ケイスケの悩み
ケイスケは悩んでいた。四十になったとたんに物忘れがひどくなった。
とある休日の朝、ケイスケは犬の散歩に出かけようとした。
散歩の気配を察知した飼い犬の尻尾は激しく揺れている。
「よし子さん、散歩に行きたいのですが、僕のスマホとニット帽と眼鏡を知りませんか」
よし子は朝食の準備をしながらケイスケの姿をちらりと見た。
「私には準備は出来ているように見えるけど、スマホの場所だけは理解しかねるわ。朝ご飯のおにぎり作るから公園で食べて」
「出かける準備が万全だって」
「そのように見えるわ」
よし子さんは、サイコロ大に切った卵焼きをおにぎりの中心に入れた。
よし子は飲み物とおにぎりを入れたトートバックと散歩グッズをケイスケに手渡した。
狐に化かされた経験はケイスケには無かったが、おそらく今の感覚は近いに違いない。
そう思いながらケイスケは自分の頭を触った。
ニット帽の毛糸の感触が手先に触れる。
眼鏡が手に触れた。
眼鏡はニット帽の上から額の部分にセットされていた。
ケイスケは側頭部に違和感を感じて手をまわす。
固い感触が手に伝わる。
ニット帽に半分、スマホが挟まっている。
ケイスケの記憶に電流が走った。
ケイスケは身支度の最後にニット帽をかぶった。
腕時計のデジタルが見えなくて眼鏡を取った。
現在時間を確認して、散歩の段取りを思い描いた瞬間、眼鏡のことを忘れた。
眼鏡の事は忘れたが、ケイスケは、よし子さんに頼まれていた柔軟剤の詰め替え作業を思い出した。
空になった柔軟剤のフタをはずして、ちょっとした隙間に置いた。
詰め替え用のくにゃっとした容器の封を切る。
その時、スマホに電話がかかってきた。
問題が発生している仕事先からの電話だ。
両手はふさがっている。
苦労して電話を取り、もしもしと言いながら、帽子に挟み込んだ。
そのままの状態で話し込んだ。
思いの他、物事がうまく解決して電話は終わった。
事後処理を思案している最中、スマホの存在を忘れた。
ケイスケは自分で自分を化かしていた。
ケイスケは悩んでいた。四十になったとたんに物忘れがひどくなった。
とある休日の朝、ケイスケは犬の散歩に出かけようとした。
散歩の気配を察知した飼い犬の尻尾は激しく揺れている。
「よし子さん、散歩に行きたいのですが、僕のスマホとニット帽と眼鏡を知りませんか」
よし子は朝食の準備をしながらケイスケの姿をちらりと見た。
「私には準備は出来ているように見えるけど、スマホの場所だけは理解しかねるわ。朝ご飯のおにぎり作るから公園で食べて」
「出かける準備が万全だって」
「そのように見えるわ」
よし子さんは、サイコロ大に切った卵焼きをおにぎりの中心に入れた。
よし子は飲み物とおにぎりを入れたトートバックと散歩グッズをケイスケに手渡した。
狐に化かされた経験はケイスケには無かったが、おそらく今の感覚は近いに違いない。
そう思いながらケイスケは自分の頭を触った。
ニット帽の毛糸の感触が手先に触れる。
眼鏡が手に触れた。
眼鏡はニット帽の上から額の部分にセットされていた。
ケイスケは側頭部に違和感を感じて手をまわす。
固い感触が手に伝わる。
ニット帽に半分、スマホが挟まっている。
ケイスケの記憶に電流が走った。
ケイスケは身支度の最後にニット帽をかぶった。
腕時計のデジタルが見えなくて眼鏡を取った。
現在時間を確認して、散歩の段取りを思い描いた瞬間、眼鏡のことを忘れた。
眼鏡の事は忘れたが、ケイスケは、よし子さんに頼まれていた柔軟剤の詰め替え作業を思い出した。
空になった柔軟剤のフタをはずして、ちょっとした隙間に置いた。
詰め替え用のくにゃっとした容器の封を切る。
その時、スマホに電話がかかってきた。
問題が発生している仕事先からの電話だ。
両手はふさがっている。
苦労して電話を取り、もしもしと言いながら、帽子に挟み込んだ。
そのままの状態で話し込んだ。
思いの他、物事がうまく解決して電話は終わった。
事後処理を思案している最中、スマホの存在を忘れた。
ケイスケは自分で自分を化かしていた。
地面の下に埋まっているモノが表記されている場合がある
「電気」「ガス」「水道」など
これが埋まっているとおもしろいもの
「埋蔵金」