時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

Speech Jammer 試作品

2014年01月03日 | ことば
以前、「話をやめない人の発話を邪魔する」装置、Speech Jammarのニュースを見つけて、「ほしいなあ」と言う記事を書いたのですが、その年、開発した研究者の方がイグ・ノーベル賞を取りました

おととい記事にした Rhett & Link のビデオを、昨日も見ていたら、この装置のことを取り上げた回がありました。"How to make someone sound like an idiot" という回で、その年のイグ・ノーベル賞発表を承けて作ったものですが、二人がスポットを当てたのは Speech Jammer。

面白いのは、Rhettがこの装置と同じ効果を生じさせられるシステムを自作してテストした場面。Rhettの説明によると、マイクから入ってくる音声にディレイを発生させ、原音をミュートし、密閉ヘッドホンでディレイのほうだけを大きい音で聞かせる、というもの。相棒の Link がこれを装着して「好みのアイスクリーム」について語ると、さっそくドモリ、もつれ、乱れまくり。Rhett 爆笑。Rhettもやってみますが、もっとめちゃくちゃ。自主隔離の2Fで、一人爆笑しました。

iPhoneか何かで使えるアプリケーションが早くも開発・頒布されているようですが、これも Rhett の試作品同様、ヘッドホンを使うらしい。話している人に接触することなく、その人に向けるだけ、というオリジナルのような装置でないと、「話をやめない人の発話生成を乱して、自覚させる」という開発の目的には使えないので、これは本当にお遊びですね。

似た顔夫婦

2014年01月01日 | 
教材を探していて、Good Mythical MorningというYouTubeの番組に行き当たりました。ホストのRhett & Linkという2人組は、インターネットを中心に、いろんなメディアで人気者になっているらしい。二人のとぼけた表情や動きを見ると、私にはセサミストリートのアーニーとバートが浮かびます。見つけたのは"Why Couples Look Alike"という回。ともかく面白い(と思う)ので、見ていただければいいんですが、番組が典拠とした論文も見つかりました。ちょっと古いので、その後、異なる主張もされているかと少し調べましたが、有力そうなものは見つけられず。

R.B. Zajonc, et al. (1987). Convergence in physical appearance of spouses. Motivation and Emotion 11(4): 335-346.


いわゆる「ネタバレ」になりますが、問題とされてるのは、「どうして夫婦は似ているのか」ではなく「似てくるのか」。当然ながら私は嫁さんの顔が好きで、夫婦が似てくるらしいことも経験的に気づいていたので、「(あまり好きではない自分の顔には)似ないで欲しい」と思っていましたが、Zajoncたちの結論によると「仲がいいほど似てくる」ということになるので、兄弟のような老夫婦を目指すことにしました。この逆で、弟と私は、両者の嫁さん(!)に「どうしてそんなに違うの」と言われるのですが、これも"Kin resemblance,......, may not be simply a matter of common genes but also a matter of prolonged social contact"というZajoncたちの主張(の裏返し)に当てはまりそう。

このメカニズムについて、2人組の一人Linkは emotional mirroring と表現。相棒のRhettもほめているように、なかなかうまい言い方だと思うのですが、一方、ミラーニューロン発見以前のZajoncたちが empathy という概念を持ち出しているのも、私が知ってる狭い範囲でも、Franz de Wahl が empathy をミラーニューロンの働きと結び付けていることなんかを考えると( The Bonobo and the Atheist)、既にいい所を突いていたように見えます。

ついでに、番組内でRhettが similar を simpler と発音してLinkに指摘される場面があります。この2人組がそういのを特集してる回もあって、ネイティブもけっこう間違って覚えてることが具体的に知れて興味深いのですが、この similar > simpler の場合は、記憶違い等による誤りというより、 Thomson から Thompson が生じるようなタイミング調整のずれに聞こえました。