時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

今年やった仕事

2005年11月29日 | フィールドワークから
今日は本年度の仕事を報告します。とはいえ、このBlogのタイトル通りではなく、東北でやったものは一つしかありませんが。

(論文)
1) 吉田健二「韓国語のDenasalizationの音声実態と韻律の影響」アクセント史資料研究会編『論集I』
2) Donna Erickson, Kenji Yoshida, Caroline Menezes, Akinori Fujino, Takemi Mochida & Yoshiho Shibuya, Exploratory study of some acoustic and articulatory characters of sad speech, Phonetica 62
3) Kenji Yoshida, On gradualness and discreteness of sound change, Proceedings of Linguistics and Phonetics 2002

(ポスター発表)
4) Kenji Yoshida, The uniequeness of level register of the Ibukijima-island dialect in Japanese, 80th annual meeting of Linguistic Society of America, Albuquerque.

 (1)は日本を出る直前に提出したもの。今年の1,2月にやった実験結果です。韓国語の鼻音が(おおざっぱに言って語頭で)濁音っぽくなるのをご存知の方も多いと思います。鼻音が弱まっている、あるいは鼻音じゃなくなっているように聞こえます。これについて、もう10年も前に言語学会で発表したのですが、そのときは弱まるのか、なくなるのか、どういう条件だとどの「程度」弱くなるのか、測定できませんでした。今回は、鼻音だけを独立に測定できる実験装置を使えたので、韻律条件による変化の実験結果を書きました。韻律的境界が強いほど鼻音は弱化するが、消えるわけではない。また、韻律的境界の強さによる持続時間変動とは関連がなく、持続時間とは独立に鼻音弱化自体が積極的な制御を受けている可能性が高い、という結論。母音による違いのデータも録音してありますが未分析。今後やるつもりです。

 (2)はDonna Ericksonさんが中心の論文です。泣きながら話しているときの音響・生理上の特徴について日本語と英語でほぼ同じ実験を行ったものです。重要な知見は、「本当に泣いているとき」と「悲しい真似をして話しているとき」の特徴が、はっきり違うこと。音声に込められた感情を調べるとき、真似の音声を使ってはいけないことを示唆します。去年、NTT通信研究所(厚木)で、日本語の実験をたまたま手伝い、そのまま分析などもやらせてもらいました。去年の音声学会全国大会で発表し、そのあと論文にした、というものです。

 (3)が東北でやった調査をまとめたもので、2002年に明海大学で開催されたLP2002という学会で発表したあと、論文にして提出してあったもの。ある事情で出版が遅れていたものが年末に出版予定とのこと。共通語アクセント獲得(ここでは2モーラ無核語の、秋田のLLから東京のLH)が、単に2種類のピッチパターン(LL、LH)の取替えとして進行する(音声レベルでdiscreteな変化)のではなく、それを引き金として、LLがLHに近づいていく、音調の連続的なシフトが起こる(音声レベルでgradualな変化)という趣旨です。

 ちなみに、Sociolinguisticsの授業で、全員授業に関わりのあるテーマで発表せねばならず、「言語変化」がテーマの回に、これをPowerPointのスライドにして発表。Auger先生がリハーサルを聞いてアドバイスをくれたのでずいぶんと整理ができて、英語が心もとない私も何とか発表を終えられ、今後に向けて少し自信がつきました。

(4)は来年1月のアメリカ言語学会のポスター発表です。先日記事にしました。対象は、方言アクセント研究者の間では有名な、平安時代に区別された2拍名詞アクセントの5つの区別を唯一保持する、伊吹島アクセントです。この方言でもう一つ重要なのが、これまたここにしかない、3種類の「式」の対立です。このうち議論の的となる「下降式」については以前紹介した(8月13日)、Project Aのメンバーが現在研究しています。私は、これと対立する「平進式」(東大の上野先生の用語)が「実際には少し下降する」が、他の(式が2つだけの)方言の「平進式」とは「下降の斜度」「持続時間との関係」いずれも違う、全くユニークなものだ、という実験結果を報告します。

 まだ今年は終わっていませんが、まだ1年目の学生なので、これで終わりでしょう。気が向いたらちょっとでもご覧いただければ幸いです(もちろん、「読んでやるから送れ」という方があれば、ぜひご連絡ください)。もうすぐ12月、授業も試験期間をのぞくとあと2週間で終わりです。

