田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

日輪学院の怪(4)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-05-11 08:44:20 | Weblog
4

ピピピピピピピ。
携帯のGPS機能が音をたてている。
そんなわけはない。
赤い点で彼女の所在は明示する。
でも、ピンポイントではない。
だいいち、音をたてているのはぼくの心拍だ。
ピピピではない。
ドッドッドッという心拍だ。
頭がいろいろなことを幻聴や幻覚としてみせている。

廊下の面したドアを開く。
部屋をのぞく。
いない。
開く。
のぞく。
いない。
あせる。
この瞬間にも彼女に危機が迫っている。
そう思う。
焦燥感にさいなまれる。

無事でいてくれ。
無事で――。
廊下を走る。
走る。
走る。
心拍がさらに速くなる。
高くなる。
切羽詰まる。

いや、心拍は彼女のモノだ。
彼女の心拍とシンクロしている。
まちがいない。
彼女はここにいる。
美智子が拷問にあって苦しんでいる。
そう思えてしまう。

はやく助けなければ。
隼人は走る。
どこにいるのだ。
どこだ。
美智子どこだ。
美智子、美智子、美智子と心で叫んでいる。

どこだ。
どこだ。
ピピピ。
ドッドッドッ。
美智子の苦痛の呻きに聞こえる。
心拍がさらに小刻みにひびく。
廊下のはずれに地下への階段がある。
隼人は必死だった。
周囲への配慮など、おかまいなし。
階段をダダダっと駆け下りる。
扉がある。
開ける。
だれもいない。

部屋の隅に直人の婚約指輪が落ちていた。


 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村

最新の画像もっと見る

コメントを投稿