6月9日土曜日。
昼過ぎからまた雷雨となった。
我が家はトタン屋根だ。
雷鳴がトタン屋根に反響する。
すさまじい。腹の底まで響くような雷鳴だ。
この年になっても地震よりも雷のほうが怖い。
薄闇の中でカミサンが息子の結婚式のことを話題にする。
雨音と稲妻。雷鳴に阻まれてよく聞き取れない。まさか耳が遠くなったわけではないだろう。不安がふと心をよぎる。
「わたしたちって旅行したことないわ。それを気にかけてくれているのよ。それで、結婚式を挙げるの。軽井沢で」
思えば、わたしたちの結婚式もささやかなものであった。学業半ばで帰省してからの結婚。カミサンはわたしの両親の看護のために嫁に来たようなものだ。老人医療保険がまだなかった。
わたしは医療費を稼ぐために働き続けた。だからそのころどんな生活をしていたのか記憶にない。
「秋の初めの軽井沢。いいなぁ。一泊できるのよ」
いいなぁ、と感嘆の吐息をもらしている。
軽井沢の街のたたずまい。初秋の山並み。
カミサンは目を細めて物思いにふけっている。
カミサンのこのロマンチックな心情になんどわたしは癒されたことだろう。苦労をともにしてきた歳月が脳裏をよぎる。
息子が長いこと愛し続けた娘さんと結婚する。わたしたちには娘が増える。やがて内孫などと思う。
これからがわたしだけの戦いだ。
書いてて書いて、それでもだめでも書き続ける。
カミサンの期待に応えたい。
カミサンの苦労に報いたい。
雷鳴鳴りやまず。
薄暗い部屋に稲妻が光る。
昼過ぎからまた雷雨となった。
我が家はトタン屋根だ。
雷鳴がトタン屋根に反響する。
すさまじい。腹の底まで響くような雷鳴だ。
この年になっても地震よりも雷のほうが怖い。
薄闇の中でカミサンが息子の結婚式のことを話題にする。
雨音と稲妻。雷鳴に阻まれてよく聞き取れない。まさか耳が遠くなったわけではないだろう。不安がふと心をよぎる。
「わたしたちって旅行したことないわ。それを気にかけてくれているのよ。それで、結婚式を挙げるの。軽井沢で」
思えば、わたしたちの結婚式もささやかなものであった。学業半ばで帰省してからの結婚。カミサンはわたしの両親の看護のために嫁に来たようなものだ。老人医療保険がまだなかった。
わたしは医療費を稼ぐために働き続けた。だからそのころどんな生活をしていたのか記憶にない。
「秋の初めの軽井沢。いいなぁ。一泊できるのよ」
いいなぁ、と感嘆の吐息をもらしている。
軽井沢の街のたたずまい。初秋の山並み。
カミサンは目を細めて物思いにふけっている。
カミサンのこのロマンチックな心情になんどわたしは癒されたことだろう。苦労をともにしてきた歳月が脳裏をよぎる。
息子が長いこと愛し続けた娘さんと結婚する。わたしたちには娘が増える。やがて内孫などと思う。
これからがわたしだけの戦いだ。
書いてて書いて、それでもだめでも書き続ける。
カミサンの期待に応えたい。
カミサンの苦労に報いたい。
雷鳴鳴りやまず。
薄暗い部屋に稲妻が光る。
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