田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

change 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫 

2008-07-15 08:41:12 | Weblog
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上野学都先生。
校門を入ってきたあの着流しの明治の壮士?
名前にごまかされてはダメぇ。
名前なんか人間につけられた符丁みたいなもの。
学都とというひびきから、ガクトを連想した。
わたしって古い。やっぱこの先生、CHANGEのキムタクだぁ。
総理になる前の、髪もじゃもじゃの先生だ。
そして、剣をたずさえていた男? でもある。
めまぐるしい変身。こんなことができるのは……。
彩音は、学都と目線をかわす。
「どうしたの、おふたりとも仇敵にめぐりあったようだわ。へんなの」
学都先生より教科書を縦にして一冊ぶんくらい背のたかい慶子がふたりのあいだに割ってはいる。 
学都の背後には荒涼たる河原の葦が茂っていた。
空が暗くなった。
風花は、とめどもなく空からおちてくる雪の結晶となった。
背後のスクーリンに写しだされた映像? かしら……。
それもある。でもそれだけではない。
彩音は肌寒さまで感じている。
彩音は美穂からわたされた舞扇で学都と立ち回りを演じている。
剣を中段にかまえた学都と彩音の立ち回り。
こんなシーン『黒髪颪の吹く街で』にはなかった。
わたしなにしてるのかしら。と彩音は考えていた。
切合いの型をみせる殺伐とした演技とというより、まさに演武。いや、演舞だ。妖しくも美しい立回りだ。
そして……。だが……彩音には見えてきた。
学都を操る影が……。
学都にオオバアラップして、もうひとりの影が見えている。
白い影にむかって彩音は念波をとばした。
声にならない声で話しかけた。
あなたのことは、よく夢で見てきた。
あなたのことはよく知っている。
雪が舞う。川音が遠のく。

「あなたは……帰ってきてはいけなかった」
これって『男体颪の吹く街で』でのセリフじゃなかったかしら。
彩音は県の芸術祭で演技賞をもらった。その時のセリフだ。
彩音の心に、学都をあやつるモノの声がきこえている。
「なにをいうか、鹿沼の娘。この土地の鹿沼土はわれらの憩いの場所。われらの土だ。皐栽培に必要だからということからだけで、鹿沼土が日本全国に輸出されているとでもうぬぼれているのか。われらはひそかに、鹿沼土の土風呂をつくって、その棺の中で生きている。百年に一度の故郷参りは許されてもいいはずだ。いままでも、われらはひそかに、なんども帰ってきていたのだ」
彩音は影に呼びかける。
その影は、吸血鬼だ。

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