ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

嵌められた日本 - 9 ( ゴルバチョフ氏の演説と キッシンジャー氏の「ビンの蓋論」)

2020-07-09 19:28:23 | 徒然の記

 敗戦後日本人の多くが捕らわれている思考は、「東京裁判史観」と呼ばれています。そうすると、馬野氏の頭を占拠しているのは、「米国悪人史観」とでも言えば良いのでしょうか。

 「日本の政治家、官僚というものの愚かさは、実に底が知れない。アメリカの言うことを聞かないと汚職を暴かれ、ロッキード事件の二の舞になるのではと恐れている政治家もいるだろうし、一般の国民は、しかるべき手の入った新聞、テレビ、雑誌に洗脳されて、親米、信米、国際化にうつつを抜かす。」

 「行き着く先がどんな奈落か、誰も気がついていない。」

 自分もかって高級官僚で、米国のため働いた氏が、そこまで言うのかと首を傾げますが言っていることは嘘でありません。

 「アメリカと手を組むことは、騙しに騙された挙げ句、確実に、地獄への一本道を歩むことなのだ。」

 具体例を、氏が53ページで語ります。

 「昭和62年12月8日、ワシントンで米ソINF全廃条約が、レーガン、ゴルバチョフ両首脳の間で、調印された。」

 「それまで核兵器をエスカレートさせ、睨み合ってきた両国が、急転直下、中短距離ミサイルの全廃に、一挙に合意したのだから世界は驚いた。」

 「日本の経済人が、ニューヨーク株式大暴落の意味を、十分理解していないと同様に、日本の政治家はINF条約の重大性を認識していないようだ。」「この調印の日は、奇しくも48年前の日米開戦の日にあたる。」

 「偶然の一致と言うには、あまりに出来過ぎている。後に述べる、ゴルバチョフの演説を考えあわせてみても、米ソが示し合わせた、日本に対する黙示ではないのか。」

 INF条約調印の日が、12月8日だったとは気づきませんでした。戦前の日本では「戦勝記念日」と呼ばれ、国民の祝日だったいわゆる真珠湾攻撃の日です。

 氏の意見は考え過ぎというより、妥当性がある気がします。アメリカの政治家は、時折こういう陰湿な数字合わせをします。東京裁判で、彼らが犯罪人と決めつけた、7人の「殉難者」を処刑した11月12日は、平成天皇の誕生日でした。偶然の一致でなく、当時の日本人への悪意に満ちた黙示でした。

 「条約調印の祝賀晩餐会の席上で、ゴルバチョフ書記長は、日本人の背筋を凍らせる発言をしている。」

 「米ソがお互いに核軍備に入れあげている間に、日本と西ドイツは、軍事費を使わず、アメリカを抜く経済、技術的発展を成し遂げた。われわれは軍備を縮小し、協力して経済を発展させなければならない。」

 ゴルバチョフ氏の演説を、日本のマスコミが正しく伝えたという記憶が、私にはありません。馬野氏の叙述は、心して読むべき内容でないかと思料いたします。

 「この演説は、米国の主要な政治家、高官の居並ぶ場所で行われている。」「つまり、米ソデタントから米ソ対日独・対立体制への、巧妙な誘いである。」「表面での違いに目を奪われて、米ソが本質的に同根の国家であることに無知であってはならない。」「いずれも、イルミナティの造作物なのだ。」

 イルミナティとは、聴き慣れない言葉です。ネットで調べますと、アダム・ヴァイスハウプトが、バイエルンに設立した団体の名前と書いてあります。

 今では、歴史上の様々な狂信的団体に、「イルミナティ」という名がつけられていると言います。陰謀説の好きな人間が色々な説を唱え、創設者はルシファーで、下部機構にフリーメイソン、イエズス会、ナチス、共産党があるなど、そんな意見もあるそうです。

 馬野氏がどの意味で使っているのか、どの程度信じているのか分かりませんが、「米国悪人史観」のための、一つの材料として使っているのは間違いなさそうです。

 「米ソが、本質的に同根の国家であることに無知であってはならない。」、という意味で使っているのなら、賛同できます。「米ソ」という言葉を、「世界を支配する超大国」と置き換えれば、氏の言葉が即座に理解できます。

 昭和46年、大統領補佐官だったヘンリー・キッシンジャー氏が、中国で周恩来首相と秘密会談を行いました。そこで氏が述べた言葉が、「ビンの蓋論」として、多くの人に知られています。キッシンジャー氏は、昔も今も日本嫌いの、アメリカ政府高官です。

 「もしわれわれが、日本から軍を撤退するとなると、原子力の平和利用によって、日本は十分なプルトニウムを保有している。米軍が撤退すると、それにとってかわるのは日本の核計画であり、われわれはそれに反対なのだ。」

 キッシンジャー氏と周恩来氏の会談で、こんなことが語られていた事実を、もっと日本国民に知らせたいものです。

 「日本が大規模な再軍備に乗り出すのであれば、中国とアメリカの伝統的な関係、つまり、第二次大戦時の同盟関係が復活するだろう。」

 「ようするにわれわれは、日本の軍備を日本の四島防衛に押しとどめることに、最善をつくす。もしそれに失敗すれば、他の国とともに日本の力の膨張を阻止する。」

 私は氏の将来予測を、正しいと思います。というより、その通りになっているとしか、言いようがありません。

 「来るべき世界の状況は、日本の孤児化であり、米ソ、そして中国に囲まれ、」これらにいたぶられるという構図が、浮かび上がってくる。」

 ハンチントン氏の言った、「孤立した文明国日本」が出てくるのは、偶然なのでしょうか。それとも学者なら、誰もが考えつく必然なのでしょうか。

 「日米安保条約は、表向き解消されないまでも空洞化は避けられない。アメリカには、日本を保護する必要がなくなるのだから・・。」「もとより、その途中の段階として、在日米軍の駐留費の肩代わりが進められることであろう。」