教会で感謝祭

2005年11月25日 | Bloomingtonにて
今日はThanksgiving。国民的行事ということで、さすがに大学も今週は水曜から休み。たいていの人は帰省するそうです。キャンパス街であるBloomingtonはがらがら。今日はバスも前面運休。普段は24時間OPENの図書館すら休館。「こんな日くらい家族で過ごせ!」ということでしょうか。(Maine州からIU言語学科に来たAndrewは「ほんの数日のためにえらく金がかかるから、帰らない」と言ってました。何してるんだろう...)

 どこへ行く足もないので、ずーっとアパートにいて、伊吹島の長ーい音声ファイルを、1データ単位に小さく切り刻み、名前を付けては保存する作業に明け暮れました。昼間クロスカントリーコースを走りましたが、すぐ隣のIUゴルフコースも、今日はだーれもプレイしていません。静か。

 夕方からは教会の感謝祭ディナーに参加させてもらいました。留学生センターから案内があったので申し込んでありました。「何にも予定はない、期末レポートを書く」と言っていた、真面目なJungsunさん(前回の記事を参照)も誘って、キャンパスのはずれのUniterian Universalist Churchへ。正確に理解できていませんが、そこで会った方の説明だと、この教会は厳密にはキリスト教そのものではないそうです。メンバーには仏教徒もいるし、その他の宗教も広く認めるとか。十字架もかかっていません。

 10人ほどの留学生も含めて、全部で70人ほどの小さな集まりでした。Elizabethさんという、おそらくそこの長をしている年配の女性が最初に挨拶。われわれのテーブルに顔を出して話してくれたところによると、彼女はイタリア系移民の二世で、IUの教授だったそうです。そういうこともあって、IUの留学生を呼んでくれるんでしょう。親は北イタリアから来たのだけど、それは比較的稀だとのこと。もう一つ面白かったのは、とってもかわいい4歳くらい(?)の女の子が、なぜだかJungsunさんに興味を惹かれたらしく、にこにこしながら彼女だけをずーーーっと見ていたことです。

 教義はともあれ、移民時代からの風習ということで、ここでも感謝祭の定番、ターキーがメイン。その他、マッシュポテト、サツマイモのペースト、クランベリーソース、ブロッコリのサラダなどなど... さらにデザートのパイが10種類くらい。自分で好きなものを取ってきて食べます。写真は、私が取ってきたもの。ターキーは端っこ(画面上の方)にちょっとだけ。参加させてもらっておいて失礼ながら、全体的に、意外と美味しい(期待してなかったので)。ちゃんとDonationの箱に(ちょっとだけ)お金も入れてきました。

 食事しながらテーブルに同席してくださった家族とお話し(父・息子・おじさん・おじいさん・おばあさん。お母さんがいません。推測ですが、離婚したんでしょう)。息子のIanくんは高校生、日本語を習っていて、日本に留学したいのだそうです。興味があるのは、またもやビデオゲーム。。。 日本語学習サークルにいるアフリカ系のJoeは日本人の彼女が欲しいとずーっと言っているらしいし、言語学科のNathanも日本に詳しい(10/28の記事参照)、去年イリノイの学会のとき泊めていただいたMcWilliams家の男の子も、日本のマンガが好きで、日本に留学していました。日本、思ったよりは関心持たれているかも、という気がしてきました。

 学生ということで専門分野などについても尋ねられ、その家族のJeffersonさんというおじさんは、さらに、韓国・日本のつながり(民族・言語両面)の話をJungsunさんと私がしているのにも興味深そうに聞き入って、質問したりしてくれました。これが典型的な感謝祭ディナーということではないのかもしれませんが、カジュアルでいい集まりでした。

 バスがないので、行き帰りともに歩き。今日はこちらに来てから一番の冷え込みで、今-11℃です。帰りはまだ7時台でしたがすでに-7℃くらい。Elizabethさんがどっさりと持たせてくれたターキーとパイを持って30分。星がきれいでした。

(教員をしていたときの学生がこのブログにコメントをくれました。久しぶりに「先生」などと呼ばれて居心地が悪いったらありません。しかし、仕事は放棄しないつもりでちゃんと定期的にメールは出していたのですが、どうして彼らのところへ届かなかったのか、謎です)

Quiet please!

