手に一人で回ることにしました。
1階入口の左側には早速「コロニス」というボートが置かれています。
このボートは1935年に作られたもので、ロンドンからバーミンガムまで、
木材や鋼鉄、フルーツや穀物を運ぶのに使われていたらしい。
実際に住んでいないとわからないようなボート内部の生活空間まで見ることが出来ます。
もちろんコンロもあるしベッドもある。
引き出し型のテーブルや収納など、狭い場所でも生活出来る工夫が見られます。
扉の絵やポットの柄が可愛いですね。
カメラの画角ではボート全体が収まらないくらいの大きさがあります。
ところで、何故この場所に運河博物館があるかというと、ここに2つの大きな貯氷庫、氷室があったからなのです。
1857−58年と1862−63年に作られた、直径10メートル、深さ13メートルの大きさがある貯氷庫。
この貯氷庫を作ったのはイタリア系スイス人のCarlo Gatti。
1847年にロンドンへ渡ったGattiは屋台でワッフルや焼き栗を売っていたそうですが、
その後事業を拡大し、チョコレートや当時高級な食べ物だったアイスクリームを一般に販売し始めたそうです。
しかし当時の英国の氷は量も少なく純度も低いため、わざわざノルウェーから氷を輸入し、
カナリーワーフ近くにあるライムハウス・ベイシン(流域)で艀船に積み替え、
リージェント運河を使って、ここバトルブリッジ・ベイシンにある貯氷庫まで運びこんだんだとか。
(確かに地図で見ると、ライムハウスからバトルブリッジまで、弧を描くように運河がつながっている!)
この事業で貧しい家庭の生まれだったGattiは裕福な実業家となったのでした。
Gattiの事業を通じて、一般家庭にも氷やアイスクリームが普及したため、
博物館の中にもアイスクリーム用のカップやスプーン、
レストランのキッチンにあった保存用の冷凍庫などが展示されています。
バトルブリッジ・ベイシンが作られたのは1822年、元々はこの流域の建設を手がけた地主のウィリアム・ホースフォールにちなんで
ホースフォール・ベイシンと呼ばれていたそうですが、フリート川に掛かる橋・地名にちなんでバトルブリッジ・ベイシンと呼ばれるように。
博物館の自動ドアから外に出ると、バトルブリッジ・ベイシンとそこに停泊するナローボートの景色を楽しむことができます。
2階に上がると、さらに詳しいボートや運河の解説展示が続きます。
昔の運河に関するニュース映像の上映や、運河のさらなる歴史のパネルが何枚も展示されていますが、
特に目を引いたのは、馬!
何故馬が!?
というのも、第二次世界大戦前までは馬がボートを引っ張っていたそうな。びっくり。
でも考えてみればそうか、モーター化されるまでの間、オールで船を漕ぐわけに行かないですもんね…
そのため、2階の半分はいかに馬が運河の仕事に重要であったのか、
また馬たちの生活やケアについて詳しく説明されています。
獣医さんの器具や薬品も展示されていたり、馬具も飾られていたり。
ボートを引く馬が鉢合わせてしまった時は、片方の馬が引いているロープを緩めて
相手方のボートの下に潜らせる、といった工夫がされていたらしい。
こぢんまりした博物館ではありますが、持病の影響と旅の疲労もあり、
2階まで上がった時には疲れて映像上映の椅子のお世話になりつつ、
とりあえずパネルの写真を撮っておいて後で見返そうと思ってましたが、ほとんどが手ブレで読めず(涙)。
しかし、身近でありながらも意外と注目する機会が少なかった運河の歴史を知るきっかけになり、意義のある訪問になりました。
キングスクロス周辺は留学中に地下鉄の乗り換えで使っていた思い入れのある土地なので、
グッズ売り場では博物館を中心にした地図が描かれたコースターを購入。
お昼を過ぎてすでにヘトヘトでしたが、次の目的地に向かいます。
続く…