我が家で、最後に酌み交わした時。
「笠木さん、何にしますか?」
と、問うた。
「マッコリはあるか?マッコリがいい」・・・
そのとき呑んだ、マッコリを、酒の冷蔵庫から出して、呑んだ。
彼とはまったく違う、甘口の酒は、やはり、民族の味がした・・・・
浮かんで来る言葉は、民族の酒のような重さもなく、浮かんでは宙に消えるのだった。
追悼
・・笠木 透 という一本の木・・
人類を語るその口元には
まわりの人々を迷子にしてしまうあやうさがあって
気楽に歌なんぞ唄って暮らしていると
「歌ったいじょう そのように生きろ」などというものだから
気楽にうたっていたものは うかつに歌えなくなってしまっていたりするのだった
やがてその男が死んで
まわりのみんなは池の鯉のように
口をぱくぱくさせているだけだっのだが
ところがその男成仏していないらしく
夜な夜な みんなのところにやってきて
「名もない人々よ 歌え 唄え うたえ」なんていうものだから
みな おちおち 死んでしまった彼をしのんだり
生きていたときをつまみに酒をあおるひまもなく
ギターなど引っ張り出してお経みたいに
悲しみのうたを空にあげる以外になかったりするのだ