2005年11月23日 | Indiana大学
昨日図書館で起こったことを書かせてください。Information Commons(PCのあるコーナー、24時間OPEN)の2階が「Quiet Floor」であることを発見したのが半月くらい前でしょうか、それからはコンピュータを使って勉強したい場合は、そこへ行くようになりました。

 そこは、「グループ学習禁止、携帯電話も切ってください」となっています。まあ、電話の電源は切らない人がほとんどですが、それでも電話がかかってくると、階段の踊り場まで行って話します。集中して勉強が出来る環境がやっと見つかった、と喜んでいました。

 で、昨日たまたま相談デスクの近くで音韻論のレポートを作っていました(ちなみにこれが8つ目、今回はイタリア語の音節構造の分析)。その相談コーナーの担当者二人(学生アルバイトです)が話し出しました。すぐやめるかと思っていたら、どうやらただの雑談だったらしく、ずっと話は止まらないし、一人がだんだん興奮してきてヒソヒソ話とはいっても、非常にうるさいのです。

 我慢ならず立ち上がり、彼らのデスク前まで行き、うるさい方に向かって「話をやめてください」と言いました(今回は日本語ではありません)。そうしたら、もう一人の人が、わざわざ私のパソコンづくへの方まで追ってきて、反論を始めたのです。

 「ここはQuiet Floorで、ヒソヒソ話(Whisper)をすることは認められているんです、あなたのためにもっと小さい声にしてあげますが、本当にSilentな環境が欲しかったら、書庫に行ってください」と言うのです。パソコン使ってるの分かってるだろう、書庫にパソコンがあるか! そもそも、お前らサービスを与える側の人間だろう。お前らが勉強の邪魔してどうするんだよ!! とこちらへ来てはじめて本気で腹を立てました。で、「ちょっと待って、そもそも図書館ってのは、静かに勉強するところじゃないんですか」というと、「アメリカでは違うんです」だそうです。。

わかったこと
1)非を認めない人がいる:まあこれはどこでもそうでしょう。でも、ただの雑談を「うるさい」と言われたのに、しかも、賃金が発生している状況なのに、ルールをたてにとって自己弁護をする態度にはあきれました。
2)英語のQuietとSilentは違う:知りませんでした... Quietの具体的なニュアンスまで、実体験で教えていただきました。勉強になりました。

 ムカムカしながら宿題を終え、一階の常勤図書館員に訴えに行きました。その人によれば「確かにWhisperは認められています。それにキーボードの音もするし、相談の声もするはずで、それは許容されています」ということでしたが、「でも、彼らは仕事の話をしていたわけではない。だから、Whisperとはいってもだんだんエキサイトしてくる。技術上の相談ならずっとは続かないし、そういう場合のWhisperはやかましいとは感じないと思う」と主張し、「その通りですね、仕事じゃない話まで認めているわけではありません。もう一度徹底するようにしましょう。」と受け容れてもらえました。

 神経質にならずここの国の「標準」に合わせる態度も必要かと思って我慢していたのですが、考えを改めます。授業料や施設費用も決して安くありません。この国の常識がどうだろうと、認められている権利だろうと、図書館には集中できる環境を提供する義務があるように思います。こっちも仕事を辞めてわざわざやってきたのです。遊びや趣味でやっているつもりはありません。今後も妥協せず主張しようと思っています。

 さて、話しと全く関係ありませんが、いつものとおり写真を一つ。前回に続き伊吹島の港です。買い物・仕事などさまざまな目的で島の外へ出る人は多く、たいていは港まで原付でやってきて連絡船に乗ります。島へ戻ると、二人乗り(ときには三人!)&ヘルメット無しで、急坂をエンジン全開で走り去ります。アメリカの図書館と違ってこのローカルルールには笑えました。

学会発表(伊吹島)やります

2005年11月21日 | フィールドワークから
10月24日の記事でちょっと書いたとおり、アメリカ言語学会の大会でポスター発表をすることになりました。先輩のNさんが「出しませんか?」と言ってくれたのでトライしてみたものが、なんとか採用になりました。以下のウェブサイトに情報があります。ご興味がある方はぜひご覧ください。
http://www.lsadc.org/annmeet/index.html

