田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

ゆらぎ  吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-07-13 16:51:51 | Weblog
15
彩音はふと窓の外を見た。
新築されたばかりの三階から見下ろす。
校庭の隅には解体された古材が山積している。
キャンパスの雪は日陰ではまだとけていない。
鉄製の観音開きの校門に人影が差した。
刀を手にした着流し、明治の壮士風の男が入ってくる。
校門は殺伐とした事件が全国的に起きているので閉ざされたままだ。
閉ざされた校門を男は入ってきた。
煙りにでもなって、透けて侵入してきたのかしら。
男の壮士風の服装も時代離れしている。
おかしいし。
男の周囲がまるで隈取りもされたようだ。
風景が歪んでいる。
陽炎のようにフレヤが立ち上ぼっている。
彩音はまた〈ゆらぎ〉を感じた。
そしてかるいめまい。
また、わたしおかしい。
幻覚をみているのだ。
こんなことが、しばしば起きるようだったらどうしよう。
校庭には風花が渦をまいてふきつけてきた。
一面の河原になった。
葦が風花になびき波立つ白い波頭のようゆれている。
なにさ、これって。
ここはわたしたちの学校のグランドなのよー。
彩音は悲鳴をあげた。

 逆行認識。
時間を置換し、それによって明らかに過去に目を注ぎ、先だつ知識がないのに事件を体験または回顧し、あるいは自分自身の記憶にないのに正しい情報を手に入れること。逆行認識は、日常生活の中や、夢の中や、超心理学の教室の実験の中で自然発生的に起こる。巫女たちは、占いを立てる顧客にたいして答えを読むときにそれを用いる。「事後認識」とも呼ばれることもある。

 あれだ。逆行認識だ。アサヤ先生からわたされていたパンフレットの文面にあった。
 彩音は理解した。
  彩音がシンバルの音をきいて半覚醒状態におちいったときいて、アサヤ先生が 教室の黒板の裏にある部屋から資料をプリントアウトしてきてくれた。
 彩音もわたしの跡継ぎができるようになったのね。
 と文美おばあちゃんがよろこんだ理由がこれでわかった。
 わが家の才能って、こういうことだったのね。
 あらゆることを記憶しているうちに情報が過去と未来をつなぎ、稲妻みたいにヒラメクのだ。
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なぞの転任教師/ 吸血鬼ハンター美少女彩音

2008-07-13 01:56:29 | Weblog
 14

下忍のなんにんかは、内閣府の情報局員として世界の各地で任務についている。
呼び戻すことは、不可能とのことだった。
それも若者はいない。
東照宮をふくむ二社一寺と皇族の往還する例弊使街道を守護してきた野州勅忍。
「日光の忍びはわしの代で終わるだろう」
寂しく玄斎がいった。
ひさしぶりできたのだ。泊まっていけ。というのを麻屋は断った。
「栃木の机家に倅がいたな。連絡だけはつけておく。あまりあてにはしないでくれ」

演劇部の部長、芳田美穂と副部長の深岩静香が彩音を呼びにきた。
彩音は2年D組。
3年生は受験勉強がある。
ラストスパートをかけている。
生徒会と各クラブ活動の運営はすでに2年生にゆだねられている。
「彩音、失神したんだって。いやらしい」
教室に入ってくるなり美穂が彩音をオチョクル。
「エロ版画でもほっていたの」と静香。
「あんたら、なに想像してるの。それこそイヤラシイ耳年増ね。失神なんて、一条きららの読み過ぎじゃないの」
「耳年増? それって、どういう意味なの。解説してよ」
彩音はニヤニヤわらっている。
「美術部もいいけれど……たまには美形みにこない」
「なにさ。美形って? ジャニーズジュニヤーみたいなイケメンでも転校してきたの」
「ザーンネン。転校生じゃなくて、転勤よ」
「新任の先生が、ながいこと不在だった演劇部の顧問になってくれたの。木村拓に似てるの」
と静香が美穂の説明の足りないところを補う。
「わぁ、それっていくカチある。誘ってくれて、ありがとう」
「彩音は木村拓哉フアン。イケメンに弱いものね」
「いっそのこと、こんどこそ演劇部においでよ」
姦しいこと。姦しいこと。
美穂と静香と話しながら彩音は演劇部室に急ぐ。
男子生徒とすれちがった。
彩音を見る目がせっなく、憧れをこめて光かる。
だれもが、彩音の美しさは認めている。
美穂も静香も演劇をやるくらいだから美少女だ。
ただ、彩音は古典的なうりざね顔をしている。
日本の男の郷愁をさそうのだろう。
日本舞踊の舞手としての名声もある。
それでいて、彩音にはBFはいない。
だれとでも気軽に話す。
「川端、演劇部に入るのか」
などと声をかけられる。
美穂し静香と歩いているからだろう。
「高校生になっても彩音ちゃんの劇や、舞踊の発表会観にいくからな」
なんて声もかかる。
彩音はその呼びかけに会釈で応じている。

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