田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

リリはバーチャルの世界で狩りをしています。 麻屋与志夫

2016-02-02 08:41:40 | ブログ
2月2日 Tu.

●リリが消える。
「リリ、どこなの。どこにいるの」
わが家は築百年にはなる。
こんど、大きな地震が来たら倒れてしまうのではないかと子どもたちが心配している。
古民家だ。ボロ家だが広い。リリが消えてしまって、その姿を探すのは一苦労だ。

●「リリ、見つけた」
ミイマの陽気な声がブラッキ―の餌場とトイレになっている、わたしの書斎の下の部屋でする。
雑然とした空間だ。スチールの机が二つある。その上にはこれまた雑然と塾の古い教材が重ねてある。
園芸用品、デンドウノコ、等などが所狭しと置いてある。
物置がわりに使っている部屋だ。

●リリはこのところ、ここが気に入っている。
あまりにキレイで何もない部屋よりも品物が、アチコチにあった方が、落ち着くのだろう。
それに物影からなにかトビダシテきそうな期待があるようだ。
狩りをしている気分なのだろう。
なにもないのに、お尻をククット左右に振っているのを見ていると、古びて空気の抜けぬ軟式テニスのボールにジャレついた。
上の娘が中学でテニスをやっていた。
その思い出のラケットやボールが捨てずにとってある。

●この部屋は、思い出のジャングルだ。
娘にテニスを教えてくれた義弟は昨年亡くなった。
何人も入れ替わった塾の先生がたの使い古した教材も大切に保存してある。
教え子の名簿。
塾でだしていた「麻」という小冊子。

●タイムスリップを起こして、過去の感傷にふけらないように、わたしはあまり近寄らない部屋で、リリは仮想の獲物を探しているのだろう。



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