時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

共同作業

2006年05月31日 | フィールドワークから
音声学の学生実験をしたグループで今夏、韓国でフィールドワークをしようと計画中。いよいよHuman Subject Committeeの審査を受けています(以前にも書きましたが、人を使った研究には、必ず研究計画の審査と許可が必要です)。

先週末に最初の結果が返ってきたのですが、説明不足もあったせいか、いろいろ疑われて、あれも説明しろ、こういう文書も提出せよ、と、10項目くらいの回答要求をされました。「口コミで被験者を探すとのことですが、電話でお願いするのですか? 電子メールですか? 方法を説明してください。また、電話で依頼するなら、その会話例を文書で提出してください」なんてのもありました。また、こっちはちゃんと説明したのに、見逃して「説明せよ」と言われたところもありました。とことん疑ってかかられている気がして、なんか、頭にきてしまいました。

そんなわけで、週末もやる気にならず、そのままにしてしていました。ホントはのろのろしている場合ではないのです。許可をもらわなければ、いかなる部分も開始できないのが鉄則で、早くしないと夏休みに実験が出来ません。

今日、いっしょにやってくれるチョンヘ、ヒョンジンと図書館でディスカッションして、委員会への回答、文書修正の方針と担当を決めました。まず、委員会への回答を私が作り、それを基本に、二人が、さまざまな文書を作ってくれる、とのこと。

委員会の審査のための英語の文書、同じ内容の、被験者に見てもらう韓国語の文書と2種類作るのですが、これを彼らが担当してくれると言い出してくれて、助かりました。でもなにより、ディスカッションしているうちに、とても励まされましたし、うじうじしていた自分が情けなく思えました。彼らは、とてもポジティブなのです。

そのあと残ったチョンヘと実験文についてディスカッション。どんな単語なら一つの句を作りやすいか、フォーカスがかかりやすいか、こういう表現は自然か、などなどの情報を教わりました。彼女はとうぜん言語学の知識があるし、内省も鋭いので、いつもいいアイデアがもらえます。得難い仲間だと思います。

学生に戻って、こうやって気楽に共同研究ができて、いいものだなあ、と思います。作業が分担してもらえる、という実利もあるのですが、それよりこうやってエネルギーやモチベーションを与えてもらえるのが、本当にうれしい。彼らよりはるかに経験があるはずなのだから、もっとがんばらねばいけない、という気持ちを新たにしています。

多少の苦労があっても、調査自体は本当に楽しいもの。韓国へ行くのは2004年の学会以来、久しぶりです。初めてソウル以外のところを訪れて調査が出来る(チョンヘの郷里の慶尚南道・晋州)ということもあり、とても楽しみ。写真は、2004年のときにソウルの地下鉄の乗り換え通路で取ったお餅の写真、どれでも1パック1000ウォン(100円ちょっと)です。たしか2パック買って、サッカー(Kリーグ)を見に行った。こういうのも楽しみです。

英語の壁

2006年05月29日 | Indiana大学
先週、K-300(心理学科の統計学)の1回目の試験がありました。問題の英語を読むのにどうしても時間がかかり、最後まで終わりませんでした。そのせいもあって点数が悪く、凹みました。焦って「分散・標準偏差」を「2乗和・分散」に取り違え、不要な計算に時間を浪費したのですが、それがなければ間にあったようです。あと3回あります。次こそ(泣)。

問題やテキストは込み入った内容を論じたり尋ねたりしているので、それなりに複雑。正誤問題とテキストの例を1つずつ挙げます。

If we know a characteristic of interest is distributed normally, and we know the mean and standard deviation of that distribution, we can estimate an area beneath the normal curve that represents the probability of events occurring in that distribution.

Our statistical test will determine if the sample could have been drawn from the known population or if the sample must have been drawn from a different population.

