須田の手には刃物があった。
須田はかすかに上空を見やった。あきらかに脱出ポットの存在に気づいている。須田がドアノブに手をかける。施錠されていなかったドアが開き、するりと室内へと侵入した。脱出ポッド内部では地表に降り立つのももどかしく感じていた。出来ることはシートベルトを外すことぐらいだった。モニターに釘づけになっている博士の心中は痛いほどミツオには分かった。しかしミツオはどうすることも出来ずにいた。地面に降り立った感触が足下から伝わり、ハッチが開く。エリーがハッチの隙間から真っ先に飛び出す。ミツオは無重力にいた体に突然戻った地球の重力がこたえていた。思うように体が動かない。宇宙での生活が長い博士はなおさらだ。
「須田を止めます」
ミツオはそう言って博士をハッチ上部から見下ろす。
「たのむ」
絞り出す博士の声は切実だった。
博士の自宅のすぐ前に脱出ポッドは接地していた。先に飛び出したエリーの姿はすでになく。自宅の扉は開いたままになっている。
ミツオは、はうようにして自分の体を鼓舞した。
ようやく室内に飛び込んだミツオが目にしたのは、床に転がる男女二人、刃物を奥さんの喉にあてがう須田、呆然と見つめるエリーがそこにいた。
ミツオに振り返ったエリーは「どうしましょう」とつぶやいた。
須田はかすかに上空を見やった。あきらかに脱出ポットの存在に気づいている。須田がドアノブに手をかける。施錠されていなかったドアが開き、するりと室内へと侵入した。脱出ポッド内部では地表に降り立つのももどかしく感じていた。出来ることはシートベルトを外すことぐらいだった。モニターに釘づけになっている博士の心中は痛いほどミツオには分かった。しかしミツオはどうすることも出来ずにいた。地面に降り立った感触が足下から伝わり、ハッチが開く。エリーがハッチの隙間から真っ先に飛び出す。ミツオは無重力にいた体に突然戻った地球の重力がこたえていた。思うように体が動かない。宇宙での生活が長い博士はなおさらだ。
「須田を止めます」
ミツオはそう言って博士をハッチ上部から見下ろす。
「たのむ」
絞り出す博士の声は切実だった。
博士の自宅のすぐ前に脱出ポッドは接地していた。先に飛び出したエリーの姿はすでになく。自宅の扉は開いたままになっている。
ミツオは、はうようにして自分の体を鼓舞した。
ようやく室内に飛び込んだミツオが目にしたのは、床に転がる男女二人、刃物を奥さんの喉にあてがう須田、呆然と見つめるエリーがそこにいた。
ミツオに振り返ったエリーは「どうしましょう」とつぶやいた。