 トランプ大統領になり、米中対立が大きくなったと、喜んでいる政治家や評論家がいます。彼らは無知なのか、それとも国民を騙しているのか。いずれかだろうと思います。

 媚中政策を強行する二階幹事長と、農業法人化や移民政策を進める竹中平蔵氏は、米中対立のカラクリを知る政治家なのかもしれません。安倍総理もその仲間なのか、ミイラになったミイラ取りなのか、まだ不明ですが、氏の著作が、国民に警鐘を鳴らしていることだけは、理解しなければなりません。

 「来るべき世界の状況は日本の孤児化であり、米ソ、そして中国に囲まれ、これらにいたぶられるという構図が、浮かび上がってくる。」

 氏のように、激しい「米国悪人史観」は採りませんが、日本が孤児化しているという事実は認めます。親米も親中もほどほどにし、日本の領土と国民の安全を第一と考えるのが正しいのです。

 もしもトランプ氏の言葉を大事にしたいのなら、「アメリカ・ファースト」という言葉を、「日本ファースト」と置き換える知恵が要ります。

 国際社会で、各国は常に「自国ファースト」で戦ってきました。戦前の日本ではご先祖たちが、そうして頑張った事実を思い出さなければ日本が滅びます。

 スペースの都合でここでひと区切りとし、次回も「馬野説」を辿りたいと思います。

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嵌められた日本 - 8 ( 人間の理性を信頼する馬野氏 )

2020-07-08 23:12:37 | 徒然の記

 一つのテーマで、10回以上ブログを書いている人がいます。そんなブログに出会いますと、私は読みません。ブログを書くくらいなら、自費出版の本でも出せば良いのにと敬遠します。

 それなのに自分のブログでは、10回以上の連続したブログを、何度も書いています。他人を批判しても、自分には甘い・・このように身勝手な私ですと、今更言わなくても、訪問される方々はとっくにお見通しかもしれません。

 だから、私のブログを読んでくれる人がいると言うのが、正直な驚きです。と言うより、感謝すべきなのでしょうか。私のブログは「温故知新」なので、現在世間を賑わせている事柄には、あまり触れません。

 「トランプ大統領は、中国寄りのWTOから脱退すると、正式に通告しました。」

「バイデン氏は自分が大統領になったら、トランプ氏の決定を取り消し、 WTOに再度加盟すると・・。」

 今日のニュースは、大統領選挙を狙う二人の言葉を、伝えていました。本当にこれが、世界の大国と言われるアメリカの大統領候補の意見かと驚きます。

 「東京地検は本日、河井前法相を選挙違反容疑で起訴しました。100日裁判で、裁かれる模様。」

 先程のニュースでしたが、どれも世間を騒がせるホットな事件です。時々刻々の出来ごとについて、無関心なのではありません。こうしたテーマでブログを書けば、10回以上も続ける必要がなくなります。

 しかし現在進行中の出来事なら、息子たちは、私の長いブログよりテレビや新聞を読むでしょうし、その方が手軽です。今は多くの人が手軽さを求めますから、息子たちばかりを責められません。

 ホットな現在の出来事を横目に、「温故知新」の読書を続ける理由は二つです。

  1. 歴史は必ず、繰り返す。

   ( 人間のやることは本質的に、過去も現在も変わらない。)

  2. 昔の本を読めば、自ずと答え が見えてくる。

   ( 時の試練に耐えた答えの方が、貴重な教訓を含んでいる。)

 立派な人物の本には立派な教えがあり、愚かな人間の書には、反面教師の愚かさがあります。だから私はこれからも「温故知新」で行き、今は馬野周二氏の著書に向かっています。

 何のためにこんな言い訳をするのか、自分でもよく分かりませんが、ちょっと寄り道をいたしました。本題へ戻り、45ページで発見した、氏の歴史観を紹介します。正しいのか間違いなのかと、そんな次元を超える独特の見解です。

 「時代の駆動力は、交替する。私の歴史観によれば、現代の世界史を駆動する、決定的因子は科学技術であり、戦争という人間の巨大な営為も、その支配から脱れることはできない。」

 「原爆とロケットという、現代科学技術の最終的兵器が使われた、第二次世界大戦、もっと突き詰めて言えば日米戦争は、その交替の断絶的変化を象徴したものだった。ろ

 難しい言葉が並びますが、親切な氏は優しい言葉で言い換えてくれます。

 「断絶的変化とは、何か。工業大国間の戦争は、もうあり得ないということだ。」「戦争は、消滅した。

 ( もとより、中東戦争のような、小国の通常兵器による代理戦争はあるが )、核爆弾とミサイルを使う、本格戦争は絶滅している。この結論は、歴史工学からの結論である。」

 ここまで言い切れる氏に、敬服いたします。人間は、人類の絶滅となるような戦争はしないと、氏は断言します。人間の理性を信頼する者でなければ、こういう結論は出せません。

 私は人間をそこまで信じていませんから、核戦争の可能性がまだあると、考えています。北朝鮮の指導者や中国軍将軍の脅しを見ていますと、何かのはずみで、核のスイッチを押すのでないかと警戒が解けません。

 「では、国家間の闘争は無くなったのか。いな、それは明白に存在する。今日、一国内での、戦争はない。」

 「だが、企業間での経済的戦闘は、熾烈に行われている。それと同じく、国家間の軍事力による衝突はなくなるが、代わって、経済闘争が登場する。」

 氏は、核兵器の超絶的威力が戦争を不可能にしたと言います。科学技術が、戦争を否定したと断言します。小規模な通常兵器での小競り合いは無くならず、代わりに、経済戦争が登場するという氏の意見に、私は反対しません。

 日米、日中、米イ、米ロなど、多くは確かに経済戦争です。しかしそれでもなお、自国だけは生き残ると考え、核の使用を企む指導者がいるのが現実ではないでしょうか。

 もし氏の言が正しいのなら、軍の保有を否定し、核兵器もなく、米英仏ソ中の大国や、小国の北朝鮮からも威嚇される日本で、「敵基地攻撃」の議論が生じるでしょうか。沢山毒舌を並べても、人間の理性を信頼している氏は、善良な大正人間でないのかと、私は少し贔屓目に解釈します。