2つめの文章には「助動詞+完了+受動態」が2回出てきますが、帰無仮説を保留するときと、棄却するときに対応して、couldとmustで言い分けられており、正確に理解する必要があります。受験問題のためにわざと組み立てるようなときしかお目にかからない、わけではないみたい。生成文法の論文で、非文法的になる条件を見極めるために使われるような非常に複雑な文章も「こんな文章実際に使うの?」と思っていましたが、議論上複雑なことを述べる必要があれば、いくらでも使うようです。

上記は受験問題と比較すれば難しくもありませんが、この国における普通のスピードで、かつ正確に理解するとなると今の能力ではきびしい。これまでの大学院の授業の試験では、英語処理の時間のせいでぎりぎりになるという経験はありませんでしたが、この学部の授業は留学生がほとんどいないせいか、扱っている内容自体は簡単なためか、授業のスピードも非常に速く、試験でも時間的余裕はくれません。

試験では、終わらなくて「もうやめて提出!」と促されている人はネイティブでもずいぶんいましたから、学習内容が理解できていないと、彼らにさえラクではないのです。だからわれわれも、ネイティブにそれほど劣らないペースで読み、解答を選び、論述し、ということが必要。「ネイティブじゃないんだからそんなに速くできるわけないだろ!」と思いましたが、「それなら、そもそもわざわざここに来なければいい」ということになってしまいます。私は英語を勉強しに来たわけではありませんが、するとなおのこと、かなり高い英語の能力が前提となるようです。

先日の記事の “Bless you” のような決まり文句は、生活していれば何度も耳にしてどうせ分かるようになる。せいぜい話の種になる程度のこと。おしゃべりが出来るようになれば楽しいし、いいことも多いのですが、じょじょに進歩させるしかないし、とりあえずTAのポジションが取れる程度までできれば死活問題ではありません。それより、多量の、込み入った内容の英文を速く(かつもちろん正確に)読む能力が非常に重要だと最近、再認識しています。ネイティブに追いつくのは不可能でしょうが、できるだけ早いうちに、もう何割かスピードを上げないと。

私は、文法や訳読をみっちりやる従来の日本の授業を否定するのは適切でないと思うし、「日本の従来の英語教育は役に立たないことがすでに明らか」とでもいうような見解にはかなり懐疑的です。現にいまも、生活上で契約や税金・罰金等の文書を読まなきゃならないとき、教科書を読んだり、講義を聴いたりするときに、過去に日本で受けた英語教育の恩恵を大いに被っています。早期に英語教育を始めるかどうか、日本でちょっと話題になったようですが、もっと本当にすべき議論が他にあるように思えます。

日本の教育は悪くないと言うのなら何でお前はまだまだなんだ、というと、私の能力・努力不足もありますが、「そんなもんよ、本当に慣れるには何年もかかる」と周囲の人が言ってくれるとおりなのでしょう。

「外国語の学習は(実は母語の学習も)長い時間と多大な努力を要する。ラクして何とかしようと考えてはいけない」、これ、誰かエライ人が、みんなにはっきり言うべきだと思います。「この方法ならラクラク!!」という誘惑は、ダイエット方のCMと同じで、ついひきつけられるのかもしれませんが、「ラクしたい」人に付け込むための方法を「ラクせずに」考えた人が儲かるだけだと思います。

神のお恵みを

2006年05月27日 | フィールドワークから
学部の授業、K-300(心理学科の統計学)も半分を過ぎました。今週は急に暖かく(暑く)なりましたが、先週はずいぶん寒かった。風邪気味だった人も多かったようで、授業中くしゃみを立て続けにしている人がいました。

くしゃみをすると、周りの誰かが “Bless you” と言い、相手は “Thanks” と返す。この習慣を私は日本にいるうちに何かで知ったのですが、来てみると、確かにやってます。知らない人にもやるようで、今日もバスの中で、アメリカ人の女性が、たまたま横に座った中国人(私は知り合い)に言ってました。

K-300でこれを授業中にもやることに気づきました。くしゃみが止まらなくなくなると、友人が何度も言ってあげることもある。お礼も基本的にそのつど言う。先生もそれを注意するどころか、聞きつけると話を止めて “Bless you” と言ってあげるのです。

