時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

記憶

2010年03月30日 | 
今日は娘の1歳半の定期健診でした。学校での仕事を3時過ぎに切り上げて小児科医へ。今回は予防接種があるはず。部屋へ入ると看護師さんが「今日3種類射ったら、あとは4歳までありません」とのこと。ドクターの診察が終わり、最後に注射。当然、痛いので娘は大泣き。がんばったね、と看護師さんに動物の本と小さなプラスチック製のクマをもらって、服を着せて部屋を出ると、気持ちが切り替わってニコニコ。

これで一件落着かと思ったら今日はちょっと違いました。風呂は私が入れるのですが、それまではいつもの通りご機嫌だったのに、服を脱がせたとたん、注射跡に貼ってあるバンソウコウを発見してまた泣き出したのです。いつもは水遊びに興ずるのに今日は何もせず抱きついてまだメソメソ。もはや痛むわけでもなかろうし、たぶん、痛かった、怖かった今日の注射のことを思い出して悲しくなったのかと。風呂から出て服を着るまではずっとメソメソ。ベッドでもいつもよりぐずぐず、ちょっと寝つきが悪かった。

今のところ歯磨きも大嫌いですが、終わって水を飲むとたいていケロッとしてすぐ遊びだす。いいことも嫌なこともだいたいその場限りだったのですが、どうやら今日の注射のことは忘れなかったらしい。よほど強烈に嫌な思い出だったのかもしれないけど、記憶がより持続する(想起できる)ようになったのかも。発達の一つのあかしで、いいことなのかもしれませんが、思い出して泣いてる様子を見るのは切ないものでした。

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ところで、診察の最初に質問紙を渡されました、いつもの通りの認知・運動能力の発達チェックと、今回はもう一種類「Autismに関するチェック」とタイトルに書いてあるもの。30くらいの項目、にYes、Noで答える。娘は問題なし。ニョーボは「ストレートに自閉症チェックですよと伝えてくることに驚いた。日本だとこういうやり方はしないのでは」と。

画像が看護師さんがくれた本の表紙。メトロポリタン美術館のコレクションから動物の子どもが描かれた作品を選んだものらしい。出版データは以下。

William Lach (ed.)
Baby animals: little ones at play in 20 works of art.
2007, NY: The metropolitan Museum of Art.

むすんでひらいて

2010年03月29日 | 
娘は1歳半になり、認知能力も上がり、遊びの種類も増えてきました。その一つが手遊びうたで、「むすんでひらいて」はいっとき大流行。一緒に手をたたいたり、上げたりするので、「まーた開いて」のところで、「股を開く」(牧伸二!)動作を見せるようにしました。狙い通り、寝転がった状態でこれをやると、そのタイミングで足を開いて上げます。ニョーボは眉をひそめてますが私は大喜び。いつ「父は私にみっともないことを教え込んだ」と気づくのか、楽しみです。

少しずつ使う言語メッセージが増えてきました。まだちゃんと発音できないためか、「っこ」(抱っこ)、「も」(もっと)など、単純化が目立つ。英語の絵本でも、「Where is the dog?」と言ってもポカンとしているけど、「犬はどこ?」というと即座に指差すので、日本語の習得が進んでいることは間違いないのですが・・・

日本人(の顔をしている人)には、手を横に振るけど、西洋人の顔をしている人には、手をひらいたり閉じたりして挨拶をする。また、週2回遊びに行く公民館で、しばしばものの取り合いになりますが、そこではアメリカ人の子どもばかりだからか、ふだんは使わないくせに「No~」のような音声を発して拒否するらしいのです。

つまり、場面(と相手)の違いを認識して、表現を使い分けているフシがある。周りがそうするからそれを真似ているだけ、ではあるんでしょうが、それを習得して使い分けているわけで、使えるメッセージのバリエーションがごく限られてはいるものの、一種のバイリンガルっぽく見えるのです。この先どうなっていくのか、ちょっと興味深い。

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娘が男性を怖がる、と聞いて、知り合いのジェンダー研究の院生が興味を持ち始めました。彼の分野では「性差の認識はあくまで後天的に獲得されるもの」(構築主義ですね)とされているからだそうで、男性のほうが怖いという認識が生得的に備わっているとすれば大問題、ということらしい。思えば、父親(私)以外、男性と関わる機会が少なかったのも事実で、「慣れないから怖い」だけかもしれない。でも一方、うんと小さいころから、しばらく会わなければ父親を見てさえ泣き出してたのも確か。サル社会の、ハーレムを乗っ取ると別のオスの子をみんな殺す、なんて話を考えても、「見慣れないオスは危険」という認知が生得的にあってもおかしくないような。ただ、面白いテーマだけど、本当に研究するとなると、条件のコントロールが難しそう。