 今夜はここまでとし、続きは明日にいたします。息子たち以外は、気の向いた方だけ「ねこ庭」へ足をお運びください。

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嵌められた日本 - 7 ( 中曽根総理への酷評 )

2020-07-08 17:53:24 | 徒然の記

 今回は、レーガノミックスと中曽根総理への酷評を紹介します。

 「レーガノミックスの無理の堆積、石油危機以来の技術経済の構造変化への対応不十分、軍事覇権力へのアナクロニックな思い込み、といった過誤と錯誤の総決算の時期が、いよいよ来たことを告げたのが1987( 昭和62 )年のニューヨーク市場の暴落であった。」

 「もはや再び世界は、大統領の景気の良い口説につられて、紙切れに近い米国債を大量に買う気にもなるまいし、どこかで戦争が起こっても、アメリカ軍が来援してくれると、考える国もあるまい。」

 「もっとも日本だけには、まだアメリカ信仰が残っているが、これも遠からず消えていく。」

 氏はこう述べましたが、記憶が間違っていなければ、中曽根氏以後、竹下、宮沢、橋本、小泉、安倍と、今日に至るまで歴代の内閣が、紙切れ同然の米国債を買い続けてきたのではなかったでしょうか。途中から共産党の中国政府まで参加し、今では日本を超える米国債を所有しているはずです。

 しかしレーガノミックスに関する氏の意見には、無視できない事実が含まれていて、頭から否定するわけにいきません。財政・金融音痴ですから、専門家と自称する氏の意見を素直に聞きました。

 「世界中のすべての株式市場における、同時大暴落。80年代の初めまでならば、こんなことは起こらなかったのかもしれない。」

 「当時はなお、先進各国の経済はずっと独立して運営されており、株式市場間の連携は薄かった。ニューヨーク市場が下がっても、東京市場に影響はあるものの、それはあくまで、日本の市場関係者の自主的反応に俟っていたのである。」

 ここからが、痛烈な中曽根総理への批判となり、同時に、私の知らなかった事実が明らかにされます。

 「ところが中曽根政権下の、急激な自由化、国際化によって、東京市場はニューヨーク、ロンドン市場とで、世界の資金と時間帯を、三等分する形となった。」

 「米英系資金が大量に東京市場に入るようになり、特にアメリカの証券会社は東京に支社を開き、金融、株式売買に直接参加できるようになっている。」「かくて、アメリカの巨大投資家たちは、単にニューヨーク市場だけでなく、広大な先進国市場全体で、一挙に暴落を仕掛けることが可能になった。」

 「今にして考えればイギリスのBBC放送の記者が、中曽根首相を評して、トロイの木馬と言った意味がわかるように思われる。中曽根首相を操縦し、東京市場の自由化、国際化を急がせた理由が分かる。」

 「1987( 昭和62 )年、ニューヨーク市場の暴落の翌日東京市場は暴落した。これは主として、米国証券業者の売りによるものだった。」

 ロン・ヤス関係と煽て、親密な日米関係を築いたとマスコミは盛んに中曽根首相を持ち上げていましたが、なんと言うことはありません。氏は、日本市場を解放するための、トロイの木馬の役目をしていたのです。日本弱体化のためのアリの一穴を、日本経済の横腹に開けたのですから、米国政府に喜ばれるはずです。

 「ともかく中曽根親米政策のツケが、100億ドルを下らない損害として、日本に降りかかってくるのは、必定だ。馬鹿げた米国債の購入の損害は、まだ大蔵省、日銀、市中銀行、生保の帳簿に載っているだけだが、これはジリジリと、実績とて国民の肌身に染み込んでくる。」

 中曽根首相の下ことを、今頃になって知ると、日本のマスコミの捏造報道の酷さを教えられます。これも捏造報道だったのでしょうか。

 「中曽根は国鉄民営化を成し遂げるとともに、ロナルド・レーガン大統領とのロン・ヤス関係や、不沈空母発言で貿易摩擦等により悪化していた、日米関係を改善させ、強固なものとした。」

 「若手議員の頃は青年将校と呼ばれ、後に原子力関連法案の議員立法にも尽力。首相公選制を唱え、憲法改正を悲願とした。小派閥を率いる中で、政界の風見鶏と呼ばれることもあった。」

 中曽根氏を紹介する、別の情報です。批判と言うよりむしろ称賛で、昔から私の知る説明と同じです。保守政治家だと思っていましたが、氏は青年将校でなく、生涯「政界の風見鶏」だったようです。

 「北海道の土地問題」と「習近平国賓招致」で、国民を裏切った安倍総理に劣らない自民党の政治家です。

 日本のマスコミの報道が、いい加減なものである事実を、息子たちは肝に銘じて欲しいと思います。

 只今39ページです。つき合い切れないと思われる方は、スルーしてください。私は明日も、氏と向き合います。

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嵌められた日本 - 6 ( 憎めない過激な反米論者 )

2020-07-07 19:47:12 | 徒然の記

 次第に、馬野氏の立脚点が見えてきました。全体でなくまだ一部ですが、案外単純です。

  1. 諸悪の根源は、アメリカの支配層である。

  2. 中国も、ソ連も、EUも、彼らに騙されて動いている。

  3. アメリカの敵は常に、日本である。

  4. 日本とアメリカとの戦争は、不可避である。

 単なる反米でなく根っからの嫌米で、とんでもない性悪の国という、強い確信 ( 思い込み ) を、持っています。私と重なる意見が沢山ありますが、イコールではありません。

 「日米戦争は、ルーズベルトとその背後の、一握りの人たちの起こしたもので、当時の日本の単純な軍閥はその罠に引っかかったものであるが、ルーズベルト一味が、戦争を起こした目的の一つは、当時の、経済苦境からの脱出にあった。」