 学会は来年1月5-8日、ニューメキシコ州のアルバカーキで。私の題材は、日本の伊吹島方言アクセント。香川と愛媛の県境あたりの瀬戸内海に浮かぶ小さな島(行政区分上は「加ト吉」のある観音寺市)ですが、アクセント研究をやる人なら当然ご存知の、たいへん重要なアクセント体系を持つ方言ですね。写真は、伊吹島に二つある港のうち、対岸の観音寺港への連絡船が到着する真浦を離れていくところです。台風のあと、快晴の朝でした。

 去年の10月、東京音韻論研究会(TCP)で「伊吹島方言アクセント平進式のF0の動きについて」(亀田裕見さんとの共同発表)という題目で発表した内容が基になっていますが、De Jong先生との授業でのディスカッションを基に、今、一から分析をやり直しています。データは、松森晶子先生を中心としたグループの共同調査によるものです。この共同調査は科学研究費助成金(奨励研究)を受けて現在継続中で、今年も四国へ行きました(私はアメリカにいました)。

 内容は、もう出来る限りやるしかありませんが、英語で発表するのが恐怖。基本的には途中でツッコミがなく最後まで聞いてもらえる口頭発表に比べて、ポスターは客の出入りに合わせて伸縮自在・臨機応変にやらないといけないので、実は英語の力に関してはもっとしんどい、というのがこれまでの実感です。

 IUからは、De Jong先生がシンポジウムのスピーカーとして出るほか、言語心理学のPisoni先生、数人の院生などなどが発表します。私は2日目の午後。博士課程2年目のJungsunさんも発表するのですが、彼女は朝鮮語(韓国語)方言のピッチアクセントの研究をしていて、入学以来いろいろと情報交換をしてくれます。朝鮮語・日本語方言のアクセントの比較はおもしろいテーマで、将来は共同研究ができたらといいなと思っています。この記事を書いている最中も「日本語の母音フォルマントの論文か何か知らない?」と連絡がありました。

 彼女が方法を教えてくれて、なんとか往復の飛行機と4泊分のホテルの予約が出来ました。安売り、かつ飛行機&宿泊セットにしたのですが、そもそもアメリカのホテルは高いらしくて、合計574ドルもかかりました。あまり集金力のない分野である言語学には、学生に対する補助はあまりありません。学生の学会登録費は安いし、学会参加の補助が出る場合もあるようですが、毎回は期待できないようです。今回は自腹です。そもそも、学会会場がHotel Hyattなのです。学会は一種のお祭りで、社交の場だから仕方ないけど、痛い。。。

 でも、とりあえずどこか遠くに行けるのはうれしい。アルバカーキには、NBAのセレクションからはいったん漏れた田臥選手がいるようです。でも行くまでに昇格して「残念ながら見られなかった」となると、いいなあ。ちなみに直行便はあまりなく(たぶんあっても高いでしょう)、ヒューストンあたりでの乗り換えになります。帰りなどはむこうの空港を午後1:30ごろ発つのに、Indianapolisに到着するのは夜の8:00過ぎとのこと。

 帰ってすぐ次の日から春学期。来週の感謝祭休みも、クリスマス休暇も、分析とポスター作製で手いっぱいになりそうなので、気を安めている余裕がなさそうです。

初雪

2005年11月17日 | 
来て3ヶ月がたちました。暮らしにもだいぶん慣れ、英語もそれほど集中力を尖ぎ澄ませていなくても聞けるようになって来ました(ただし、聞き取りにくいタイプの人の話は相変わらず分かりません)。住んでいるアパートも、ようやく、自分の住処、という気がしてきました。

 去年の今頃何をしていたか、この間なんとなく振り返りました。ちょうど、何とか2回受験できたGREの2度目が終わったころでした。韓国・済州道での学会発表から帰って一ヶ月しか準備期間がなく、いったん研究の仕事を全部中断して、通勤電車の中でも寝る前もひたすらGREの問題を解いていたのを思い出します。仕事しながら受験準備をなさる方は、みなさん、こんなもんでしょうね。私は短期間ながら時間があったほうだと思います。

