田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

人狼のエサ/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-09-23 10:36:52 | Weblog
奥様はバンパイァ53

○気がついたときには、玲加は戦いの渦から遠ざかっていた。

これほど多数の人狼との実戦は経験したことがなかった。

夢中でバラの鞭を振るって応戦しているうちに、MやGから離れてしまった。

いやそう誘導されたのだ。

「おいしそうだ」

「うまそうだ」

「ジューシィだ」

人狼の目がそういっている。

牙のあいだからヨダレをたらしている。

ゴクッと唾を飲み込む音がする。

人狼の欲望の口の中では玲加はおいしい肉となっている。

咀嚼されている。

ジューシィな生肉となっている。

玲加はなんとしてもこの囲みを破ってMのもとにもどりたい。

Gのところへいきたい。

逃げ出したい。

でも後ろをみせたら終わりだ。

あいつらのほうが走るのは速いのだ。

そのうえ、バイクできている。

とてもかなわない。

林の奥まった箇所まできていた。

もう鞭が振るえない。

腕がしびれていた。

人狼を打ちすえても、かすり傷ひとつつけられない。

人狼が声を発した。

おそらくヒトのものとは思えなかった。

かん高いヒトとは異質な狼の咆哮だ。

体に震えが来るような音だった。

獲物にありつけそうだと、仲間に呼び集めている吠え声だ。

そのてエモノと玲加だ。

人狼は狂っていた。

怒りのあまり狂っていた。

大麻ファクトリをつぶされた。

生きる糧をたたれた。

都会からアウトレット形式のモールや大型のスーパーが進出してきた。

その土地に密着して細々とだが営んできた八百屋、魚屋、衣料品屋,日常雑貨屋。

床屋。屋のつく商売はなりたたなくなった。

それで大麻や、合成麻薬を作ることで活路をみいだしていたのに。

生きる糧を断たれた。

長年住み慣れた犬飼villageを捨てて先祖の土地奈良に戻らなければならないほど

追いつめられた。

「この娘の部族のものはおれたちの敵だ」

大麻ファクトリを潰された。

この恨みわすれないぞ。

おれたちは原始の昔にもどる。

肉食獣として生きてやる。

狂った怒りの餓狼は吠え声をあげて玲加に襲いかかってくる。



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