日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎望郷(未来探偵ロクロ その19)

2024年04月27日 | ◎本日の想像話
 ミツオは床に転がる男女が道明寺と佐々木である事に気づいた。明らかな外傷は無い。ではなぜ動かないのか。ミツオは二人の名前を呼ぶが、反応は無い。
「須田、二人に何をした」
 須田はミツオの問いには答えない。「博士はどこにいる」
「さっき俺たちが乗っていた脱出ポッドを見ただろう。宇宙空間での生活が長い博士が、地球の重力に直ぐに慣れるわけがない」
 ミツオは須田に羽交い締めされている奥さんに、大丈夫かと話しかけた。奥さんは数度うなずく。身振りで返答するのがやっとのようだ。姿の見えない娘の安否は分からない。
「須田、どうしてこんな事をしたんだ」
「どうして?ミツオさん、あなた博士と話をしたでしょう。動機は理解しやすい話のはずだ」
 そのときミツオの背後の扉が開く。博士が這いつくばってここまで移動してきた。
「妻を離せ」
「お久しぶりです博士」
 博士の姿を確認した須田は満足げに言葉を続ける。
「私は何度もそちらに伺う打診をしました。ことごとく無視されたあなたの罪は重い。要求は、私への行いすべての公表です」
「……」
 博士は沈黙した。その姿を見た奥さんがたまらず口を開く。
「須田さんから経緯を聞いたわ。紙と鉛筆を持って、新たな研究をゼロから始めればいいじゃない」
「もう発表ずみだ」
 博士が須田の目を見て返答する。 状況の分からない須田が困惑の表情を浮かべる。

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