「守ってください」
「守ってください ウリハッキョを!
国を奪われ故郷を追われ 私は
学ぼうにも学べませんでした」
「守ってください ウリハッキョを!」
目頭を抑えながら仰いましたね あの時も
ウリハッキョは心のふるさとだと
子供たちが感謝の気持ちを込め歌った時も
小刻みに震える声は私たちの胸を揺さぶり
88歳のあなたの 重みのあるひとことは
諭して下さいました 一番大切なものを
そうですとも、守らなくては
どんな想いで建てた学校ですか
朝鮮人を育てるのはウリハッキョだけだと
一世の方々が血と汗で建てた学校です
艱難辛苦を乗り越え子供たちを育てながら
一軒一軒同胞を訪ね呼びかけられましたね
生野のど真ん中に 立派な新校舎を建てて
未来の主人公たちを 堂々と育てようと
新校舎落成のテープを切られた日も
21世紀をひた走る 今日も 変わりなく
半世紀の間 学校を支えられたハルモニ
割れた窓ガラスにテープを貼り暮らしても
足腰が弱り 段々耳が遠くなっても
もっとあげるものはないかと思案される
尊いあなたの姿に ただ胸が詰まります
時代が変わろうと守り抜かねばならぬもの
亡くしては生きれぬ 我が祖国、我が民族
心の柱をしっかり持たねば崩れてしまうと
全身で教えて下さった みんなのハルモニ!
ハルモニが贈って下さった通学バスに乗り
ハルモニが贈って下さった机と椅子で学び
ウリマル、ウリノレを高らかに歌う子供達
輝く瞳に 明日が宿っています
必ず守り抜きますとも ウリハッキョを!
ハルモニムが蒔いて下さった学校愛の種は
子供たちの胸に、私たちみんなの胸に
民族愛の花を 豊かに咲かせる事でしょう
* 尊敬する金甲生オモニムに
시
「지켜주시오」
-지켜주시오 우리 학교를!
나라 빼앗기고 고향땅 쫓겨나
배우고싶어도 난 못배웠어요
-지켜주시오 우리 학교를!
눈시울 적시며 할머님께선 말씀하셨지요
<우리 학교는 마음의 고향>이라
꼬마들이 감사를 담아 노래불렀을 때도
잘게 떨리는 소린 우리 가슴을 흔들고
여든여덟살 할머님의 무게있는 한마디는
깨우쳐주셨습니다 세상 가장 소중한것을
아무렴 지켜야지요 할머님
어떻게 세워진 학교입니까
조선사람 키우는건 우리 학교뿐이라고
1세분들 한몸 바쳐 세워준 학교입니다
모진 고생 이겨내며 여섯자식 키우면서
한집한집 동포찾아 호소하지 않았습니까
이꾸노복판에 보란듯이 새 교사 세워
미래의 주인공들을 어엿하게 키우자고
새 교사 준공의 테프 끊으신 날에도
21세기를 줄달음치는 오늘도 변함없이
반세기를 학교 위해 바쳐오신 할머님
깨진 유리창 테프로 고정하여 살면서
이제는 귀마저 잘 안들리시면서도
더 줄것 없을가고 오늘도 궁리하시는
할머님의 깊은 사랑에 목이 메입니다
시대가 달라져도 기어이 지켜내야 할것
그것없인 살수 없는 내 나라,내 민족
마음의 기둥이 있어야 안 흔들린다고
온몸으로 가르쳐주신 우리들의 할머님
할머님 보내주신 통학뻐스를 타고
할머님 보내주신 새 책걸상에서 배워
우리 말,우리 노래 익혀가는 학생들
반짝이는 눈동자에 래일이 비칩니다
기어이 지켜가렵니다 우리 학교를!
할머님께서 뿌려주신 학교사랑의 씨앗은
아이들의 가슴속에,우리모두의 가슴속에
민족의 꽃을 더 풍성히 피워줄것입니다
* 존경하는 김갑생어머님께
「 紀州・熊野に魅せられて 」
1.紀州へようこそ!
3時間
心地よい高速バスに揺られ
白浜とれとれ市場前に到着した
「紀州へようこそ!
お待ちしておりました。」
剃りあげた頭にうっすらと残る
産毛のような白い頭髪と白いあごひげ
大柄な倉田さんが大きな手を差し出した
(わぁ アルムのオンジそっくり!)