 「彼はニューディールといった、共産主義かがったことをやっていたが、共産主義で経済が立ち直り、繁栄するものではない。」

 氏は大東亜戦争と言わず、日米戦争と言います。「日本だけが、間違った戦争をした。」「日本だけが悪かった。」と、世間はいまだに思っていますが、平成元年の時点で、氏がハッキリと切り捨てていたとは、意外でした。ここまで遠慮なく言えば、マスコミの土俵に上がれず、テレビにも新聞にも登場するはずがありません。

 1930 (昭和5) 年の大不況以来、長期間続いたアメリカの好景気が、過去に3回あったと、氏が言います。

   1. 第二次世界大戦後の数年間

   2. ベトナム戦争時を含む数年間

   3. レーガノミックス時代の数年間

 氏が最も酷評するのが、レーガノミックスです。世界の基軸通貨であるドルの強みを利用し、大統領はドルを増刷し、ソ連との軍拡戦争に勝利しました。当時、レーガン政策への賞賛しか聞いたことがなかったので、氏の意見にまた混乱させられます。

 「レーガン周辺の謀師たちは、外国からの資金吸収を策した。」

「自由化、国際化が、その金看板である。世界経済、日本、ヨーロッパの経済を自由化国際化させて、米日欧の資金の移動、企業活動の自由化を進め、アメリカ国内の投資機会を開けておけば、日欧の資金はアメリカに入る。そこでレーガンのバラマキ政策は、続けられるという寸法である。」

 「これは実にうまく作用して、アメリカの好景気がおよそ6年間も続いた。その原資の4割は、日本が貢いだ。主役俳優レーガンの巧妙さと、金盗られ役日本の愚昧によって、今の所成功している。」

 もともと私は計算が苦手で、金融や財政には知識がありません。それでも、なんとなく、氏の言わんとするところは、理解します。日本は米国や世界にとって、金銭自動支払機に過ぎないと、そういう意見があることを知っていますし、政治家も大蔵省も評論家も、日本を正当化する意見ばかりでしたが、なんとなくおかしいと疑問を抱いていたからです。

 「レーガノミックスは、本質的に国際金融に依存している。国際金融市場に異変が起これば、一朝にして瓦解するであろう。現在のアメリカは、金盗り先にNIESも加えてはいるが、こんなことが、無限に続けられるはずがない。」

 計算は苦手でも、常識的な話は大抵理解できます。

 「このような泥棒家業を続けていると、体質が鈍って正業につけなくなります。アメリカの商工業は空洞化して、実体がなくなりつつある。軍事に入れあげて体力を消耗したアメリカは、確実に今世紀内に瓦解する。」

 ここまで話が進むと、さすがの私も眉に唾をつけます。希望的観測と言うべきなのか、今の日本では、「中国経済崩壊論」を述べる評論家が沢山います。嫌われ者の中国なので、私も含め多くの人間が喜んで読みますが、中国はしぶとく頑張っています。

 氏の気持ちは分かりますが、「中国経済崩壊論」と似たような意見だと思います。ひと頃の勢いは無くなったとしても、トランプ大統領の一言で、日本の政治家やマスコミが相変わらず右往左往しています。

 「アメリカを建国し誘導してきた中核主体は、正統の文明の、深い根を持っていない。アメリカにあるのは、18世紀後半からの産業革命以来の主知主義と、それが産んだ物質市場の拝金宗教である。」

 「若い時に知能指数の高い人は、老年には恍惚になりやすい。物質金銭に取り憑かれたアメリカは、寿命が短く、ボケが早く来る。あるフランス人は、もうアメリカは老人になった国だと言っているが、この人の目は鋭い。」

 いくら私でも、ここまでは酷評しません。間違いとは言いませんが、学者には学者の言葉遣いがあるはずでしょうに。過激な感情論は、私のような凡俗に任せておけば良いのです。

 私は今まで、日本をダメにした宰相はプラザ合意を飲まされた宮沢首相だと思っていましたが、氏は中曽根総理を、レーガン大統領とセットで酷評します。自分の知らない事実を教えてくれる限り、どんな人も私の師です。少々の酷評には目をつぶり、次回も息子と私自身のため、貴重な意見を紹介します。

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嵌められた日本 - 5 ( 騎士ドンキホーテ )

2020-07-06 17:34:57 | 徒然の記

 今からおよそ420年ばかり前、スペインの作家セルバンテスが、「ドン・キホーテ」という名作を書きました。本を読み過ぎて、空想と現実の区別がつかなくなった老人騎士の物語です。

 弱き者のためなら、どんな敵とも戦うという、年寄りの冷や水の見本みたいな人物の話です。私はこの主人公が、堪らなく好きでした。一見馬鹿なことを言っている様ですが、英知と勇気と信義が語られています。馬野氏の姿が、ドン・キホーテと重なり、なぜかその意見が真剣に聞きたくなります。

 「さて日本のマスコミ社会では、その時代、時代に、一つの土俵が、設定される。」

 「その土俵の持ち主は、その時の権力者、すなわち時によっては政府であり、ある時は時代の風潮であり、さらに特定の思想であることもある。」

 今の日本で言えば、「反日・左翼思想」と、「東京裁判史観」が権力者です。この権力者は、中国共産党と、金融資本家の支配するアメリカにつながっています。息子たちのために、分かりやすく言えば、反日・左翼の権力者を代表するのが、二階俊博氏で、もう一方の金融資本アメリカの手先が、竹中平蔵氏ではないでしょうか。

 日本の土俵を支配しているのは、特定の思想であり、特定の外国であり、特定の外国と結びついた政治家・・ということになります。

 「その土俵の上で相撲をとらせてもらえる人たちが、その時々に脚光を浴びる、一流人士で、国民大衆はエライ人たちが書き、喋ることを真に受けて懸命に駆け回る。」

 「だが一流人士が皆本物かというと、実はそうでない場合が多い。この土俵は、持ち主が自分の利益のために運営し、あるいはひと時の世俗が営業しているのだから、その上に上る者たちは、どうしても、ひと時の人気者ということになる。」

