サダム・フセインが処刑された翌日です。昨晩はTVでも特報、私はNPRの速報Liveを聞きました。「イラクの人たちは歓迎しているのか」というキャスターの問いに、現地ジャーナリスト(?)が「いま、<イラクの人>とひとくくりにできるような人はもはや存在しない。受け止め方もそれぞれのグループによって全く違う」と答えていたのが印象に残りました(ってか、そこが聞き取れた)。あの国は解体しちゃってどう収拾がつくのか分からないということか。
本を一冊紹介したいと思います。P553 Advanced Statistics in Psychology I(担当John Kruschke教授)の教科書。授業と平行して読むことになっていましたが一部読み残しがあり、きのう最終章を読み終えました。
Arthur Aron, Elaine N. Aron & Elliot J. Coups
Statistics in Psychology, 4th edition, 2005, Pearson Prentice Hall, Upper Saddle River, NJ.
多くの大学で学部~大学院初級の心理統計学の教科書に使われているようです。Amazon.comの評判では星3つであまりよくありませんが、私は評価したいです。Amazon.co.jpには2002年の3版の情報しかありませんでしたが、買うならぜひ4版。
内容は記述統計~推測統計、t検定、分散分析、ノンパラメトリック検定、最終章が一般線形モデルのイントロ&ちょっと多変量解析の紹介、と基礎的。予備知識を全く前提とせず、一つ一つ懇切丁寧に書いてあり、700ページ以上と分厚いけど、すらすら読める。
一方、Advanced topicというのが各章にあり、「この章の内容について、まだこういうことが議論されている」というような解説が加えられていて読み応えあり。最後の章がまた面白かったので紹介します。囲み記事にFisher(推測統計を作った)対Pearson(Karlの息子)とNeymanとの論争史の紹介があり、それを踏まえて、
「皆さんがこの本で習った現在主流の統計手法は、この対立する二勢力の議論の解決見ないまま、両者を適当につぎはぎして使っている状態だといえます。この理論的矛盾を再検討する機運があり、この本で習ったことはいずれ乗り越えられる可能性があります。だから、現時点の技法を絶対視せずに、新しい技法が興隆したら積極的に学びなさい。」
理解の範囲ではおおよそこんなことを言っています。
15週間みっちり習ったことを最後に否定されてはたまったものではない気もしますが、(自分の分野と同様に)つねに変化を続ける統計学の「現時点」に完全に寄りかかり、それによって得た結論を信じ込むのは学問的にいい態度ではないということでしょう。10章に「統計学がたんなる手法にとどまらず、研究対象理解のモデルを提供している部分がある」という記述があり、確かにそうだと思います(行動を決定するのは「性格」か「状況」かという研究史を例にしたここの記述も面白い)。そうなるとますます、ある段階で「道具としての統計の勉強は卒業」とは言えない。自分の研究対象理解の限界を自ら定めてしまうことになるのですから。なかなかきついものです。
写真は今月初めに撮影した学校近くのSigma PhiというFraternity。誰が電気代払うんだか、Thanksgiving以降ずっとこういう状態でした。でも、学期が終わると空っぽになる(いてはいけない)ので、今はみんなひっそり。地元民と留学生しかいない静かな年の暮れです。
本を一冊紹介したいと思います。P553 Advanced Statistics in Psychology I(担当John Kruschke教授)の教科書。授業と平行して読むことになっていましたが一部読み残しがあり、きのう最終章を読み終えました。
Arthur Aron, Elaine N. Aron & Elliot J. Coups
Statistics in Psychology, 4th edition, 2005, Pearson Prentice Hall, Upper Saddle River, NJ.
多くの大学で学部~大学院初級の心理統計学の教科書に使われているようです。Amazon.comの評判では星3つであまりよくありませんが、私は評価したいです。Amazon.co.jpには2002年の3版の情報しかありませんでしたが、買うならぜひ4版。
内容は記述統計~推測統計、t検定、分散分析、ノンパラメトリック検定、最終章が一般線形モデルのイントロ&ちょっと多変量解析の紹介、と基礎的。予備知識を全く前提とせず、一つ一つ懇切丁寧に書いてあり、700ページ以上と分厚いけど、すらすら読める。
一方、Advanced topicというのが各章にあり、「この章の内容について、まだこういうことが議論されている」というような解説が加えられていて読み応えあり。最後の章がまた面白かったので紹介します。囲み記事にFisher(推測統計を作った)対Pearson(Karlの息子)とNeymanとの論争史の紹介があり、それを踏まえて、
「皆さんがこの本で習った現在主流の統計手法は、この対立する二勢力の議論の解決見ないまま、両者を適当につぎはぎして使っている状態だといえます。この理論的矛盾を再検討する機運があり、この本で習ったことはいずれ乗り越えられる可能性があります。だから、現時点の技法を絶対視せずに、新しい技法が興隆したら積極的に学びなさい。」
理解の範囲ではおおよそこんなことを言っています。
15週間みっちり習ったことを最後に否定されてはたまったものではない気もしますが、(自分の分野と同様に)つねに変化を続ける統計学の「現時点」に完全に寄りかかり、それによって得た結論を信じ込むのは学問的にいい態度ではないということでしょう。10章に「統計学がたんなる手法にとどまらず、研究対象理解のモデルを提供している部分がある」という記述があり、確かにそうだと思います(行動を決定するのは「性格」か「状況」かという研究史を例にしたここの記述も面白い)。そうなるとますます、ある段階で「道具としての統計の勉強は卒業」とは言えない。自分の研究対象理解の限界を自ら定めてしまうことになるのですから。なかなかきついものです。
写真は今月初めに撮影した学校近くのSigma PhiというFraternity。誰が電気代払うんだか、Thanksgiving以降ずっとこういう状態でした。でも、学期が終わると空っぽになる(いてはいけない)ので、今はみんなひっそり。地元民と留学生しかいない静かな年の暮れです。