田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

腐乱/吸血鬼ハンター美少女彩音

2008-07-24 23:09:41 | Weblog
30

 九門ゼミナールから帰りの典子。
 カラオケパブからでてきた孝子。
 ゲーセンで遊び狂っていた篠子。
 首筋におぞましいものがおしつけられた。
 唇。
 つめたい。
 ぐさっと牙がうちこまれた。
 三人の娘の断末魔の悲鳴をきいたものはいない。
 ズルッずるっとなにかを引き摺る音。
 なにか、やわらかなものが舗道を引き摺られている音。
 そんな音を聞いたものもいない。
 今夜も春の雪になりそうだ。
 いやに、冷えこんでいる。
 シャッターが下ろされている。
 どこの家もはやく雨戸をとじている。
 玄関にカギがかけられている。
 いや冷えこむだけではない。
 なにか、怖いいものがこの夜の底を歩き回っている。

10

「聞けたか」
「悲鳴でしたね」
「わたしにも聞こえたよ」
 彩音は麻屋と文美の後ろから声をかける。
 すくなくとも、彼女たちの悲鳴を感知したものがここにいた。
 恐怖の源をみきわめようとするものたちは、地下の資料室をぬけて地下道を歩いていた。
 周囲の壁がゆれている。
 彩音がはじめて資料室ををおとずれたときもこの微動が起きた。
「歓迎されているわけではなさそうだな」
「わたしもそうおもいます。先生これは……」
「むこうさんも、武者震いしてるんだろうよ」
「わたしもそうおもいます」
「なによ、おばあちゃんもセンセも。ふたりでもりあがっちゃって。わたしにもわかるように、説明して」
「あれはなにかしらね」
 文美がのんびりという。
「鉄ごうしがあるから、ここは国産繊維の地下室だ。折檻部屋のあとかな」
「まさか、そんなきついことは、やらなかったでしょう。反省室よ」
「反省室に鉄ごうしをはめるかね」
 のぞきこむと、すみのほうに布切れが積み上げられていた。
 布切れではなかった。
 婦人用の洋服であったものだ。
 布の陰に白い……骨。
 骨だ。
 そして、まだ骨になりきっていないおぞましい腐乱死体。

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吸われた/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-07-24 18:24:19 | Weblog
29

 孝子は悲鳴をあげた。
 お酒を飲み過ぎている。
 こんなに、遅くなるつもりではなかった。
 久し振りで会った友だちとつい飲みすぎた。
 口のなかがねばい。
 カラオケパブからの帰りだった。
 白い腕がのびてきた。
 街灯のなかに男の姿がうかびあがった。
 夜が暗く重い。
 今夜も春の雪になるかもしれないと思った。
「孝子ちゃんはもう雪はみられないの。うふ、うふふふ」
 男が不気味に笑った。
 口元が赤く爛れているようにみえる。
 男から冷気がふきだしている。
 体が凍えてしまいそだ。
 そして、孝子は気づいた。
 これは寒さなんかてはない。
 わたしは恐怖で動けなくなっているのだ。
 冷や汗が背中をながれている。
 がくがくとふるえていた。
 ああ、もうだめだ。
 わたし恐怖で発狂しちゃう。
 ケタケタ笑っているのは孝子じしんの声だった。
 顎がガクガク鳴っている。

「どうして夜遊びするの。夜歩き回るこは、わるいこなんだよ」
 ゲーセンからとびたしたところで篠子はよびためられた。
 少年課の婦警? 
「ぶー、はずれ」
 毒々しい青。
 鮫肌。
 もりあがっている。
 鱗みたい。
 口元が赤い。
 まるでいまあそんでいた吸血鬼ゲームみたい。
 血を吸ったみたい。赤い。
「ピンポン。こんどはアッタリー。篠子ちゃん血も吸わせてぇ」
 篠子は逃げる。
 夜の街を恐怖におののきながら逃げる。
 こんなことなら、母のいいつけを守ってひとりで留守していればよかった。
 後悔先に立たず。
 だれもいない。だれもたすけてくれるひとはいな。
 無人の街。まるで、セガのゲームの世界。
THE HOUSE OF THE DEAD の世界に迷い込んだみたい。
 でも、これは現実だ。
 こんなに息ぎれがする。
 動悸が激しすぎる。
 どうしたら、アイツを消去できるの。
 消去、できるの? 
 わたしは、わるいこ。
 わるいこだった。
 おかあさん、助けてぇ。
 これからはいいこになります。
 でももうおそい。
 ズルッとわたしの血が吸われている。

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