 「本物は時節の曲折に動ぜず、長い生命を保つ。一時、土俵に上がり脚光を浴びるが、後は行方不明というのでは、それは本物ではない。」

 「従って、本物は、世俗の土俵に上がれない運命を持つ。しかも本物である限り、さようの土俵を忌避し唯我独尊の道を歩むはずであるし、その者が剛強の精神を持っていれば、この有害なる土俵を、破ろうと努めるであろう。」

 「これから読者が読み進まれる本書は、私なりのこの土俵破りの作業なのである。」

 なんだ、そんなことが言いたかったのかと、呆気にとられました。堂々たる自信に、敬服するしかありません。31年前の77才は、今の私の77才と違い、世俗を超越した境地にいたのかもしれません。しかし私には、憎めない老人の警句として心に届きます。

 氏の説明によりますとこれまでは前文に過ぎず、本論はこれからです。面白い本に出会いましたので、時の経つのを忘れます。本日はここで一区切りとし、次回を楽しみたいと思います。

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嵌められた日本 - 4 ( 仏徒、信徒、洋徒 )

2020-07-06 12:54:51 | 徒然の記

 あまり意識していませんが、私は日本の歴史について楽観論者です。

 古代から現在に至るまで、時代と共に人知が開け、暮らしが便利になり、快適になり、国民が幸せになっていると、そういう漠然とした認識を持っています。大化改新も明治維新も、素晴らしい歴史の転換点であり、ご先祖への感謝しかありません。

 ところが氏はこれについても異論を述べ、私の思考を停止させます。

 「太古以来、日本の思想、政治の様相を見ると、時の政権者はそれまで国内に無かった新規な外来思想を取り入れ、それを手段として、政権を私してきた。」

 「漢字、儒教、仏教、西洋思想、工業技術が、日本の政治と社会にどんな作用を及ぼしたかを深考すれば、思い半ばに過ぎるものがあろう。」「神道さえも、外来であるかもしれない。」

 ひっかかるのは、次の叙述です。私の楽観論からは出てこない思考です。

 「だが、それら外来のものが消化された後には、草莽(そうもう)から起こった土着的政治主体が崛起(くっき)し、民族本来の精神の支配を回復するに至る。」

 草莽崛起とは聞き慣れない言葉ですが、幕末に吉田松陰が維新への決起を促した時、使ったと言われています。草莽は、一般庶民、在野の民衆を意味し、崛起は、立ち上がるという意味です。

 「志を持った在野の人々こそが日本変革の原動力になる」、意味だそうです。

 「奈良、平安朝は、外来仏教思想に浸潤された時代であった。それが、東北から自発した、非仏教の武士たちによって覆され、幕末までの武家政権時代が続いた。」

 「維新後の日本の政府と社会は、よく目を凝らしてみると、西洋政権であることがわかる。」「軍服を着た天皇というのが、紛れもないその証拠だ。これは中世に、僧形をした天皇、上皇、法皇が現れたのと同じことである。」

 学校ではこの様なことを教えませんから、驚きながらも新鮮な意見です。

 「維新政府に反対した神風連から西郷隆盛、そして2・26事件の青年将校たちは、草莽の臣であり、西洋政府に対するリアクションであった。」

 神風連の武士や西郷のもとに集まった武士たちは、時代の流れに取り残された人間だった、情にもろい西郷は、彼らを見捨てることができず、死を覚悟で政府に反旗を翻したと、私が教わった歴史はそうでした。

 また2・26事件の青年将校たちは、軍の上層部に踊らされた無謀な者たちだったと説明を受けました。その彼らを草莽崛起と言うのですから、すぐには信じられません。

  「日本の歴史の大きな波動は、仏徒と神徒の角逐であったと見ることができよう。維新の廃仏毀釈で、最期的に仏教は政権から排除された。」

 神仏習合、廃仏毀釈など、言葉は習ってきましたが、日本の歴史が、神徒と仏徒の角逐であったとは、考えたことがありません。しかし、思い当たることはあります。島崎藤村の『夜明け前』を読んだ時、仏徒との戦いに勝利した神徒が、明治政府で大きな力を持つ様になります。だがそれは束の間のことで、今度は西洋の思考が重用され、神徒は政府からことごとく追放され、政府の裏切りに切歯扼腕したと、その様なくだりがありました。

 聞き流していた「神仏習合」について、改めて調べてみました。

 「神仏習合とは、日本土着の神道と仏教信仰が融合し、一つの信仰体系として再構成(習合)された、宗教現象で神仏混交ともいう。」「当初は仏教が主、神道が従であり、平安時代では神前での読経や、神に菩薩号をつける行為なども多くなった。」

 「仏、菩薩が仮に神の姿になったとし、阿弥陀如来を八幡神、大日如来を伊勢大神であるとする本地垂迹説が台頭し、鎌倉時代にはその理論化として、両部神道が発生した。」

 「明治維新に伴う神仏判然令以前の日本は、1000年以上、神仏習合の時代が続いた。」(  注: 垂迹とは、仏・菩薩(ぼさつ)が民衆を救うため、仮の姿をとって現れること)

 学校時代の生徒に、歴史の事実が正しく教えられないのは、敗戦後の東京裁判だけでなかったと、この年になり実感しました。明治政府は、神道の国教化政策を進め、明治元年から神道にある仏教的要素を排除し、これが神仏判然令だと言います。

 こういう説明を読みますと、氏の主張通り「日本の歴史の大きな波動は、仏徒と神徒の角逐であった」とも、言えます。さらに氏は、私を安心させない意見を述べます。

 「しかしその代わり、明治の元勲たちが引き入れたのは洋徒である。日本の将来は、この洋徒をいかに始末するかにかかっている。」

 仏徒、神徒、洋徒と、日本の歴史をはかる新しい物差しが、氏によって示されました。島崎藤村の『夜明け前』の一節が、解明された瞬間でもあります。現在の日本を考える上で、反日・左翼と保守だけでなく、仏徒、神徒、洋徒が追加されることになります。重なり合っている部分もありますが、いずれにしても、私の知らない要素が加わることになります。

