田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

血/吸血鬼ハンター美少女彩音

2008-07-20 06:04:18 | Weblog
24

 上都賀病院の看護婦長。
 慶子の母。
 血のしたたる国産のビーフステーキをほおばっている。
 娘に話しかける。
 高木家のおそい夕食。
 食事のとき、そんな話よしてよ。
 とは、今夜はいわなかった。
 娘のいやがる話題提供が趣味の母。
 あら今夜は、どうしたのかしら。
 という顔をしたものだ。
 母ひとり、娘ひとり。
 親子ふたり暮らしだ。
「それで?」
「さき聞きたい」
 慶子がぐっと食卓に体をのりだす。
 麻屋の話を聞いていた。
 なにかいやな予感がした。
「警察できてしらべたのよ。そしたら……」
「そしたら……」
「見つかったの」
 がばっと、慶子が食卓に伏せる。 
 ごっんと音までした。
 なにせ長身。
 のっぽ。空ひっかき女。母の皿まで頭がとどいた。
 たべかけのステーキが宙に舞う。
 慶子がすばやく手をのばす。
 ステーキは慶子のフォークのさきにささる。
 そのままパクリ。
「ああ、わたしのステーキ、わたしのステーキが食べられちゃったぁ」
 母がおおぎょうに泣き声をあげる。
「わたしのあげるわよ」
 慶子がじぶんの皿を母の前に押し出す。
 それには、目もくれず。
 母が声をひくめる。
「ところがぁ。みんなからっぽ。飲んだらしいの」
「飲んだって、なにを?」
「聞いてなかったの、血よ、パックのなかの血はみんなからっぽだったのよ」
 大量に血液が飲まれた。ぬすまれたパックはすべてからだったという。

   8

 麻屋は彩音からわたされた『女工哀歌』を読んだ。

 女子寮の高い塀に面した角部屋である6号室は血の海に変転じていた。
 床の血をなにものかが啜ったあとがあった。それがなにものであるかは、この不可解な事件が解決をみなかったようにいまだにわかってはいない。六角澄江の幽霊がやったのにちがいない。という噂がたった。血を流していたが、娘たちは辛うじて失血死だけはまぬかれた。秋田や山形の親たちが泣きながらひきとっていった。
 麻屋は終章を読みおわった。

(吸血鬼は何人も、ヤッラガニンゲントシテダガ、いままでにも、帰って来ていたのだ)
 それが、どうしていまになって、またおおぜい帰還してきたのだ。

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