羽生二冠(2012年1月現在)の本を読んでみました。どうしても以前記事にした渡辺明竜王の本と比較して読んでしまうのですが、両者はかなり対照的。こちらの方は、本に構成・構造がない。いちおう5章に分けられていますが、それぞれがまとまった内容を論じている訳でもなく、章を追うにつれ、話が展開していくわけでもない。なんとなく始まって、どこに着地するでもなく終わります。
『決断力』というタイトルになってはいますが、それが全体を貫くテーマ、というわけでもなく、著者が考え、実行してきたこと、それに対するコメントなどが雑多に、つぎつぎに述べられる。もちろん、鋭い指摘、洞察や、彼の経験や実績に照らしたときに味わい深い教訓がちりばめられてはいますが、誰に向けて、何のために書かれたのか、最後まで不明のまま。
羽生さんはここ20年ほど、ずっと棋界の第一人者で、CMにも出るような有名人。将棋界の外の世界から講演に呼ばれることも多いようで、人前で話すこと等には慣れも経験もあるのでしょうが、少なくともこの本に関しては、論理的に、まとまった内容を構築しようという考えはないように見えます。「将棋の楽しさを伝える」という明確な目的を達成すべく、きっちり構成された、渡辺さんの本とは全く異質。今の羽生さんに求められるものがそもそも違うのかもしれませんが、それだけではなく、一貫した内容とか、構成とか、そういう「細かいこと」にあまり興味がない人なのではないか、渡辺、羽生両氏は人間のタイプそのものからして、けっこう違うんじゃないか、という気がします。
というわけで、端的に言えばこれは『論語』みたいな本。羽生さんの容貌とは異なりますが、豪放磊落なエライおっさんが、思いついたことをあれこれ適当にしゃべる、追っていくと同じ内容の繰り返しもあるし(ある)、ある部分とべつの部分では矛盾しているかに見える発言さえある(ホントにある)。でも、それぞれの発言には(たぶん)深い洞察・教訓が見出せる、と。「それなら論語みたいに、何度も読んでみるといいのか」と、もう一度読んでみましたが、やっぱりよく分からない。初見の印象を確認しただけ。ということで、記事のタイトルになりました。
もちろん印象的な箇所はいろいろあって、とくにおもしろかったのが、彼が獲得賞金にはほとんど興味がない、と言っていることです。ずっと他の棋士を遠く引き離す賞金獲得額を続けている彼がそんなこと言っても、「十分もらってるからでしょ」と言われてしまうかもしれませんが、この本全体から受ける羽生さんの印象から推察すると、本当にそうなのではないかと思えます。言いたいことはなんだかよく分からないけれど、この人がなぜずっとこんなに勝ち続けているのか、だけはなんとなく分かる、そんな本でした。
『決断力』というタイトルになってはいますが、それが全体を貫くテーマ、というわけでもなく、著者が考え、実行してきたこと、それに対するコメントなどが雑多に、つぎつぎに述べられる。もちろん、鋭い指摘、洞察や、彼の経験や実績に照らしたときに味わい深い教訓がちりばめられてはいますが、誰に向けて、何のために書かれたのか、最後まで不明のまま。
羽生さんはここ20年ほど、ずっと棋界の第一人者で、CMにも出るような有名人。将棋界の外の世界から講演に呼ばれることも多いようで、人前で話すこと等には慣れも経験もあるのでしょうが、少なくともこの本に関しては、論理的に、まとまった内容を構築しようという考えはないように見えます。「将棋の楽しさを伝える」という明確な目的を達成すべく、きっちり構成された、渡辺さんの本とは全く異質。今の羽生さんに求められるものがそもそも違うのかもしれませんが、それだけではなく、一貫した内容とか、構成とか、そういう「細かいこと」にあまり興味がない人なのではないか、渡辺、羽生両氏は人間のタイプそのものからして、けっこう違うんじゃないか、という気がします。
というわけで、端的に言えばこれは『論語』みたいな本。羽生さんの容貌とは異なりますが、豪放磊落なエライおっさんが、思いついたことをあれこれ適当にしゃべる、追っていくと同じ内容の繰り返しもあるし(ある)、ある部分とべつの部分では矛盾しているかに見える発言さえある(ホントにある)。でも、それぞれの発言には(たぶん)深い洞察・教訓が見出せる、と。「それなら論語みたいに、何度も読んでみるといいのか」と、もう一度読んでみましたが、やっぱりよく分からない。初見の印象を確認しただけ。ということで、記事のタイトルになりました。
もちろん印象的な箇所はいろいろあって、とくにおもしろかったのが、彼が獲得賞金にはほとんど興味がない、と言っていることです。ずっと他の棋士を遠く引き離す賞金獲得額を続けている彼がそんなこと言っても、「十分もらってるからでしょ」と言われてしまうかもしれませんが、この本全体から受ける羽生さんの印象から推察すると、本当にそうなのではないかと思えます。言いたいことはなんだかよく分からないけれど、この人がなぜずっとこんなに勝ち続けているのか、だけはなんとなく分かる、そんな本でした。