でも火曜日、試験中なのに “Bless you” “Thanks” の交換が行われたときにはさすがに驚きました。Huffman先生が教室や試験会場の管理に甘いわけではなく、「他の人の回答に目をやってはいけません。ちょっとでもやったら、カンニングとみなして、0点にします!」ときっぱり最初に言っているくらい、かなり厳格です。そんな先生でも、これは叱りません(驚)。

日本で試験中にくしゃみをした人に周りが「誰かがうわさしてるよ~」とか「お大事に」とか言ったら、(少なくとも教師をしていたときの私なら)「試験中はそんなこと言わんでよろしい!」と叱るところです。

この国の教育でもやはり「試験中はあらゆる私語禁止」という原則があるのは間違いありません。でもどうやら “Bless you” “Thanks” はそれに違反しても許容される(OT…)くらい、「なんとしても言ってあげるべきこと」のようです。

写真は今日午後6時、アパートのベランダから撮ったものです(写真の奥が西)。まだまだ日は高い。サマータイム中ですから、実質5月終わりの午後5時。不思議ではありませんが、最近は真っ暗になるのはようやく午後9時ごろです。

予想してみた

2006年05月24日 | サッカー
W杯ドイツ決勝大会、いよいよ、という気分になってきました。Yさんが「開幕戦はうちで、みんなで見ましょう(K-300に出席している言語学科の学生数人を招待してくれる)」と言ってくれてます。6月終わりまでBloomingtonにいるのですが、アメリカでもESPN2というチャンネルで放送するんだそうです。

そこで、予想をしてみたいと思います。まず優勝。これは私が考える「W杯成功の条件」(3回しか見たことないくせに)に基づくものです。勝ち抜くチームは
(1) 強い(当然)
(2) コンディションがいい(前回のフランスはこれが×)
(3) エースストライカーが好調(ロッシ、ロマーリオ、シュケル、ロナウド…)
(4) グループリーグの組み合わせがラク(前回のブラジル!)
(5) 下馬評が高すぎない(これも前回のブラジル)
(6) 運がある(前回のイタリアはこの逆)

本命はフランス。アンリ円熟、トレゼゲ充実。ギャラス、マルーダなど脂の乗った選手が多く、ウィルトール、マケレレなどベテランもばりばり元気。ジダンさえ万全なら優勝した1998年仏大会のチームより強いと見ます。開催地も近いし、グループも開催国ドイツに匹敵するくらい楽。

ブラジルは下馬評は高いが苦しいと見る。ロナウド、アドリアーノが調子を落とし、誰が点取るの? という感じ。中盤は世界一だが、DFとGKに穴。W杯開催が半年前なら・・・ でも、グループは楽ですね。監督が過去に固執せず柔軟にメンバーに手を加えられたら、やっぱり優勝候補には違いない。対抗。

次に推すのは、いつも魅力的なオランダ。でも、肝心のエースストライカー、ファン・ニステルローイがシーズン後半調子を落としてレギュラーを外れてる。カイトは本当のCFではないと思うのでちょっと不安。超激戦のグループを抜けられるかがカギ。穴。

最後にイングランド。ベッカム、ジェラード、ランパード、コールの中盤はすばらしいし、DFもテリーが成長してここ数大会で最強では。と思ったらルーニーの穴は痛すぎる。驚異的な回復を見せているらしいけど、それでも間に合って決勝トーナメントでは。エリクソンの大ばくちはハズレと見ます。ここが勝ち抜くならMFが大車輪で活躍しないと。大穴。

それでも上記4つが優勝候補(ベスト4)。これ以外の優勝チームはないと予想。アルゼンチンはもちろん強いけどグループが難しすぎる。テベス、ダレッサンドロ等のユース世界一組が期待からはいまいち。リケルメさえ潰せばOKというチーム? イタリアは、トーニが台頭。インザーギも好調。トッティは怪我を克服して今度こそ精神的に一皮向けると予想。本来候補に推したい。でもユベントスの大スキャンダルの動向が影響すると見る。まして、EグループはCより大変かもしれない。またまたイタリアは運をつかみそこなう予感。

