ケネディー暗殺の背景を理解するには、キューバ革命に関する知識が必要です。
「キューバ革命は、フィデル・カストロとチェ・ゲバラらが中心となり、アメリカ合衆国の影響が強かった、バティスタ政権を打倒した武装解放闘争のことを指す。」
「米国からの支援、庇護をうけた軍事政権への反発は、既に1950 ( 昭和25 ) 年代前半よりみられており、1953年にもカストロらは蜂起していたが、この頃は革命勢力の結束が弱く失敗に終わった。」
「1958 ( 昭和33 ) 年になると、反政府各派の共同戦線が結束され、1959年1月1日にハバナ占領を果たし、革命政権が成立した。」「キューバ革命は、当初より社会主義革命を志向したわけではなく、政権獲得直後には、アメリカ合衆国との関係継続を目論んだ交渉も模索していた。」
「しかしアイゼンハワー大統領と、その後を継いだケネディ大統領は、カストロらの新政府を容共であるとみなし、政権を打倒すべくピッグス湾事件を起こした。」「これにより、アメリカとの関係回復が不可能であると判断し、カストロはソ連への接近を鮮明にし、1961 ( 昭和36 ) 年に、社会主義宣言をし、キューバ革命を社会主義革命として位置づけた。」
ピッグス湾事件というのは、アイゼンハワーの時代から、CIAが主導していたカストロ政権打倒計画です。米国は表に出ず、キューバから脱出してきた市民による、反共・反革命を支援するという形で行われていました。
就任間もないケネディーは、計画の詳細を知らず、最初はCIAに言われるまま容認しますが、途中から明確に反対します。このため計画が尻すぼみとなり、上陸していたキューバ人たちが捕虜となります。米国人なら、誰でも知っている事件なのでしょうが、私は初めて聞く詳細なので、もう少し自分なりに調べてみました。
「ケネディは記者会見を行い、失敗の全ての責任が、実行を命じた自分にあることを認めた。」「しかし同時にCIAに対しては、軍事行動失敗の責任を追及し、ダレスCIA長官と、チャールズ・カベル副長官を更迭した。」
「後任にはジョン・マコーンを就任させ、長い交渉の末、1962 ( 昭和37 ) 年暮れまでに、捕虜の大半をカストロが釈放し、身柄をアメリカに送った。」「代わりとして医薬品と食糧合計5300万ドルが、アメリカからキューバ政府に支払われた。」
「その後ケネディは、軍部とCIAを全く信用しなくなった。」「軍事・情報分野の助言に対しても懐疑的になり、軍部やCIAとの関係は冷え込んでいった。」「翌年のキューバ危機では、空爆を強く主張する軍部の意見を抑え、海上封鎖にもっていくという決断をした。」「米国の世論は、ケネディの手腕を高く評価した。」
「ケネディーが、キューバ危機の解決策として、フルシチョフに以降キューバに武力侵攻しない約束をしたことが、亡命キューバ人たちを怒らせた。」「翌1963年3月になると、ケネディは公然と、亡命キューバ人の軍事行動にブレーキをかけ始め、彼らの部隊を使わせないようにし、余計に怒らせた。」
つい先日まで本棚のファイルケースに、キューバ危機に関するスクラップが残っていました。ケネディーとフルシチョフが会談している有名な写真もありましたが、断捨離の一環で処分しました。当時の朝日新聞がどこまで報道していたのか、確認する方法がありませんが、ここまでのことは書いていなかったような気がします。
米国人は事情を知っていたはずですから、オズワルドの単独犯でなく、背後にCIAや亡米キューバ人組織があると、感じていたと思います。私でもこうした話を知っていたら、オズワルドの単独犯説を信じなかったと思います。そうしたモヤモヤを明確にする形で、デリーロ氏の小説が出たので、ベストセラーになったのかも知れません。
95ページで氏はガイ・バニスターに、ケネディーについて語らせています。バニスターは、FBIに20年間勤務後、ニューオルリンズの警察副所長を務め、反共極右団体ジョン・バーチ協会の会員でもありました。
「問題は、人々がケネディーの中に見ているものさ。われわれ国民が絶えず抱いている、あの輝やかしいイメージだ。」「彼は実際、たいていの写真で輝いているよ。われわれは彼を、当代の英雄と信じてるってことになっている。あんなに急いで、偉大になろうとしている人間を、見たことがあるかね。」
「彼は自分の手で、この国を違った種類の社会にできる気でいる。」「われわれ国民は、賢さという点で、彼にすりゃ物足りないんだな。」「われわれは成熟していないし、ハーバード出でもなく、金持ちでもなく、好男子でもなく、幸運に恵まれてもいなけりゃ、機知に富んでもいないってわけだ。」「俺は彼を見るだけで、やたら癪に触る。」
「俺にとってカリスマというのが、何を意味するか分かるか。」「彼が、秘密を握っているということさ。」「危険な秘密は、かって政府の外で握られていたもんだ。陰謀だの、共謀だの、今や重要な秘密を、しまいこんでいるのは政府の方だ。」
「危険は全て、ホワイトハウスの中にある。彼はカストロと、何を企んでいるんだ。ソ連と、どういう闇ルートをこさえてるんだ。」「政府の行政部門に、共産主義の理想を推進することに、もっぱら奉仕している動きがあるって点じゃ、俺はいささかの疑問も抱いてないね。」
ここまで聞かされると、読者は、オズワルドの単独犯行をなのなります。ケネディーに恨みを抱くのは、CIAだけでなく、軍、FBI、警察組織、亡命キューバ人組織もあったと分かります。
上巻の239ベージのところを読んでいます。しばらく、読書に専念しようと思いますので、その間ブログも休みです。訪問される方がめっきり減りましたので、ちょうど良いタイミングです。