田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

憑依 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-07-16 08:17:36 | Weblog
 18

まちがいない。
爬虫類の外皮をした影だ。
青黒い不気味な肌。
学都先生はあの澄江の恋人であった純平らしい。
純平の魂が学都に憑依している。
なぜかそれがわかってしまう。
頭に直接ひびいてくる情報だ。
見えないものが、見える。
経験していないことでも理解できる。
わたし確実に変わりつつある。
ご先祖様の能力が芽生えてきたのだ。
さらに、純平の背後にだれかいる。
吸血鬼だ。
いや純平そのものも吸血鬼に見える。
彩音は顔から血の気がうせる。
吸血鬼との接近遭遇は初体験だ。
体の血が吸いとられていくような恐怖。
彩音はがくがくふるえだした。
吸血鬼に噛まれるまえから、これでは闘えない。
(わたしって、やっぱ、ふつうの女のこなのかしら)
勇気を奮い起こして鱗状の体をした純平の背後のモノに念波をとばす。
「あなたは、林純平さんが、この鹿沼に怨念をもつのを利用するべきでなかった。この鹿沼は、そこに住むひとたちは、恋人澄江さんの敵と思いこんでいるのを煽るべきではなかった。あなたたちの帰還を歓迎する人は、もうこの土地にはいないはずよ。もどってきてはいけなかった」
「この土地にわたしたちが住むことは恐れられている。きらわれている。だが、わたしたちを心から恐れているものがまだいる。ということは、わたしの帰還を、わたしを待っていたものもいるのだ」
「そう、あんたらは、鹿沼の守護天使だとでもいうつもりなの。あんたらが、大量に鹿沼の土を買い取ってくれるからわたしたちが生きていけるとでもいいたいわけなの、吸血鬼さん」
「いうな。その名でよばれることは好かん」
「どこの田舎でも、故郷をでて外にいるひとの思いに、生まれ故郷を思う気持ちに故郷は、支えられているのよ。それが、鹿沼の場合はたまたま鹿沼土の購入という形であらわれただけよ」
「そんな、簡単なものではない。鹿沼は万葉の昔、可奴麻(か ぬ ま )と呼ばれていた頃からすでにして、われらが故郷だ」
わたしって、なにいっているのかしら。
これでは、ほとんど『男体颪の吹く街で』のセリフをしゃべっている感じだ。
ちがうのは、あの劇中では、わたしのセリフはひさしぶりに帰郷した恋人に対するものだった。
ここでは、話しかける相手が吸血鬼になっている。

     応援ありがとうございます。
     クリックよろしく。
         ↓
       にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