田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

人狼のいま/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-09-08 04:29:26 | Weblog
奥様はバンパイァ 47

○「この黒川がどうして黒川と呼ばれるようになったかしっている。血の色はね、

夜の月明りでみると赤ではなく黒く見えるのよ。わたしたち吸美のものがここまで

きたときにはみんな殺されてしまったあとだった。むごたらしい死骸がるいるいと

おりかさなっていた」

先祖の記憶がのこっているM。

そのためにこそ、怨嗟には深い悲しみがよどんでいた。

「だから……人狼への恨みは忘れられないの。この川を見るたびにおもいだしてし

まうのよ。とくにこんやは、人狼とたたかったから」

呪いのこもった声でMは語り続ける。

それであるいてここまで来たのか。

Mは闇にむかいあっていた。

暗黒に声を飛ばしている。

忘れられない恨みをこめて。

「おばさま。家にかえって休みましょう」

玲加がMをうながした。


過去の恨みは消えることはない。

復讐をはたしたとしても、恨みが消えるわけでもない。

むしろ、合成麻薬をつくっているほうがわたしには許せなかった。

麻薬を売って、利益を上げようとする行為が許せなかった。

おおくの廃残者をだしてもなお商売をつづけられる。

ひとの生き血を吸うと同じことではないか。

麻薬の販路の絶滅。

それはこれから洋子の父、麻取りのひとたちが追いかけるヤマだ。

わたしたちは、この化沼の若者を人狼の攻撃や麻薬の誘惑から守ることだ。

まだ人狼が咆哮し、舌を鳴らしている。

戦いはまだはじまつたばかりだ。

過去の恨みはそのままにしておいて、これから戦う目的が見えてきた。

じぶんたちの町は、じぶんたちで守る。

Mの寂しそうな横顔を見ながらわたしは思ったものだ。

    マチルダ
      

   pictured by 「猫と亭主とわたし


      

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