子供のようにはしゃぎながら
初対面とは思えない彼の手を握り返した
田辺市立美術館に向かう道すがら
車の中でずっとクラシックを流してくれ
途切れることなく話しかけてくれる
小高い山に囲まれた濃い紅色の喫茶店に着いた
ガラス張りの壁 真ん中に置かれた古いピアノ
ガラスの向こうに紺碧の海が見える
なんて素敵なところだろう
斜め下には美術館が見え右手には病院
倉田さんが6ヶ月も入院していたという
河津さんのお陰で九死に一生を得ましたと
1年間の闘病生活を淡々と話された倉田さん
ゆったりとした口調は壮絶さを感じさせない
メガネの奥の優しい瞳は
いつも周りの人を気遣う暖かいまなざし
こうして紀州の一日が始まった
*アルムのオンジ(アルプスの少女ハイジーの祖父、
人里離れたアルムの山の中に一人で住んでいた人)
2.田辺市立美術館にて
前方に果てしなく広がる太平洋
太陽の光を浴びて銀色にきらめく海
春を一足先に運んでくれる穏やかな浜風
まるで大きな公園のような敷地に
紫、黄,白のすみれの花が咲き乱れ
暖かい色のモダンな美術館が建っていた
2011年3月5日今日ここで
「原勝四郎が放ち続ける詩の光」を
河津聖恵さんが講演し朗読もする
原さんの絵「江津良の海」が表紙になった
詩集「新鹿」をひざの上にそっと置き
倉田さんと前後に並んで耳を傾ける
ここの人たちは他郷の人が語る故郷の話を
どんな思いで聴いているのだろう
原さんの絵が詩人の言葉で光になり花になる
原さんの荒々しいほど力強い絵画が
河津さんの繊細な詩心を揺さぶり
一編の詩が原さんの絵に命を吹きかけている
素晴らしいコラボに観客の目が輝く
自分の住む紀州がどんなに素晴らしいかを
新たに発見する喜びに満ちている
高層ビルなど縁のない自然の素晴らしさと
力みなぎる絵画と光を放つ詩が
ひととき安らぎをくれ 幸せをくれた
3.湯ノ峰温泉のゆで卵
一七日、入れば、両眼が明き
二七日、入れば、耳が聞こえ
三七日、入れば … …
生命の「再生」の湯を味わってと
倉田さんが湯ノ峰温泉に案内して下さった
山道をくねくね回り、峠を越え越え
橋上から見下ろす川面に ゆらゆら何だろう?
硫黄の匂いが漂う川辺に下りて
五つ入りの卵の袋を 囲いの温泉に入れる
《残念、壷湯は40分待ちですよ。》
仕方なく近くにだけでも行ってみる
入り口に男の靴が大小 親子だろうか
《熊野が誇る世界遺産なので
入ってもらいたかったなぁ》
屋根の苔を触ってみた 歴史を感じる
《ゆで卵でも食べましょう》
後ろ髪引かれながら 川辺に戻ると
石畳の上に寝そべって 人が本を読んでる
寒くないのかなぁ と 思いながら
足下の石畳をさわると あったかぁい!
小川の水も温泉の湯だ あったかぁい!
ゆらゆら踊ってたのは 温泉の華だ!
倉田さん、河津さん、夫とわたしに
ひとつづつ ゆで卵の配給 嬉しいな
《残りの一つは はい、オンニョさん》
あちちちち なかなか 剥けない
口に入れると 硫黄の香りが
じゅわっと 広がった 美味しい!
温泉には入れなかったけど
倉田さんの温かぁい思いやりが
ここ湯ノ峰温泉でも 胸いっぱい広がった
4.熊野の椿
朝から贅沢に花ノ窟見物
入り口に向かって樹木の間を歩いていたら
これはビックリ
椿の木が天高くそびえ立っているではないか
首が痛くなるほど仰ぎ見る椿は初めてだ
10メートル以上あるだろうか
何百年ここに立っていたのだろうか
熊野の神木のように天下を見守っている
春の木と書いて椿 陽春を予祝する美しい花
つらつら ツバキ うちの国では トンベク
なんと似ている呼び名だろう
どちらの名が先に付いたのかなんて問題外
真っ赤な花を誇らしげにいっぱいつけ
広い葉っぱは陽光をはねかえしキラキラひかる
葉と葉の間から刺し込む光に胸弾ませ
つるつるの幹を撫ぜれば暖かいオモニの肌のよう
オモニの故郷済州島でも椿の花が満開だろう
幼い頃オモニがお風呂上りに
いつも頭に擦り込んでくれた椿油
故郷では自分で絞って作ったと言ってたっけ
まだ一度も行ったことの無い オモニの故郷を
異郷の熊野で感じるなんて夢にも思わなかった
異郷で見る故郷 でも 涙が出るほど嬉しい
倉田さん有難う 思いがけない贈り物です
*オモニ(母)
5.熊野灘の海に向かって
熊野が誇る世界遺産
海に向かって吠える獅子岩を眺めながら
自然に会話がはずむ
《うちの国の金剛山にも
同じ名前の岩があるんですよ。》
《伝説なんか集めたらおもしろいでしょうね。》
《日本、朝鮮、中国は良く似てますね》
《昔は朝鮮通信使なんかが
海を渡って良く来たもんですよ。》
七里御浜に静かに下り立ち
獅子岩を背に海に向かって佇む
《あの頃に戻れないかねぇ》
3月の太陽は惜しげもなく海を照らし
鏡のように光り輝く熊野の海は
遠慮なくその美しさを見せ付ける
空と海が重なった水平線に飛び交う水鳥
音もなく浜に押し寄せるさざなみは
真っ青な海に良く映える純白のレース
知らぬ間に涙がこぼれる
獅子になり 海に向かって吠えたい
海は一つ 太平洋も朝鮮東海も日本海も
この海の向こうには 私の祖国がある
子ども達と同胞達の希望を乗せ
行き来していた「マンギョンボン号」は
いつ又この海を渡ってこれるのだろう
心優しい熊野には似ても似つかぬ現実
一人一人はこんなにも温かいのに
どうしてどうして?なぜなの?
