「どしうしたらいいの」
祥代がじれている。
道路はたしかにある。
満月がひえきった舗道を照らしている。
だが、その先、街から東北縦貫道路へでるインターへの道が濃い霧の中に消えている。
霧は一面にただよっているといったわけではない。
わたしの車のまわりにまつわりついている。
わたしの走行を妨害しているのだ。
夜明けを待つほかないだろう。
このあたりから、鹿沼インターにはいる道があるはずなのだ。
祥代がすぐそこまできている。
でもこの霧の中を進むのは危険だ。
わたしは車を止めた。
ヘッドライトの光軸のさきにブロックで構築された門があった。
ジャンバーの男がバイクで乗り入れていく。
すこし背をかがめた姿がさきほどの男に似ている。
だが、新聞社のロゴのはいったジャンバーはきていない。
皮製品だ。それががっしりとした体にぴったりと張り付いている。
わたしには気づいていない。
それでもわたしは路肩に止めた車のなかで姿勢をひくくした。
猫がよろこんでからだをすりよせてきた。
わたしは車から下りて男の消えた門を目指した。
霧がまた流れてきた。
寒い。
だがわたしを小刻みにふるわせているのは寒さだけではなかった。
門をくぐると霧はさらに濃密になった。
バイクが止めてあった。
ハンドルについている荷物入れのバスケットの中は空だった。
新聞入れのズックの袋があったはずだ。
裏庭の方で人声がする。
あかあかと火がもえていた。
火勢が強いので、その辺りだけ霧がはれていた。
男たちがそろっていた。
車座になって酒盛りをしていた。
「レアもいいが、バーベキュもいいな」
「あまり焼き過ぎるなよ」
鉄串に突き刺されてやかれているのは、あの気高いホワイトペルシャ猫だ。
仲間に疎んじられていた長毛種の猫だった。
毛がじりじり音を立てて縮み、燃え上がり……。
それからさきは見ていられなかった。
わたしは恐怖で動けなかった。
シャム猫が嬰児にみえた。
嬰児が焼かれている。
袋から猫であったものをさらにひきだそうとして、男は鼻をうごめかせた。
「人だ。人の臭いがする」
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祥代がじれている。
道路はたしかにある。
満月がひえきった舗道を照らしている。
だが、その先、街から東北縦貫道路へでるインターへの道が濃い霧の中に消えている。
霧は一面にただよっているといったわけではない。
わたしの車のまわりにまつわりついている。
わたしの走行を妨害しているのだ。
夜明けを待つほかないだろう。
このあたりから、鹿沼インターにはいる道があるはずなのだ。
祥代がすぐそこまできている。
でもこの霧の中を進むのは危険だ。
わたしは車を止めた。
ヘッドライトの光軸のさきにブロックで構築された門があった。
ジャンバーの男がバイクで乗り入れていく。
すこし背をかがめた姿がさきほどの男に似ている。
だが、新聞社のロゴのはいったジャンバーはきていない。
皮製品だ。それががっしりとした体にぴったりと張り付いている。
わたしには気づいていない。
それでもわたしは路肩に止めた車のなかで姿勢をひくくした。
猫がよろこんでからだをすりよせてきた。
わたしは車から下りて男の消えた門を目指した。
霧がまた流れてきた。
寒い。
だがわたしを小刻みにふるわせているのは寒さだけではなかった。
門をくぐると霧はさらに濃密になった。
バイクが止めてあった。
ハンドルについている荷物入れのバスケットの中は空だった。
新聞入れのズックの袋があったはずだ。
裏庭の方で人声がする。
あかあかと火がもえていた。
火勢が強いので、その辺りだけ霧がはれていた。
男たちがそろっていた。
車座になって酒盛りをしていた。
「レアもいいが、バーベキュもいいな」
「あまり焼き過ぎるなよ」
鉄串に突き刺されてやかれているのは、あの気高いホワイトペルシャ猫だ。
仲間に疎んじられていた長毛種の猫だった。
毛がじりじり音を立てて縮み、燃え上がり……。
それからさきは見ていられなかった。
わたしは恐怖で動けなかった。
シャム猫が嬰児にみえた。
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