ドイツ、スペイン、ポルトガルはグループは楽ですが、力量的にその先どこかで止まる。決勝戦の組み合わせはオランダを負かしたフランスと、ブラジルを負かしたイングランド。代わりにオランダ、ブラジルが出てきてもオランダが勝つ。得点王はアンリ、では当たり前すぎるので第二候補に、復調すると見てニステルローイ。ブラジルは4大会連続の決勝進出を逃すが、それでもロナウドは3点くらいは取って、ミューラーの通算得点記録を破る。

日本については「ただ見守るのみ」の心境ですが、予想をすると言ったんだから書くと、1勝2分けで決勝進出、ベスト8まで行く。対ブラジルは、中村がFKを決めて引き分ける。(正直難しい。2大会連続グループ突破だけでも大快挙)波乱を起こすのでは、と期待するチームは、日本、コートジボアール、米国。

Yさんと話すと、彼は全く違う理由でドイツを予想。開催国だし前回悔しい思いをしているから、だそうです。逆に前回優勝して、そこまで死に物狂いになりにくいブラジルは無理だろうと。それも非常に納得。

この大会が終わると世代交代が進む。ジダンはもちろん、ラウル、ベッカム、デルピエロなどのスターも最後の大会でしょうか。日本も長い間似た顔が続きましたが、このあと残る人は数えるほどになるでしょう。若いころから見てきた選手たちなので、結果はともかく、代表選手として有終の美を飾れるといいなと思います。

どうせほとんど当たらなくて、驚くことばかりだろうと思いますが、終わったら振り返って楽しむための記録として書きとめました。このブログの本来の目的と全然違って申し訳ないです。。。 写真は、数年前イタリアの空港で撮ったもの。ロシア語版の「GQ」の表紙を飾る、ついにW杯出場叶ったウクライナの英雄です。

Indianaの不思議3つ

2006年05月21日 | Bloomingtonにて
先日、春学期の成績票が来ました。A、B、C…という成績はWeb上で確認できますが、この正式な文書ではクラス内での成績の位置もパーセンタイルで報告されます。去年の秋学期よりはまあ良く、ほっと一息。アシスタントなどの学内審査で参考にされるようなので、できるかぎりいい成績を取る越したことはありません。

受験の際、IU言語学科の留学生はTOEFLの他、アメリカ人の受験生と同様GRE(Graduate Record Examination)のスコアを要求されますが、そこで始めて自分の成績がパーセンタイルでランク付けされる経験をしました。SAT、GMAT、GRE…と共通テストがあり、GPAだ、パーセンタイルだと、アメリカの学生もけっこう数値化された成績には追い詰められるようです。

このアパートはいくつかの棟のまとまりごとに集合ポストが設置されていて、みんなそこに取りに行きます。私があてがわれた11番の箱には常に私の郵便物以外に3人、日本人、アメリカ人、中国人の名前の人の郵便物も届きます。人によっては学生ローンや税金関連の通知まで届くのです。

たまたまいた配達人にどうしたものか尋ねると、「お宅の棟は担当者が違うから、そいつに分かるようにポストにメモを残したらどうだろう」と助言してくれました。っていうか、郵便局全体として何とかしようとしないの??? と思うのですが、そういうオーガナイズされた社会ではない。そのことはかなりよーく分かってきた気がします・・・

上述の成績票も封書で登録課(Office of Registrat)から送られてくるのですが、今回は、私のポストに別の学生の成績票も入っていました。本人の部屋を2度尋ねましたが不在で、郵便局に届けました。住所は間違っていなかった(私はE302、その人はF202)ので、配達人の単純なミスであることが確認されました。窓口の人は「配達人はすぐ裏にいるから、言っておきます、ありがとう」といってました。こんな重要なもの入れ間違えるとは。わが棟の配達人、大丈夫か??? 私あての文書にもおんなじような事が起こってないといいのですが。