 350ページの本の、まだ15ページです。ここで私は、目を閉じて、考えます。

 「氏は一体、どういう人物なのか。」

 「武漢コロナ」の収束も見通せず、今も「外出自粛」を続けていますから、時間はいくらでもあります。子供たちのため、孫のためと言う以前に、まずは自分自身のため、「温故知新」の読書をします。

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嵌められた日本 - 3 ( 大正時代とよく似た現在 )

2020-07-05 17:50:56 | 徒然の記

 氏は大正時代を評して、現在と風潮がよく似ていると言います。

 「70年前の世相は、今日とはなはだよく似ている。」

 「世は自由化、国際化、政党政治の華やかな時代で、役人の権威は低く、軍人は、軍服を着て街路を歩くのを、嫌がった。」

 「今日と同じく、賄賂が横行し国家道義と社会道徳は落ち、エロ・グロ・ナンセンスという言葉が、流行していた。」「大正デモクラシーの、時代である。」

 自由精神の横溢した時だったと聞いていますが、そんなひどい時代とは、思っていませんでした。軍人の権威が落ちていたのは、事実らしく、電車の中でも彼らは小さくなっていたと、別の本で読んだことがあります。

 「社会主義、共産主義もまた、世に蔓延した。」

 「今日の社会党、共産党の濫觴(起源)は、この時代に遡る。大衆相手の軽薄ジャーナリズム、物書き先生方の登場も、この時代からのことであったようだ。」「明治時代には、福沢諭吉、徳富蘇峰、福地桜痴などの巨大物書きたちが輩出したが、今日の大衆評論家の源流は、この大正ナンセンス時代に発するであろう。」

 歯に衣着せぬ酷評ですが、歴史は繰り返すと言いますから、まんざら嘘でもない気がします。馬野氏の見た大正時代を、しばらく語ってもらいます。

 「彼らの生き様は、その時々の外国渡来の新規思想を日本に導入し、その祖師となり、名声と地位、社会への影響力を仰望するというものであった。」

 なるほど今と同じと、うなづかされる意見です。マスコミにもてはやされる評論家を見ていますと、覚えたての外国語を並べ、聞く者を惑わせ、その軽薄さがそっくりです。

 「ところがアメリカの、対日敵対の態度があらわになり、大不況が深まるにつれて自由化、国際化、デモクラシーの風潮は急速に褪せ、代わって民族主義、国家主義が登場し、軍閥の時代へと移っていく。」

 令和の現在は、日本に敵対しているのが米国だけでなく、中国もいます。大正時代と違うのは、日本人の中に、熱烈なアメリカ信奉者と中国信奉者がいて、双方が政権内で覇を競っているところでしょうか。私のような庶民は、マスコミの報道に踊らされ、中国を嫌悪したり米国へ腹を立てたり、その時その時を流されています。しかし大事な話は、次からです。

 「前代にときめいた左翼理論家たちは、たちまち転落し、その主要な者は獄舎に入りあるいは転向した。代わって、軍閥政府御用の物書きたちが活躍する。」

 朝日新聞が、死に物狂いで民族主義の風潮に反対し、過去の日本を取り戻そうとする国民を攻撃する理由が、分かりました。日頃は黙っていても、一旦報道が間違っていたと分かると、国民の意見がまとまります。憲法が改正され、軍が再建されますと反日・左翼の朝日新聞は真っ先に処分されます。

 「軍靴の匂いがする。」「不気味な、戦前回帰の風潮が漂う。」と、スネに傷持つ彼らは、現在の思潮に危機感を覚え連日騒いでいるのです。「美しい日本」を取り戻されたら、彼らを待つのは、獄舎か転向しかありませんので、「安倍を潰すのが社是」と、言うはずです。

 まだ10 ページですが、この辺りは、興味深い意見が続きます。自分には無論のこと、息子たちにも、伝えたい先人の言葉です。そのままでないとしても、確かに、氏の指摘どおり歴史が繰り返しています。

 「前代の左翼理論家は、ユダヤ系思想家の作り出したマルキシズムに熱中し、これを祖述したが、今度の右翼評論家たちには依るべき思想体系がなく、哲学論理も見当たらず、ただ日本古来の伝統に、頼るほかなかった。」

 「それだけに高度な知性の目から見れば、なってないでないか、ということになるが、日本人の、生まれつきの感性には、訴えるところが大きかった。」

 「前代の左翼理論家に比べれば、遥かに強い本源的影響力を持っていたのである。」

 その通りで、私があの風采の上がらない、訥弁の学者・田中英道氏に惹かされる理由がここにあります。大切なものは、複雑な理論や詳細な分析でなく、自分の住んでいる国を愛することなのです。

 1. ご先祖様を大切にし、敬う。

 2. 太陽を中心とする、自然のすべてを神々として敬う。

 3.    自然の一部としての人間を知り、すべてを肯定して生きる。

 その時々に言葉は違いますが、要するにこれが、田中英道氏に教えられた日本の心です。馬野氏の著書が、これからどの様に展開するのか分かりませんが、何となく親しみを感じる意見です。明日も、この続きを紹介します。

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嵌められた日本 - 2 ( 民主主義を演出する自民党 ? )

2020-07-04 15:02:02 | 徒然の記

 北海道の土地問題を知り、観光立国政策で権力をほしいままにしている二階氏を知るにつけ、自民党政権に対する不信感が芽生えました。これまで私は、日本の問題は反日・左翼にあると信じ、強くこれを批判してきました。

 馬野氏は、そんな私にブレーキをかけます。氏の説明によりますと、政権の座にある自民党こそが、問題になります。私が、全く知らなかった視点からの主張です。

 「戦前戦中の政府検閲官たちは、雑誌書籍のゲラを出させ文中削除を要する語には、〇〇、XXを入れさせた。」「誠に純真率直で、今日から見れば、微笑ましい、大時代であった。」