写真は、昨日Marcaというスペインのスポーツ新聞のWebを見ていて出てきた、アトレチコ・マドリーのフローレス監督。一緒に画面をのぞきこんでた娘が、この写真を見た途端、1mくらい後ずさりして泣き顔になったので、すぐページを変えました。

サマータイム開始

2010年03月15日 | Bloomingtonにて
今日からDST(=Daylight Saving Time、サマータイムをアメリカではこう言う)が開始。まだ慣れてないようで、一時間遅く起きることになると勘違いしてたのですが、その逆。一時間早く、たとえば昨日までなら6時だと言ってたところで起きて、7時だと言う、ということでした。サマータイムを設けるかどうかは州の自由だけど、設けるなら3月第二日曜からでなければダメ、というのが合衆国全体の決まりだそうです。

もともと東海岸時間帯のいちばん西にあるインディアナ州は、夜が明けるのも日が暮れるのも遅いのに、サマータイムになるとさらにずれる。おかげで明るくなるのが8時ごろに逆戻り、夜は暗くなるのが8時近く。いずれ、夜9時過ぎにやっと暗くなる、という時期が来る。みんな子どもを寝かせるのに苦労するそうです。うちの娘、とりあえず今日はいつもどおり(というか昨日までのタイミングどおりなら一時間早く)寝てくれました。

こういうこともあってインディアナ州は数年前までサマータイムを施行しなかったんでしょうか。でも、夏は朝が涼しくて活動しやすく、夜が遅くまで明るいので外で遊べて、悪くない。ちょっと極端だけど。時間帯の東に出っ張ってるせいで、夏にやたら夜が明けるのが早い(で、朝からめちゃくちゃ暑い)日本こそ、サマータイムを導入するメリットがあると思うのですが。

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実施していない日本とは、これで時差が13時間に減りました。また、開始が遅いヨーロッパ諸国とも一時的に時差が縮まった(のかな? やっぱりわからん)ため、ヨーロッパのサッカーの試合がふだんより一時間早く開始。ESPN2の気紛れ(?)で放送された、スペインリーグの試合をTV観戦。なんと! バルセロナ対バレンシアという好カード。バルサの試合を(インターネットのクリップじゃなくて)TVで見るのは、去年6月にヘルシンキでチャンピオンズリーグの決勝戦を見て以来。

バルサはアンリが入って明らかに良くなって、後半は圧倒、3-0でバルサ勝ち。私が喜んで雄叫びをあげるので、娘がびっくりして逃げ回ってました。メッシの神業ハットトリックには恐れ入ったけど、バルテスのセーブも見事、足元の技術も合わせれば今の代表正GK、カシジャスよりいいのでは。今年のW杯は間に合わないだろうけど、そのあとはチャンスが来るかも。

とサッカー情報を追ってると、「ベッカムがアキレス腱を切ってW杯絶望」というニュース。なんと気の毒な。W杯は、どこが勝つかとかいうことより何より、出られそうな選手がみんなコンディション良く迎えて欲しい。オランダのファンペルシもぜひ怪我から復帰して、あの好調を取り戻して欲しいし、今後、たとえば1998年のピレス(←訂正、2002年でした)とか、2006年のルーニーみたいに、出られなかったり、怪我でぎりぎりだったりという選手が、一人でも少ないといいなと。

イングランドは、プライベート問題(テリーやコール)とか、怪我(オーウェン、ベッカム)とか、問題が出まくり。でも意外とこういうことがあると、結束が固くなっていい結果が出たりして。監督はいいし。ルーニーすごいし。今回もダメだろうと思ってたんですが。

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前回の記事のハナシ、t検定とWelchのt検定の違いが教科書に載ってたので、Rで計算させて確認してみました。冒頭のグラフ、赤がWelchのt検定、青がふつうの(等分散を仮定する)t検定。それぞれ、x軸が一方のグループの分散、y軸の値が、2グループの平均の差に関するp値。サンプル数が多いほうのグループが分散が大きいと(左)、t検定はp値を大きめに算出する(検出力が落ちる)、サンプル数が少ないほうのグループが分散が大きいと(右)、t検定はp値を小さめに算出してしまう(誤って有意な差を導きやすい)ということで、「ともかくWelch使え、ふつうのt検定はやめろ」ということだそうです。

t 検定するべからず

2010年03月11日 | Indiana大学
今学期は自分の所属する言語学科ではなく、統計学科のアシスタントをしてます。仕事は宿題の採点のみ。とはいえ教科書を読み、週3回の授業に出て、宿題を解き、45人分の採点をするのはかなりしんどく、規定どおり週20時間くらい費やしてるのでは。