今週前半は雷雨が続いて大荒れの天気でした。で、おとといの夕方、インターネット通信回線が不通になりました。夜まで復旧せず、あきらめて寝ました。今月はこれで二度目。前回は、一晩で終わらせるはずのメインテナンス作業がうまく行かず、数日不通または不調が続いたのです。ここの雷雨は確かに迫力がありますが、そのたびに故障が出たり、メインテナンスに失敗して不通が続いたり、日本でこんなことをやったらあっという間に客が逃げるでしょう。これでも、この地域では比較的大きな、ケーブルTVもやっているプロバイダなのです。他社に変えても多寡が知れてる気がしてそのままにしていますが、考えたほうがいいか・・・

写真は先日買った食料品の一部。私はこちらではずっとこの小さくて青いリンゴを買って毎朝1個ずつ。これで$2.99。それから、クロワッサンを買ってみました。これはけっこうおいしい。安売りで$1.99。それからバリラのパスタ。1lb(453g)が$1.00と非常に安い。これまたでかくて安いズッキーニなんかを買えば、かなり安くおいしいものが食えます。

種類もスパゲッティーニ以外に、ファルファッレ、ペンネ、リングィーネなど数種類が手に入るので、不足ありません。が、不思議なのが売れるものの極端な偏り。圧倒的に売れていくのは「エンジェルヘア」という極細パスタ(と、ペンネ)。太くて長いパスタは売れません。私はあのそうめんみたいに細~いパスタの何がいいのか分かりません。冷たくしてパスタサラダにするくらいしか思いつかない。でも、たぶんここの人は普通にゆでて食ってるはず。

この嗜好はアメリカのパンが全体的にふわふわ柔らかいのと関係するのではないかとにらんでいます。「フランスパン」と名前をつけて売られているパンすらふにゃふにゃですから。「あんたらは、食べ物の歯ごたえを楽しむという嗜好がないのか???」と尋ねたい(歯はきれいで丈夫そうな人が多いのに・・・)。私の買ってきたリングィーネは、安売りでも売れ残っていることが多く、問題なく入手できます。

ということで、最近思った、アメリカの(インディアナの?)不思議3つでした。

日本代表の年齢構成は特殊か2

2006年05月20日 | サッカー
続いて、昨日と同じ国、同じ表示方法で、恣意的に選んだ8か国について、23人の選手登録締め切りの日(2006年5月15日)の時点での年齢を入力しました。

一目瞭然、日本には大きな特徴があります。最も分布が狭い。一つの年代に明らかに固まっています。宇都宮さんの指摘どおりで、アテネに出た世代はほぼ入らなかった。つまり「ナイジェリアワールドユース準優勝世代をはっきり中心としたチーム」と特徴付けられます。そのとき優勝したスペイン(やられましたねえ・・・)は19歳のセスクはじめ若い世代が台頭して、年齢のバラエティがあるチームになっています。アルゼンチンもそう。

ということで年齢からみた日本チームの特徴は「平均年齢はベテラン重視型の標準だが、ある世代だけで構成されているという点でちょっと特殊」ということになります。

ジーコが監督になってから、若い人をなかなかチームに加えないことが(も)批判の対象になっていたように見受けられたのですが、そのたびに思っていたのは「ジーコ、ブラジル人だもん、そうなるよ」です。

ブラジル自体、代表のセレクションは非常に保守的だ、という印象があります。まだカフー、ロベカルなの? みたいな。元鹿島のトニーニョ・セレーゾとか、ロマーリオとか、ブラジルには40近くなっても現役バリバリという選手も多いブラジル。28、29なんかまだ若い、ということでしょうか。

若い人が容易に割り込めなかった、という意味で、日本はフランス、ブラジルのタイプ。ジーコは自国で行われているセオリーどおり、オーソドックスな選抜をしただけとみなせます。おいおい、日本はまだそんなサッカー大国じゃないぞ、というツッコミはできますが、「だってブラジル人監督にしたんだから」につきると思います。まして、早くから2006年までと明言しており、この大会での成功だけがミッションの監督に「2010年を考えてくれ」と要請するのは、違う気もする。