《ぼつぼつ会場に行きましょうか》
倉田さんの声に はっと我にかえる
お天道様が寂しげに笑っていた
6.あんかけスパゲティ
朗読会の前に腹ごしらえと
通りに出たものの 残念
日曜日はあっちもこっちもお休みだ
しばらく行くと やっと喫茶店が一軒
ドアーを開けたとたん
壁のメニューが見えた
(あんかけスパゲティ?)
《すぐ出来ますか?》
《それ御願いします!》
4人がいっせいに声を上げた
二人前づつしか茹でられないので
時間差で食べてと のん気な返事
出演者二人に先に食べて 行ってもらう
甘酢っぱい良い匂いが 店中に広がる
やっとありつけた「あんかけスパゲティ」
どれどれ どんな味だろう
急がせたせいか パスタがやや固い
でも味は一級だ 《美味しいですね》
《有難う御座います。オリジナルです。
この味出すのに 1年かかりました。》
一年かかるほど
特別な料理には見えないけど
本人が言うんだからそうなんだろうな
一度食べた味が忘れられず
その味出すために ああでもこうでもないと
作りつづけたそうだ
ウインナーと玉葱をいため
塩胡椒してオイスターソースを絡め
とろみを付けた 「あんかけスパゲティ」
女主人の優しそうな笑顔が プラスされ
後味が とてもよかった
ゆったりと時間が流れた 熊野での思い出
7.夢の祝祭
かまどで沸かした熱いお湯で
煎じて下さったお茶をおいしく頂く
目の前には 無数の火鉢
障子を外し準備してくださった畳の会場
60の座布団が敷き詰めてあった
築123年だと云うとてもしっとりした旧家
熊野での朗読会に
これ以上贅沢な会場があるだろうか
時間前なのに人で溢れそう
スクリーンに映し出される熊野と詩の数々
会場に響き渡る朗読とフルートの音色
時折かすかに聴こえる咳さえ遠慮気味だ
静寂の中に浪々と朗読はつづき
モーツアルト、バッハの名曲が詩に溶け合う
なんて素敵な空間だろう 夢の祝祭だ
一言一言噛み締める様に詠む河津さんの声が
出会いから今日までの日々を
懐かしく思い出させる
駆け足で走ってきた日々
<無償化>の記事に一喜一憂し
励まし合い助け合った宝石のような時間
眼をそっと閉じれば
紀州の山々が、煌く海が見える
倉田さんが、熊野の人々の顔が見える
来てよかった しみじみ沁みる喜び
忘れかけていた何かが 今 蘇る
8.17時48分 熊野市発
朗読会の余韻がしっとりと胸に残る
阪本さんの鈴の音の様な素晴らしい朗読も
娘さんの切なくも暖かいエレクトーンの音も…
去りがたい熊野を後にする時刻が迫っている
何故こんなにも胸を熱くしたのだろう
たった二日間の旅が
紀州・熊野を懐くような小高い山々
海のきらめき、さざなみのやさしさ
オモニを思い出させた花ノ窟の椿
何よりも出会った人々の温かさ
倉田さん 中田さん 三谷さん そして
テキパキと動いて下さったスタッフの皆さん
全てに対する感謝の気持ちが
私を捉えて離さないのだろうか
駅まで送って下さった倉田さんが
孫達と一緒に食べてとお土産まで下さった
どうして ここまで気遣って下さるのだろう
お礼は返って 私達がしなければならないのに
心が通い合った 幸せ 噛み締めて
去り行く車に 何回も 手を振る
クラクションを鳴らし 答える 倉田さん
17時48分 熊野市発の列車に乗り込んだ
胸いっぱいの感動と 安らぎを積んで
終
2011年3月5,6日