 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、GREはそもそもアメリカにいる、英語で育った人の大学院受験の一般テストなので、Verbal(言語セクション=英語)がとてつもなく難しい。この準備で手一杯でしたし、数学は満点を取りたかったので(取れませんでしたが)、TOEFLに割く時間はほとんどありませんでした。このあと、そそくさと書類をまとめて、この月の終わりに出願しました。あれから一年、幸いとりあえずアメリカに来ることには成功し、ここにいます。ありがたいことです。こんなことを考えるのも、過去を振り返る余裕ができるほど、とりあえず大学院生としての暮らしにも慣れてきたということでしょう。

 英語は、究極的には試験をパスすればいいだけの話ではありますが、どうせたくさん読まされる(&書かされる)ことを考えると、語彙力や速く正確に読む力は、いくらでも鍛えておくべきだと思います。現在、Assigned reading(予習としての読書)で読む本・論文に知らない単語はまだまだ出て来るので、必ず辞書を使うようにしています。

 辞書は持って出ません、持って来る人もいません。調べてるヒマもないし、他の荷物が重いので邪魔です。promiscuousという単語を言語現象の比喩として先生が使い、メモして後で調べたりしたことも。当然こんな単語は板書しないので、聞き取れなければ終わりです。文脈で何となく分かるのですが、それで済ませていると伸びが止まるだろうと思います。「もう十分」とはとても言えない状況なので、コツコツ継続せねば。

 ところで、昨日は大荒れの天気。朝から風雨が強く、雷が鳴り響き、南風が吹いて太陽も出ていないのに気温は20℃を超えました。夜になって静かになり、今日は朝から冷え込んでいます。写真はお昼すぎ、今日の授業が終わってアパートに戻ってきてから撮ったもの。雪です。ご覧いただけるように、普段より大きいサイズにしてみました。気温は昼間で2℃。。。 こんなに違う二つの空気の層がぶつかったのですから、昨日の荒天も納得ではあります。(このgooのblogに妙な機能があるのに気づきました、使ってみました)

 写真のバスはいつも通学に利用している6番の市バスです。午前中は1時間に3本来て、かなり正確なので、けっこう当てにできます。田舎町Bloomingtonの利点ですね。夜は1時間に1本、深夜12:15まであります(ただし月~金)。図書館で勉強して、これで帰ってくるわけです。

 午後5:30の続報。細かい雪(弱い)が降り続いています。車の上にうっすら積もりだしました。気温は零下1℃。リスも冬眠開始かも。

翌日の訂正です。写真、やっぱり大きすぎて本文が読みにくいと思うので、いつもの小さいサイズに変更しました。これだと残念ながら雪が降っているのが分かりませんね。ちらちら降ってるんですが。

日本語の方言を、アメリカで、アメリカ人から聴く

2005年11月15日 | フィールドワークから
珍しくコトバの話題を。(方言研究の報告が建前なのに。。。)

今日も月曜日恒例の情報学科の発表会に。今日は遺伝子学。「遺伝子の伝達構造の中で中心近くにあるものは、(1)下手に変化するとその生物にとって致命的であり、(たぶん、そのため)(2)遺伝情報の変化スピードが遅い」という話(誤解でないといいのですが)。また、「遅い」とは、調べた生物の範囲ではどれも、周縁近くにあるものの、だいたい70%くらいなのだそうです。

 今日はもう一つ、認知科学の発表会も。こちらはわが学部の音声学者、Port先生の発表。「われわれが記憶・貯蔵している言語音声情報は音韻や異音のような記号レベルのものではなく、本人の声などの詳細な情報が損なわれないままの情報の集合体であり、それが音声知覚&産出で使われるのだ」という趣旨。ここのところ有力になりつつあるExamplar Theoryに賛同する立場です。基本的には賛成なのですが、例えばピッチアクセントの同期や対立などについては、現時点では適切に説明できないだろうと思います。まだアイデアとしては萌芽的で、モデルの精緻化はこれからでしょう。

 さて、帰りは雨が降ったのでバスに。アメリカ人の男性の横に座ったのですが、図書館のところで乗ってきたアジア人らしい女性が、彼に話しかけました。会話は日本語。日本人でした。で、彼も、ちょっとたどたどしい日本語で応じるのです。話せるんですね。「日本語会話グループ」もあるし、日本語の授業もあるので、たまにいますが。

