・はじめ私は最後の一章を、諸家の反論に対する反論に当てようとしていたが、それはやめる。
氏の著書を読んだ学者や評論家が、沢山反論を寄せて来たらしく、林氏が本音を述べている。どれもこれも「赤旗」の社員みたいな公式論で、聞き飽きた言葉が並んでいるから、本気で相手にするのを止めたとこういう説明だ。珍しく辛辣な文章なので、紹介してみたい。
・反論してきた諸氏は、たいてい大学教授、または助教授の肩書きをお持ちだが、みんな教授らしからぬお脳の弱さを露呈しているばかりで、よくもこれで大学教授になれたものとあきれ返った。
単行本になる前は中央公論に連載していたというので、昭和38年、今から53年前の話だが、左系の大学教授のお粗末さはその頃から変わっていないという話になる。
中央大学の山口某教授や、関東学院大学の林某教授などなど、反日マスコミの支援を得て、彼らの偏向ぶりはますますひどくなっている気がする。
現在と変わらない敗戦後の「反日・亡国」ぶりを知るためにも、文氏の言葉を紹介するのは意味があると思う。
・一例をあげると最近『思想の科学』という、進歩的雑誌の編集をしていた山田宗睦という若い哲学者が、『危険な思想家』(戦後民主主義を否定する人々)、という本を出した。
・武者小路実篤、安倍能成、大熊信行、竹山道雄、福田恆存、林健太郎、高坂正堯、三島由紀夫、石原慎太郎、江藤淳、等の思想家と作家たちを、私を含めて 「恐るべき危険な指導者たち」 として告発した。
・一読したが、いかにもジャーナリストらしい文章で、中傷記事を並べただけのつまらない本であった。ただ驚いたのは、この本の推薦者たちだ。
氏は推薦者たちを、皮肉な注釈を加えて列挙している。
1. 外科医的賛辞を書いている久野収氏は、学習院大学講師
・・「ここには彼の血がほとばしっている」
2. 人工衛星的褒め方をしている日高六郎氏は、東京大学教授
・・ 「この本は成功した第1号だ」
3. 応援団長を買って出ている家永三郎氏が、東京教育大学教授
・・「熱情を傾けたこの告発に声援をおくる」
4. 興奮している長洲一二氏が、横浜国立大学教授
・・「私も微力ながら、彼の戦列に馳せ参じたい」・・
5. 警告している鶴見俊輔氏が、同志社大学教授
・・「この本は今の時代に肉薄し、重大な警告を発している。」
・教授、教授、教授 ! 、 彼らはいったいこの20年間、書斎と研究所で何を勉強し、教室で学生たちに何を教えてきたのであろうか。
・私はがんらい、教授というものを尊敬している。日本でも西洋でも、並大抵の勉強では、教授になれないことを知っているからだ。
・だがここに『戦後民主主義を死守する』と気負いたっている、久野、日高、家永、長洲、鶴見の諸教授は、いったい何の教授なのか。
・私は今まで、彼らをただのジャーナリストだと思っていた。
・彼らが時々、新聞雑誌に細切れの論文を発表することや、彼らの何人かが共同研究の名において、本を出版していたことは知っていた。
・これらの本は読んでみたが、共産主義者からの「転向者」について、何の解明も与えていない非科学的な研究に過ぎなかった。
林氏のような人物でも、怒りが爆発すると結構過激な言葉を使うと知った。よほど腹に据えかねたと思う。
・頭の悪い連中だと思っていたら、それがいつの間にか、大学教授に「転向」していた。日本の大学は、よほど人手不足らしい。ジャーナリストまで教授にする。
・これが、戦後派教授というものであろう。敗戦と占領が学問的実力とは別の道によって、彼らに、教授への門を開いてくれたことだけは事実らしい。
・そんな無学教授とデタラメ教科書によって教育された、戦後の学生こそ災難である。
氏の言葉を読みながら、日本が53年前から少しも進歩していないことを知った。進歩どころか、退歩している。氏の説明は、平成の今でも古びることなく私たちの心を重くする。
・軍事占領下に民主主義があるはずがなく、国の平和も独立も自由も、外国の命令によって実現されるものではない。
・日本の歴史は、敗戦後の20年間のみではないのだ。さらに百年、千年とさかのぼり、『民主化』も『近代化』も、その萌芽は、徳川、明治の時代にある。
・ 敗戦後には、『自由』も『民主主義』もなかった。
・そこにあったものは『東京裁判』であり、日本弱体化政策であり、民主主義と称する強引なアメリカ化に過ぎなかった。
重ねた温故知新の読書は、氏の意見と同じ認識を私に与えた。私が今頃気づいたことを、氏は53年前から語っていた。
・これら諸教授は、『戦後民主主義の幻想』を信仰する残党にすぎない。戦争を否定した戦後に一切を賭ける、と久野講師は言うが、いったい本気なのか。
・マッカーサー憲法の前文と、九条を守ることによって、果たして戦争が、避けられると思っているのか。
氏が主張する欠陥憲法について、美智子様が「平和憲法」と呼ばれ、陛下や皇太子殿下のお言葉として語らせられている。もしかすると平成の現在の方が、昭和の時代より酷いことになっているのではなかろうか。
・信教は自由である。お信じなさい。以後、私は彼らを、敬虔無二、信仰厚き『安全な思想家』と呼ぶことにしよう。
・まことの思想とは、危険なものだ。せいぜい『思想を科学して』骨抜きにすることによって、大学教授の『平和で安全な椅子』をお守りなさるが良い。
怒りを露わにして氏はこの章を終わるが、私は終わらせない。ここに並べられた大学教授たちは、当時はまだ小物に過ぎない。彼らを育てた大物たちの名前を、温故知新の書から抜き出して追加する。
本の名前は忘れたが、玉川大学教授・若槻泰雄氏の著作から紹介する。「日本国憲法賛美者」「戦争中は戦争賛美者」と注釈されている。
朝日新聞と同様に彼らは、戦前は国民の先頭に立って進軍ラッパを吹き鳴らし、マッカーサーの統治下になった途端変節し、「平和主義者」「人道主義者」に変身した教授たちだ。
清水幾太郎 今中次麿 堀真琴 平野義太郎 柳田謙十郎 中村 哲
鈴木安蔵 末川 博 安井 郁 中野好夫 中島健蔵 阿部知二
当時の彼らの社会的地位の高さと、影響力の大きさを考えれば、彼らは、林氏が列挙した「程度の低い戦後派教授」でなく、本物の戦前派著名人だ。
私は現在、これらの人物をひっくるめて「獅子身中の虫」「駆除すべき害虫」と呼んでいる。この害虫たちが、敗戦後の日本で歴史を貶め、日本人の魂を骨抜きにした元凶である。
彼らの奮闘の結果が、平成の日本だ。「平和憲法護持」「九条を守る会」につながり、日本中にお花畑を作り、危機感のない日本人を作ってきた。それがとうとう皇室にまで及び、 美智子様の「九条の会」支援となってしまった。
林氏の著書はあと少し残るが、おおよその内容は紹介したと思う。
どうか息子や孫たちは、列挙した「獅子身中の虫たち」に騙されないでもらいたい。自分の国を裏切る卑しい人間には、なって欲しくない。そんな人間はどんなに有名で立派な勲章をもらおうとも、見習ってはならない。
最後に、林房雄氏と本を遺してくれた叔父に感謝を捧げ、ブログにつき合って下さった辛抱強い方々にも、深く感謝いたします。