田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

日輪学院の怪(5)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-05-11 17:29:26 | Weblog

5

隼人はリングを拾い上げた。
寒い。隼人は震えていた。
寒い。どうしたというのだ。
いままで、寒くなんかなかったのに。

とつぜん、静けさを破って拍手が起きた。
そしてあの男が立っていた。
凄まじい鬼気をはなっている。
冷えびえとした部屋の空気がさらに冷たくなった。

日光でサル彦が戦ったモノ。
鹿沼で「マヤ塾」を襲ったモノ。
そして、男はニタニタと笑っている。

「覚えやすいだろう。
おれたちはみなおなじ体をしている。
見ることのできる能力のあるものだけが。
こういうふうに変化したおれたちを見る」

隼人の目前で男は鬼の姿になった。
悪魔の姿になった。
吸血鬼の姿になった。
「さあ、リクエストを受け付けますよ。
どの姿がお好きですか」
「美智子さんはどこだ。返してもらう」
隼人が叫ぶ。

美智子をどこに隠した。
美智子はどこにいる。
はやく、元気な姿を見たい。
はやく、美しい笑顔が見たい。
はやく、精気にあふれた声をききたい。
はやく、会いたい。

「おやおや、そんなに威張れた立場ですか」

「隼人、ゴメン」
キリコが部屋にころげこむ。
両腕をジャンパーの上からテープで拘束されている。
ふいをつかれたのだろう。
おトイレを借りる芝居はバレバレだった。

「どうだ。
おれたちと組まないか。
おれたちを見極められるのは。
榊、黒髪、麻耶の一族のものだけだ。
ほかのだれも、おれたちの正体はわからない。
どうだ。
隣のビルは日輪教の総本山になる。
おれたちの権勢を見せつけてやろう。
おれたちが組めば天下無敵だ」

「だめ。
隼人だまされないで。
こいつら口がうまいから、だまされないで」
「なにウジャウジャいってるんだ。キリコ、血をぬきとるぞ」
「そうよ。それがあんたらオニガミの本音だよ。
あんたらアタイたちを餌くらいにしか思っていないんだっぺ」
「おおう。食欲をそそる言葉だな」
「王仁さまあの女を連れてきますか」
かれらの会話にしびれをきらしたように王仁の配下がいう。 
「総本山の落成式に。
日本アカデミ賞主演女優賞の中山美智子に。
司会をつとめてもらいたくてな。
動く広告塔になってもらいたいのだ」
「だまされないで。隼人」


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