モノローグ「謝れ」
イヴ・エンスラー作
私たちの話は私たちの頭の中にだけ存在する。
蹂躙された私たちの体の中にだけ
戦争の時間とがらんどうの空間の中にだけ
どの様な公式的な記録も文書も跡形も無い。
ひたすら良心だけ。
ただそれだけ。
私たちが約束されたこと:
私が彼らについて行けば父を助けられる。
仕事につくことができる。
国のために働ける。
行かなければ私を殺すという。
そこがもっと良いという。
私たちがみつけたもの:
山も無く
木も無く
水も無く
黄砂 砂漠
涙でいっぱいの倉庫
数千名の心配事だらけの少女たち
私の編んだ髪は切られ
下着をつける時間も無かった
私たちがさせられたこと:
名前を変えさせられ
ボタンの外しやすいアッパッパを着せられ
一日に50人の軍人の相手をさせられ
生理の時もさせられ
服も脱がず男根だけを出す軍人ともさせられ
あまりにも多くの男を相手にして歩けなくなってもさせられ
足を伸ばすことも体を曲げることができなくてもさせられた。
彼らが私たちに繰り返ししたこと:
ののしり 殴り
血まみれになるまで腹をえぐり
消毒して 注射して
また殴り
穴をあけ 穴をあけ
私たちが見たこと:
浴室で化学薬品を飲んだ少女
爆弾に当たり死んだ少女
銃に撃たれさらに撃たれた少女
壁に頭を打ち付けた少女
溺死するように川水に放り投げられた栄養失調になった少女の体
私たちに許されなかったこと:
体を洗うこと
出歩くこと
医師に診察を受けること
コンドームを使うこと
逃げること
赤ん坊を守ること
やめてと言うこと
私たちが貰ったもの:
マラリア 梅毒 淋病 死産 結核 心臓病 精神発作 憂鬱症
私たちが食べたもの:
飯 味噌汁 たくわん 飯 味噌汁 たくわん 飯 飯 飯
私たちがなったもの:
破壊され
道具になり
不妊になり
穴になり
血だらけになり
肉の塊になり
追放され
沈黙され
1人ぼっちにされ
私たちに残されたもの:
決して消すことのできない衝撃
死んだ父
無賃金
傷跡
男への憎悪
子もなく 家もなく
空っぽになった子宮
酒癖
罪の意識と羞恥心
何も 何も!
私たちにつけられた名前:
慰安婦
堕落した女たち
私たちが感じたこと:
私の胸は今も震えている
奪われたもの
春
私の生。
私たちは今、74歳
82歳
93歳
目は見えなくのろいけど準備はできている。
毎週水曜日日本大使館前で
これ以上恐れること無く
私たちが願うこと:
今すぐに
私たちの話がこの世から消える前に
私たちが死ぬ前に
日本政府よ
謝れ どうか
慰安婦の女性たちに悪かったと
私に謝れ
私に悪かったと謝れ
私に
私に
私に
謝れ
悪かったと謝れ
悪かったと。
*イヴ・エンスラーは <ヴァギナ・モノローグ>の作者
許玉汝・小川和子 共訳