授業はIntroduction to Staticsというタイトルで、大学院生向け入門。もちろん採用してもらったからには、コイツは大丈夫という判断があるわけですが、教えられる内容全てを完全に知ってるわけはなく、はじめて知ることも多々。

さて今日の授業。おなじみ「Studentのt検定」の講義でしたが、担当のTrosset先生が大学院生(UC Barkeley)だったときに授業で聞いた話を教えてくれました。高名な(という話の)Erich Lehmann教授が「この授業でこれだけは記憶に残して欲しい、ということを挙げるなら『t検定はやってはいけない』ということです」と言ったのだそうです。

この発言に学生だった先生はたまげたそうですが、理由はというと、Gossetによる提案以降、フツーのt検定の「2グループの分散が等しい」という仮定がまずく、その仮定が怪しいときに検定のパフォーマンスが著しく落ちることが検証されている。そもそもこの等分散の仮定がいかんワケで、それを前提とした(フツーの、等分散を仮定する)t検定はほぼいかなるときも避けなさい、ということだそうな。だから、それでも母集団が正規分布と仮定してオッケーなら、等分散を仮定しないWelchのt検定やりなさい、と。そういえば、日本の統計学者のWebsiteでも、Welchのt検定のほうが望ましい、という意見が主流になってるという情報をみつけたことがあるような。

でも、思えばt検定をしてる論文なんていっくらでも見る。たいてい自由度がキリのいい数字だから、Welchじゃあないんでしょう。そんな中に、実は等分散の仮定が不適切で、さらにp値が有意水準ぎりぎりで、Welchのt検定やったら、結果がひっくり返る(帰無仮説を棄却できなくなる)なんてケースがたくさんあったりして。今後、論文を読むとき気をつけてみようと。

自分自分でも、研究助手をしてたときなんかに、t検定をやたらたくさん実行しましたが、よくないということらしい。t(15.78)=2.12なんていうふうに自由度が半端になって、分かりにくい(分かってもらいにくい)かもしれないけど、Welchの方法をやるべきでした。

もう一つ面白かったのは、Welchの方法を選ぶケースで、両グループの分散を別個に推定した場合、平均値がどんな確率分布に従うか、まだ明らかにされていないというお話。(自由度を調整した)t分布を使うのは、経験則による近似だったんですね。宿題は、Rを使って解くことが推奨されてます。画像は私の作業結果。

睡眠時無呼吸症候群と夢

2010年03月07日 | 
昨日の夜の夢のこと、娘を抱っこしてTVを見ていました。殺人シーンが始まり、天井裏から悲鳴、天井から血が滴り落ちてくる。いつの間にかTVではなくその場に居合わせている。気がつくと天井が崩れ落ち、中からは血にまみれた首がぶら下がる。で、滴り落ちてくる血が目の前の女の子(知らない人)の顔にボタボタと落ちるのを見てゾッとしてるところで・・・目が覚めました。どうやら、寒かったからこんな夢を見たらしいけど、怖すぎ。

ここのところ半年以上、英語のPodcastをダウンロードして聞いています。いろいろ試したのですが、いまでも聞くのはScience、NPR Science、BBC Science、Scientific Americanとぜんぶ科学関連。興味が偏ってるので。Scientific Americanのものには、最後に「デタラメはどれ?(Totally~ bogus)」という楽しいクイズがあって、4つの科学上の新しい知見のうち全くのデタラメを当てましょう、というコーナーがあります。この間聞いたものに夢に関連して興味深いものがありました。

睡眠時無呼吸症候群の人はNightmare(悪夢)を見る確率が低い、というのです。理由はどうということはない。この症候群の人はよい眠りが得られず、レム睡眠が少なくなるので、覚えているような夢を見にくい、ということだそうです。(それでリクツに合ってるのか? 睡眠が浅くなったら夢を見るような気もするけど・・・)

私はこの症候群に当てはまります。いびきをよくかくし、睡眠時無呼吸状態に陥って、ニョーボを心配させることもしばしば。ですが、怖い夢をよく見るのです。以前見た夢では、寝転がっていたら眼下の谷底を子供が歩いていて、ちょっと目を離してもう一度見たら全員白骨死体になっていた。さらに、その白骨が突然起き上がって、ハンマーかなんかで殴りかかってきた、なんてのもあります。うなされてたそうです。(その他、多数・・・)

こういう研究結果は、「平均的には・・・」というものであって、個人のバラツキはあるに決まってるわけですが、どうせなら研究結果にあてはまる傾向になってくれないものか。ちなみに、そのPodcastのホスト、Steve Mirskyさんは最後に「もちろん、だからといって睡眠時無呼吸症候群のほうがいい、ということではありません」と付け加えていました。

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引越しを考え始めました。4年住んだ今のアパートも、写真のような光景(リス3匹)がしばしば見られて、気に入ってはいるんですが。