 知らん振りしながら聞き入っていると、先日の飲み会で、吐いてしまったという話。男性はそこで「久しぶりで飲んだ『けんが』...」。もちろん文脈から、「久しぶりに飲んだ『から』...(気持ち悪くなって)」という意味であることは明白。「お、方言を使う」と思って聞いていると、用例は忘れましたが、もう一度別の文脈で『けんが』を使いました。相手をしている女性は関東方言っぽいコトバ。彼女への「同調」ではないようです。

 彼がそこで使っていた日本語は、教室で習ったものというより、日本人の友達と付き合う中で習得したものでしょう。さらには、彼が堂々とそれを使っていることから、彼はそれを特殊なものとしてではなく、「友達同士で使う普通の言い方」としてとらえていることも推測できるように思います。もう一歩飛躍してよければ、この「けんが」を彼に教えた日本人も、「けんが」を、(少なくともくだけた会話で)デフォルトの形式として使用していたのだろう、と思います。

 この「けんが」のような、いわゆる「語尾」形式の方言形は健在なんだな、と想像しました。まともに研究したことが無いので自信はありませんが、伝統的な方言の文法形式はそれなりに複雑だからフルに習得して使いこなすのは困難だけど、分かりやすいものを積極的に採用して「自分たち地域の仲間うちのコトバ」らしい感じを出そうとするなら、こういうものが便利なのかなと。「けんが」のような接続形式や終助詞などは、接続が単純で習得が容易だし、比較的目立つ位置に来るので、「方言っぽい話し方」のマーカー(地域の若者にとっての、いわゆるsolidarity marker)として格好なんでしょう。もっとも関東の「べ」みたいに、接続が複雑でも単純化して使う傾向も見られるようですが。

 方言文法がご専門の方がたまたまご覧になったら恐ろしいですが、アメリカでアメリカ人が使っているのを聞いたということで、無責任に想像をふくらませてみました。ところで彼は「けんが」をどこで習得したのでしょう。九州には分布しているようですし、かれは断定形式に「や」を使っていたので、西部で間違いないと思いますが。。。 ご覧の方で「ここでよく使う」というのをご存知の方、教えてください。

 実は「ちょっとごめん。日本語、どこで勉強したの?」という質問が、喉元まで出ていたのですが、邪魔しては悪いのでやめました。まあ、アメリカにいる、九州出身の人から習得したのかもしれません。

 写真は今日の夕方研究会へ向かう途中。大学の正門(Sample Gate)からダウンタウンの方向を撮ったもの。遠くの建物の向こうに見える時計のある建物は、BloomingtonのあるMonroe County(郡みたいなもの?)の庁舎です。

Tongue-cut sparrow

2005年11月14日 | 
先週の水曜日、こちらへ来て二度目のボランティアをしました。行き先はEdgewood Elementary and Secondary School という幼稚園と小学校が一緒の公立学校。まだできて一年で、写真のとおり、きれいです。Bloomingtonのすぐ隣の、Elwoodという町にあります。

 日本でいう「延長保育」の子たちの活動の一環として、「外国語で外国のお話を聞きましょう」という時間があるのだそうです。その学校の先生がIUの留学生にときどき依頼をかけるのです。仲介は東アジア研究センターの事務局。ボランティア登録をしている学生にメールで連絡を回します。結局私しか手を上げなかったらしく、担当のMaryanneの車で、学校に向かいました。こちらに来てもうすぐ3ヶ月ですが、Bloomington市の外に出たのはこれが初めてでした。

 お話は、事務局にある(英訳つき)紙芝居の中から「舌切り雀」を私が選びました。米を煮て糊を作り、障子を貼る、など日本の文化が紹介できるな、と思ったので。当日は、小学校の子6人と、幼稚園の子17人が一緒の部屋で、座ってお話を聞いてくれました。最初は英語で。ストーリーが分かったところで、日本語の単語をいくつか勉強。教わったのは「すずめ」「じいさん」「ばあさん」「うし」「うま」「おおきい」「ちいさい」です。そして私が日本語で。勉強した単語が出てくるたびに、ジェスチャーします。「うま」なら、ひづめで地面を蹴るしぐさ、「大きい」なら手を大きく広げて、というように。