これが宇都宮さん指摘するところの「先行投資」欠如の問題を実際に引き起こすのでしょうか。かもしれません。世代の交代問題は、ドイツすら経験していることで、ある充実した世代がある限り、どの国でも経験しうるのかも。でも、今の大会でそれなりの成果も挙げずに4年後もへったくれもないし、セスク、メッシ、ウォルコットを選んだ監督は、先行投資のためにやったのではないでしょう。

ということで、「身長」と「年齢」について、恣意的に選んだ7カ国と比較してみました。身長は「ちょっと低めで、チーム内のばらつきが小さい」、年齢は「ベテラン重視型の典型的レンジだが、一つの世代への集中が顕著」という結果です。概略、宇都宮さんのおっしゃるとおりでした。他と比べて多少偏った選択になっていると結論付けてよさそうです。ただ後者については、それが監督なり協会なりの世代間の継承の失敗の結果、ということになるのか、他のチームの分布が、世代間の継承がうまく行っている結果、といえるのかどうか、それを年齢分布データに読み込むのはそんなに簡単なことではないように思えます。

日本代表の年齢構成は特殊か1

2006年05月20日 | サッカー
先日に続き、W杯日本代表チームのデータを他国と比較してみます。昨日も取り上げた宇都宮徹壱さんのコラムのもう一つの指摘は「アテネ五輪のチームからぜんぜん入ってない」です(駒野とオーバーエイジの小野だけ)。4年後、28、29歳になって初めてW杯というのでは、遅すぎる。2010年に向けての先行投資も考えてほしいとのことです。

ともあれ、じゃあ比較してみようということで、データです。選手全体のリストがFIFAのWebで公開され、Excelファイルとして入手できたので、32か国すべてについて平均を出してみました。平均をもっとも若いガーナの25.09歳から最高齢のフランスの29.00歳まで、0.5歳刻みのヒストグラムにしました。

ただしこのヒストグラムは正規分布にはなりません。ランダムに選んだ結果ではなく、国ごとに監督が戦略を考えて選んだ結果だから。で、日本はというと平均27.92歳で32か国中8番目、ヒストグラムでは右から3つめの「28」と表示したレンジにいます(27.5~28歳)。ちょうど上から1/4のところにいるわけで、確かにやや年上のチームです。ただ、他の国とかけ離れているわけではなく、高い山(頻度が多い)が二つある、その右のほうにいる。選手選考の主流の方針として「ベテラン重視型」「若手積極的登用型」の二つがあるとして、日本は「ベテラン重視型」の典型的な分布域にいる、ということだと読み取れます。なお、全体の平均は27.23歳。

とりあえず平均からは、27、8歳を中心とした経験のある選手を選出するのは国際的に見てわりと普通のことで、日本もそこから大きく外れてはいない、という結論になります。ジダン、テュラムといったフランス大会優勝メンバーが復帰したフランスはこの傾向の極。年齢分布高い。

日本代表は背が低いか

2006年05月18日 | サッカー
統計の授業は「標本平均の分布」という、ちょっと難しいところに入ってきました。つまり「ある母集団から取り出したサンプルの平均が、どういう分布になるか(母集団より分散の小さい正規分布になる傾向を持つ)」ということ。ここまではいわゆる「記述統計」だったのが、いよいよ「統計的推定」に入るわけで、ここで引っかかる人も出るでしょう。私も分かっていなかったところで、去年L611のテキストを読んでやっと分かってきた気がします。今回で完全に把握して、人に説明できるくらいになりたい。

さてところで、サッカーW杯日本代表が発表されました。さまざまな意見が戦わされていることと思いますし、私もYさんとあれこれ話して楽しんでいます。よく読んでいる「スポーツナビ」の宇都宮徹壱さんというフォトジャーナリスト(たぶん有名)の意見は、面白かったし、だいたい納得しました。