 「この純心を破ったのは、進駐軍であって、彼らは占領中全国の刊行物に検閲の網をかぶせたが、〇X印といった、素朴な方法は取らない。」「要は内面指導であり、占領政策に背いた者は、事後の厳罰により再発を防ぎ、少数部数の出版物については、社会への安全弁として、干渉しなかった。」

 「これは当時の日本人の、考え及ばない巧妙な方法で、検閲に統計思想を取り入れ、体制に影響を及ぼさない少数者には、名目的自由を与えて民主主義の看板を、外さなかったのである。」

 かってのソ連、今は中国や北朝鮮がやっているような、批判勢力への徹底弾圧でなく、とるに足りない反対は無視し、見せかけの民主主義を演出するという政策です。平成10年の本ですが、氏は、この手法を自民党政府がやっていると主張します。

 「この賢い、あるいは狡い方法は、戦後日本の自民党政府の密かに採用するところとなり、より洗練され愛用されるようになった。現に行われている言論の誘導方法は、多岐にわたる。」

 「その一面をここで説明すると、既に世に売り出している、あるいは売り出し得る、能を持つ物書きを、リクルートする。」

 「その状況は人により様々で、政府の委員会の役職、自民党の息のかかった団体、会合に参加させる。」「あるいは講演会などに出講させるなど各様の手を使い、大なり小なり、政府、自民党に有利な世論づくりに協力させる。」

 「その反対給付は、世間での盛名に従って、高収入である。」

 知らなかった手法でありませんが、それを大々的にやっているのが、反日・左翼のマスコミだと思い、彼らばかりを批判していました。氏の意見に引かされる理由が、もう一つあります。氏が若い学者なら、世の受けを狙い奇抜な主張をしますので、簡単に同意しませんが、この書を出した平成元年に、氏は77才で、今の私と同じ年です。

 77才でも枯れず、欲まみれの人間がいますから、一概に言えませんが、私は氏の言葉をそのまま受けとまめした。

 「彼らには大幅な自由が与えられており、政府べったり、あるいは政策宣伝臭は、嗅ぎとられないように配慮されている。」

 「よほど嗅覚の鋭い人でないと、彼らの正体を見破ることはできない。当の評論家自体が、自分が政府、自民党、あるいはその政策に利用されているとは、気がついていない場合も多いだろう。」

 こうなりますと、反日・左翼勢力にやられっぱなしの自民党でなく、彼らを上回る政党ということになります。私のこれまでの主張が、ある意味、根底から崩れかねませんが、うなづける点もあります。もし政府の方が、反日・左翼勢力を上回っているのなら、マスコミの報道姿勢奇妙さが、正しく理解できます。

 尖閣諸島への中国の領海侵犯について、なぜ報道しないのか。「武漢コロナ」の騒ぎの最中、なぜ中国からの入国禁止について一言も報道しなかったのか。あるいは、北海道における中国資本の土地買い占めを、なぜ国民に知らさないのか。韓国による、不法な竹島占拠や対馬の土地買い占めを、なぜニュースにしないのか。非道な北朝鮮の拉致について、なぜ真剣に取り上げないのか・・・・。

 解けなかった長年の疑問が、氷解します。

「マスコミは、中国や韓国・北朝鮮に忖度しているのではなく、自民党政府の圧力に屈している。」

 ・・と、思ってもいなかった結論が出てきます。GHQによる狡猾な世論操作を、自民党が取り入れているとしたら、反日・野党を野放しにしている理由もうなづけます。

 「検閲に統計思想を取り入れ、体制に影響を及ぼさない少数者には名目的自由を与えて、民主主義の看板を外さなかったのである。」

 国民が与えている政党の支持率を、確認すると、氏の意見が理解できます。令和2年3月現在の数字です。

  自民党 24.0 %   立憲民主党 3.5 %   立憲民主党 0.4 % 

         共産党   1.6 %          社民党   0.5 %                  公明党   3.5 %

   日本維新の会    1.3 %        支持政党なし   62.4%

  自民党は腐っても鯛で、常に反日・野党を超える支持率です。マスコミの評判次第で、党の支持者が増減しますが、反日・左翼の弱小野党には、ほとんど流れません。増えるとしたら、無党派層の国民です。

 つまりマスコミが、いくら弱小野党を持ち上げる記事を書いても、「体制に影響を及ぼさない、少数者」なので、「名目的自由を与えている」に過ぎないと、こういう見方ができないではありません。

 しかも反日・左翼の弱小野党は、マスコミ同様、北海道の土地問題、尖閣への中国による領海侵犯、韓国の竹島占拠、亡国の移民法など、自民党の泣き所である問題については追及しません。というより、彼らには、それをする力さえないのだということが、見えてきます。

 戦後長らく、私たち国民を欺いていたのは、自民党と、その政府ではなかったのか   ? ・・・最近の私を捉えている疑問に、氏の著書が、一筋の光を与えている気がしてきます。

 早急な結論は禁物ですが、心して読みたい一冊です。

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嵌められた日本 ( 期待させる本 ? )

2020-07-03 17:29:52 | 徒然の記

 馬野周二氏著『嵌められた日本』( 平成元年刊 プレジデント社 )を、読んでいます。現在まだ20ページです。書名が週刊誌的軽薄さなので、本棚に長く放置していました。

 氏は大正10 年生まれですから、存命なら99才です。反日・左翼も、戦前の日本も、手厳しく批判します。思想的立場が不明ですが、夢中にさせるものがあります。

 自信たっぷりな語り口が、田中英道氏を彷彿とさせ、なぜか魅かされます。読み始めたばかりで賞めると、後で後悔した経験が何度もあり、要注意ですが、久しぶりに読み応えのある本に出会った気持ちです。