 やってみて分かったのは、子どもが引き込まれるように表情をつけて読むのはとても難しい、ということです。同じ話を2度聞くことになるので、退屈して騒ぎ出すのでは、と冷や汗をかきました。幸い、みんな静かに聞いてくれて、ふだん世話をしている職員も驚いたそうです。お話の後は塗り絵の時間。単語を習うときに使った絵に色を付けます。その塗り絵の用紙に、自分の名前を日本の文字で書いて欲しい、という注文が(主に幼稚園の子から)殺到、引っ張りだこでした。

 最初は突然やってきたアジア人を不思議そうに見つめ、中には手を上げて「この人は英語を話すの?」と聞く子もいたのですが、最後はすっかり慣れてくれたようです。あれこれ話しかけてくれました。とってもかわいかったのですが、プライバシー問題もうるさいでしょうから、写真を撮るのは遠慮しました。

 ちなみに子どもたちは全員白人(Latinoも含む)。そもそもIndiana州は白人が圧倒している地域(2000年で87.5%)ですが、IUも州立大ということもありアフリカ系はとても少ない。たまたまですが、今週、地理学科の研究セミナー(Colloquiumというそうな)があるらしく、図書館内にIndiana州の人口構成の地図が展示されていました。それによると、この州に多いのは、ドイツ系、つぎにアイルランド系でした。イギリス系じゃないんですね。その先は記憶が怪しいのですが、ミシガン湖周辺に偏ってどこかの国からの移民が集中していました。ポーランド系だったかな… 確認するため地理学科のWebを見に行きましたが、現在Colloquiumの準備の関係か、メイテナンス中で見られません。見られるようになったら、ここでリンクを紹介します。なお、Indianaという名前はあるものの、アメリカ原住民系の人は、少数派です。

 もうひとつついでに、この記事のタイトルは「舌切り雀」の紙芝居の英語タイトルですが、Maryanneの話では、日常的には「すずめ」のことはただbirdと呼ぶそうで、sparrowと特定した呼び方はしないそうです。

研究会三昧

2005年11月08日 | Indiana大学
IUのいいところだと思うのが、非公式の研究発表会がしょっちゅう開かれていることです。私は認知科学のメーリングリストに加入していて、情報学・認知科学・心理学関連の研究発表会の情報が回ってきます。今学期は毎週月曜日が情報学、水曜日の昼が認知科学、金曜日の昼に言語心理学の研究発表会があり、選んで参加しています。

今日は夕方6時から情報学科の発表会に。認知科学のTodd教授が最近の研究について1時間くらいで講演をしました。テーマが「人はいつ結婚を決断するか」とキャッチーだったせいか普段より聴衆が多く(50人を超えていました)、小さなセミナールームは一杯でした。

 内容は結婚を決断する年齢の分布(どの国でも一様に、いわゆる適齢期あたりのどこかを頂点として、高年齢側に裾を長くひく歪んだ分布になる)を再現するようなシミュレーションが出来ないか、というものでした。みんなが「最善の相手を探す」方針をとると、「いつまでたっても結婚する人がなかなか増えない」結果になるそうで、自分の価値(平たく言えば、モテるかどうか)を自覚するという「学習」が必要なのだそうです。

 そういう「自己の魅力認知」の存在はすでに社会心理学等で確認されていると思いますが、では、その学習期間をどう設定するか、というのが問題で、長く設定するほど、非常に少ない割合しか結婚に至らない、という結果になってしまうそうです。つまりよく言われる、「じっくり見定めすぎると婚期を逃す」ということが、シミュレーションでも裏付けられたということでしょうか??? その他の要因も試しているものの、現実の初婚年齢の分布を適切に再現できず、改良が必要なのだそうです。

 とても身近な結婚がテーマだけにみんないろいろと言いたいことが出てくるようで、質問が止まらず、発表者の先生はちょっとお気の毒。モデルをいったん単純化して、少しずつ要因を足してシミュレーションの精度を上げていこう、というアプローチは適切だと思うのですが。またドイツの大学との共同研究で、実際の男女を使ったお見合いシミュレーションのような実験もやっているそうです(ただし、一人ずつしか会えないし、そこで逃すと二度会えない!)

