「空気の層をぶちぬいて地表に到達するための角度は非常に繊細だ。角度が浅ければ大気圏に弾かれ、角度が深すぎると機体は燃え尽きる。運転はすべて自動運転。人間の介在する余地はない」
「軌道エレベーターでは地球に到達するには最低3日かかります。今すぐ地球に戻らなければ奥さん達に危険がせまっている」
ミツオとエリーの気持ちは決まっていた。ほぼ同時に二人は返答する。
「博士、行きましょう」
天空では多くの人々が忙しそうに働いていた。行き交うクルーは博士の姿を見て挨拶を交わす。後に続いて歩くミツオ達は曖昧に会釈を繰り返すしかなかった。クルー達は博士がどこに向かっているのかは知るよしも無い。
脱出ポットらしき機体が整然とならぶ部屋に入ったミツオは言葉を失う。
その機体はすべすべとした金属の輝きこそ放ってはいたが、形は初めて月面着陸をとげたアポロ号そのものだった。
「脱出ポットの原理は簡単だ。ここから打ち出されてそのまま地表に到達する。当時はパラシュートを介して海に着水したが、現在ではそのまま空中移動が可能になっておる。大丈夫だ機体の安全性は歴史が証明しておる。さあ、乗り込むぞ」
博士は搭乗階段を登り、脱出ポットの扉を開ける。乗り込んだ三人は扉をロックし、座席に腰を下ろした。五点ベルトを黙々と装着する。コックピットには操縦桿らしきものと、ボタンが数個、非常にシンプルな運転席となっていた。博士が運転席に座った。
「おのおの方、出発だ」
博士はとびきり大きなボタンをたたくように押した。
座席の下部より響く振動。機体は持ち上がり魚雷発射装置のような機構に押し込められる。扉が閉まり、発射口が開いたであろう振動を感じた直後、漆黒の宇宙空間に脱出ポットが排出された。運転席前面にあるモニターが外部を映し出す。青い地球がみるみる大きく迫ってくる。そうこうする間に、モニターは空気抵抗により外部が真っ赤に燃える。一同は押しつぶされそうな恐怖を外部に出さないように努力する。外部の赤色が次第に収まりだした。
「どうやら無事、大気圏を突破できたらしい」
博士は冷静につぶやく。自動運転のナビゲーションにより機体は自宅に向かっている。宇宙から最短距離で近づいたおかげで、まさに博士の自宅上空に機体は到達する。モニターにはまさに須田が扉を開けて侵入する姿が映し出された。
「須田だ」
博士は絶句する。
「軌道エレベーターでは地球に到達するには最低3日かかります。今すぐ地球に戻らなければ奥さん達に危険がせまっている」
ミツオとエリーの気持ちは決まっていた。ほぼ同時に二人は返答する。
「博士、行きましょう」
天空では多くの人々が忙しそうに働いていた。行き交うクルーは博士の姿を見て挨拶を交わす。後に続いて歩くミツオ達は曖昧に会釈を繰り返すしかなかった。クルー達は博士がどこに向かっているのかは知るよしも無い。
脱出ポットらしき機体が整然とならぶ部屋に入ったミツオは言葉を失う。
その機体はすべすべとした金属の輝きこそ放ってはいたが、形は初めて月面着陸をとげたアポロ号そのものだった。
「脱出ポットの原理は簡単だ。ここから打ち出されてそのまま地表に到達する。当時はパラシュートを介して海に着水したが、現在ではそのまま空中移動が可能になっておる。大丈夫だ機体の安全性は歴史が証明しておる。さあ、乗り込むぞ」
博士は搭乗階段を登り、脱出ポットの扉を開ける。乗り込んだ三人は扉をロックし、座席に腰を下ろした。五点ベルトを黙々と装着する。コックピットには操縦桿らしきものと、ボタンが数個、非常にシンプルな運転席となっていた。博士が運転席に座った。
「おのおの方、出発だ」
博士はとびきり大きなボタンをたたくように押した。
座席の下部より響く振動。機体は持ち上がり魚雷発射装置のような機構に押し込められる。扉が閉まり、発射口が開いたであろう振動を感じた直後、漆黒の宇宙空間に脱出ポットが排出された。運転席前面にあるモニターが外部を映し出す。青い地球がみるみる大きく迫ってくる。そうこうする間に、モニターは空気抵抗により外部が真っ赤に燃える。一同は押しつぶされそうな恐怖を外部に出さないように努力する。外部の赤色が次第に収まりだした。
「どうやら無事、大気圏を突破できたらしい」
博士は冷静につぶやく。自動運転のナビゲーションにより機体は自宅に向かっている。宇宙から最短距離で近づいたおかげで、まさに博士の自宅上空に機体は到達する。モニターにはまさに須田が扉を開けて侵入する姿が映し出された。
「須田だ」
博士は絶句する。