 どういう人物なのか、氏の経歴を紹介します。

 「馬野周二 ( うまの しゅうじ ) は、日本の技術者、工学博士、著作家」「専門分野( 化学  )の論文、報告書の他、」「国際政治や、国際経済についての著書を、多数執筆した。」「父親は、内務省官僚であり、朝鮮総督府の高官であった。」

 「山口県に、生まれる。」「昭和6年、小学校四年生時に、父親の退官に伴い、」「朝鮮半島より、愛媛県松山に戻る。」「旧制松山中学校(現・愛媛県立松山東高等学校)を経て、」「昭和21年、慶應大学工学部応用化学科卒業。」「昭和24年、通商産業省に技官として入省。」

 「昭和36年、通商産業省(課長)を退任後、ニューヨーク工科大学教授に就任。」「アメリカ政府の、技術開発に携わる。」

 内務省官僚、朝鮮総督府と、昔の日本の匂いがする言葉です。氏の叙述の一徹さには、どんな日本を語ってくれるのか、正座して読みたい気配があります。

 「本書では、科学研究者としての手法で経済、社会、歴史を分析した場合に、ことの本質がどう見えるか、あるいは如何に見えるかを述べているのである。」
 
 「そういう立場から、世の中を眺めると、これは何とも浮薄な「誤った、さらに意識的に、世を誤らせる言説が、氾濫していることか。」
 
 「世の常識からすれば、本書は、あるいは異常視されるところがあるかも知れないが、しかしそれは日本の現状の方が、異常なのではなかろうか。」
 
 「とまれ読者が、他の本にない感興を本書に持たれ、さらに自身で、世の常識を再考するようになるなれば、本書を世に出す意義があろうかというものだ。」

 「はじめに」の言葉です。私はこの本を、後世の子孫に残した氏の「遺訓」と受け止めました。氏のことを知っている人から見れば、私の言葉がどのように感じられるのか。妥当なのか、見当違いなのか。

 最後まで、失望せずに読めたらと期待しています。

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『沈む国 昇る国』 - 4 ( 田中正明氏の著作 )

2020-07-01 21:23:54 | 徒然の記

 「南京事件」について、一番詳しく書かれている本は、平成19年に出版された、田中正明氏の『南京事件の総括』です。

 中川氏の本が出された9年後ですから、この本を知らなくて当然ですが、たとえ知っていたとしても、氏は自分の主張を変えないと思えます。

 教科書問題が事実無根の誤報と判明していても、氏は南京記念館の設立理由として使っています。良心的な人物なら、内容を修正するか絶版にするかして、読者に正しい事実を伝えようとします。

 現時点で明確になっているのは、「南京事件」と「東京裁判」がワンセットのもので、切り離しては考えられないという事実です。

 敗戦国となった日本の戦争責任を追求し、政府の責任者を処刑するという結論が最初にあり、見せしめとして行われたのが東京裁判でした。

 南京事件が初めて世に出たのは東京裁判で、日本人には寝耳の水の話だったと言います。田中正明氏は著書の中で、南京事件を否定する根拠として、二つ上げています。

   1. 鎌倉市より狭い南京城内に、日本の記者とカメラマンが約120人占領と同時に入場している。

   2. 当時、中国のニュースを独占していた、ロイター、AP、UP、アブスなどといった大通信社の記者も、南京や上海に常駐していた。

 虐殺があったとされる期間に、各社が書いたのは、日中兵士の戦闘や、衝突事件など、ほとんどが小さな一段ものの雑記事でした。

 虐殺事件に関するニュースが無かった事実を根拠に、氏は南京事件の捏造を訴えています。

 「アウシュビッツに匹敵するような中国人の大量虐殺事件を、彼ら記者が見過ごしていたということはとうてい考えられない。」

 氏は冤罪で処刑され、弁明の機会も与えられなかった松井石根大将の秘書として、氏は身辺のお世話をしていました。

 南京陥落後に大将とともに入城し、敗戦後には共に引揚げ、東京裁判中もそばを離れなかった人物です。

 南京事件が持ち出され、大将が裁かれる法廷を見ながら、必ず無実を世間に訴えると心に誓い、著作の準備をしたと言います。同じ二つの理由をあげても、中川氏のようにいい加減なものではありません。

 外国の新聞記者が、虐殺記事を書かなかったと同じように、日本の記者たちも、報道していませんでした。

  ・朝日、毎日、読売、日経など全国紙の支局や、地方紙や通信社も、南京に特派員を派遣している。」

  ・南京に入城したのは、約120名の新聞記者やカメラマンだけではない。

  ・大宅壮一、木村毅、杉山平助、野依秀一、西条八十、草野心平、林芙美子、石川達三といった、高名な評論家や詩人、作家も陥落とほとんど同時に入城している。

  ・これらの人々は帰国するや、いろいろな雑誌や新聞にレポートを書き、講演もしている。

  ・終戦になり東京裁判が始まり、軍の作戦や、旧軍人に対する批判が高まった時でも、これらの作家や評論家や詩人の誰一人として、南京事件を告発したり口にする者はいなかった。

  ・批判力旺盛な、口八丁、手八丁といわれた大宅壮一氏でさえ、南京虐殺には終始否定的であった。

 名前を出された大宅氏は気の毒な気もしますが、これが事実ではなかったかと思います。作家や評論家たちがGHQに異論を唱えられるはずがなく、口をつぐむのがせめての抵抗ではなかったのでしょうか。

 紹介したのは、氏の著作の一部分だけですが、中川氏の嘘を証明するには、これで十分でないかと考えます。

 中川氏の著書は、現在208ページ、「インド」に関する叙述です。ホテルのボーイにチップを騙し取られ、タクシーの運転手に料金を法外にふっかけられ、両替商からはごまかされと、こんな話ばかりです。

 どうやら氏は中国と韓国以外は好感が持てないらしく、欠点や短所を並べています。

 残るのは「イギリス」ですが、書評は本日で終わります。息子たちには何の役にも立たちませんし、「ねこ庭」を訪問される方々をこれ以上不愉快にさせたくありません。

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