 この情報学の発表会シリーズのテーマは多彩で、この間はカブトムシの仲間の角のバリエーションから進化上の多様化の道筋を解明しようという研究がありました。どの発表会も参加自由なので、IUのキャンパス内だけでさまざまな分野の話が聞けます。こんなのは、他の大学でも珍しくないのかもと思っていましたが、Ken先生の話では、IUのような状況は珍しいのではないかということです。

 ついでですが、今日こちらに来て初めて髪を切りました。以前、日本人のNさんに相談した時「いちおう、日本で切ってもらった髪形の写真を撮ってきたんですけど」と言うと、「あー。。。無駄です」。上手な人、アジア人の髪を切りなれている人はほとんどいないとのこと。とても頼む勇気が出ないまま、伸び放題になっていました。

 しかし、数少ない日本人の美容師さんが勤めるお店があるという情報をゲット。予約を取って、いつもはあまり行かないダウンタウンの先までバスで。写真はバスを降りたところで取ったもの。貨物列車が写真奥へと伸びる道をまたいだ鉄橋の上を走っています。その日本人女性の美容師さんはもう7年Bloomingtonにいるのだそうです。その前はHoustonとか。幸い、上手に切っていただき、おかげで過激なイメージチェンジは避けられました。

竜巻

2005年11月07日 | Bloomingtonにて
 日本でも、小さく報道されているようですが、昨晩インディアナ州南部をトルネードが襲撃しました。死者が最低22人とのことです。土曜日は一日風が強かったのですが、夜、図書館から帰る時、もう11時過ぎなのにむっとするくらい暖かくて、変な感じでした。

 家に戻って音楽を聴きながらだらだら起きていたのですが、そのうちKatrinaのときなんかと比べ物にならないくらいの突風に変わってきました。で、今日(日曜日)起きてなんとなくニュースをチェックすると、ばらばらになった建物の写真と一緒に、死者の報道がされていて、びっくり(日本のマスコミのWebの「本田美奈子さん死去」のニュースの方が驚きましたが)。めずらしく、INDIANAの文字がCNNやNY TimesのWebのトップに出ました。

 実際に被害に遭ったのは、いちばん南のEvansvilleという町と、その南のケンタッキー州らしいです(画像はinfoplease.comの地図を拝借して、作りました)。100Km以上離れているので、こちらは死者が出るほどではありませんが、それでもあの風。現地の風がいかに強烈だったか、想像すると怖いものがあります。

 こちらに来てから2度大きなハリケーンが上陸しましたが、内地にあるここはほとんど被害が出ませんでした。その代わり、内地独特の、別の自然の脅威があるようです。4,5年もいれば、一度くらいは出くわすかもしれません。西海岸には地震があるし、東海岸は寒い。ここは絶対安全、というところは、当たり前ですが、ないですね。

 せっかくきれいに色づいていた木の葉が、この風でかなり落ちてしまいました。アパート内にも、すっかり枝だけになってしまった木もちらほら、今週の後半からは、また冷え込むようです。

冬支度 中断

2005年11月05日 | 
先週はとても寒くなりついに一度は最低気温がマイナス1℃に達しました。その頃急に、キャンパス内をリスが走り回るようになりました。自転車で走っているときに目の前を猛ダッシュで通過されて焦ったりもしました。リスの習性を知っているわけではないので、推測ですが、寒くなって冬眠準備のスイッチが入ったかと思っていました。

 リスは、大きいものと、小さいものの2種類いるようです。大きいのは、ふさふさのシッポも入れると30cm近いでしょうか、8年前に行ったオレゴン州のポートランドにいたものより、ちょっと小さい気がします。小さいのは10cmちょっと。縞模様で、超すばしっこい。ウサギもいるんですが、最近は見かけません。いずれにせよ、アメリカ人の学生は、これにも見向きもしません。写真は大きいほう。昨日(木曜日)5時過ぎに、言語学科のすぐ裏の庭で撮ったものです。

 今週に入って再び暖かくなりました。今日も最高気温は21℃で、平年の13℃よりはるかに高いぽかぽか陽気です。このあともしばらく暖かいらしいので、彼らの冬支度も中断でしょう。何℃くらいになったところで姿が見えなくなるのか、観察しようと思います。