ただその中で、「ホントかなあ」と思った部分があったので、ちょっとだけ調べてみました。「ウソを証明してやる」という意味ではなく、「多分ホントだろうけど、どれくらい実際にデータで裏付けられるか知りたくなった」という意味です。今日はその一つ目、「日本のDFは背が低い」ということ。たぶんそうでしょう。さらに、データを増やしてばらつきも見たいということで、登録選手23人全体を比較してみました。

これもよく見る「WorldCup’s World」というサイトからデータをいただきました。あまり多すぎてグラフが見にくくならないよう、8カ国でストップ。大陸別とか、ランダムにピックアップするとか、統計的に正当な選択手段をとるべきですが、アフリカとか中米には、全員のデータがない国もあったりするので断念(ありがち。そもそもそういう国はデータの信頼性も低い可能性大)。で、「アルゼンチンやスペインは低いかも」とか、「近くの韓国は?」とか、さらに(次回報告しますが)「年齢も比較してみたいから、じゃあ引退した選手が復帰したフランスを入れよう」と足して行きました。日本が戦うGroup-Fの国は全部入れました。

さて、書いてみたのは「箱ヒゲ図」。でも、Excelでやったので4つの値しかプロットできません。中央値(50%)を断念しました。表示したのは下から「最低値-第1四分位(First Quartile=25%)-第3四分位(Third Quartile=75%)-最高値」です。「ヒゲの下端-箱の下端-箱の上端-ヒゲの上端」がそれぞれの値になります。だから、箱の中に各国の23選手のうち、中央に近い50%が入っています。

さて、結果は平均値の昇順に並べてあります。調べた中ではアルゼンチンが一番低い。日本は下から2番目。かけ離れて低いわけじゃない。国民全体の身長はあまり変わらないと思われる韓国は、隣にいるけどけっこう違う。スペインもブラジルも、意外と大きい。選手選択方針の違いによるのでしょう。

日本のもう一つの特徴は、「箱が小さい」こと。似た背(178cm付近)の人が多いんですね。同じく箱が小さいのはフランスですが、箱の位置が違う(184cm付近)。みんなそろってちょっと小さめ日本代表、みんなそろってでかいフランス代表。一方、アルゼンチン、ブラジルなどは箱ももっと長いし、ひげも長い。でっかい人(アドリアーノとか)、小さい人(メッシとか)、多様にいるということです。他も全体的に、日本よりひげ長い、箱も大きい。

対戦するクロアチアとオーストラリア、でかいです。オーストラリアにはクロアチア系移民の選手が多いので、Group-Fにはクロアチアが2チーム入っているようなもの。平均でも6cmの差。空中戦は苦戦しそう。守備は対処のしようがあるにしても、攻撃でターゲットに当てようとしたときは、ことごとく跳ね返されるかもしれません。

ということで、日本代表の特徴は「背は低め。でもそれより顕著な特徴は、身長のバリエーションがないこと」でした。たぶんメキシコとかコスタリカは小さいし、逆にスウェーデンとかオランダはでかい。他の国を入れても、だいたい同様の傾向になるのでは、と思います。ちなみに私の身長(166cm)は、どの国の最低値より下でした。。。 次回は選手の年齢について比較します。

授業料は高いか

2006年05月14日 | Indiana大学
今学期出ているK-300は学部の授業です。授業は月~金の毎日、6週間連続。Ph.Dのための単位にはなりません。私は登録して受講していますが、「登録しないで聴講する」という友人もいます。これ一つだけで授業料が$2,000以上するので、その気持ちも分かります。

始まってみてどうだったか。内容は超基本的。「%を計算して、円グラフを書け」なんてやらされるとは。しかも、その基本をめちゃくちゃしつこく反復させられる。昨日も来週の予習をしてて、「正規分布のカーブ内に、このz-score以下の範囲を塗りつぶして、表を参照して区間の分布確率を計算しなさい」というこれまた基本的な課題をいくつもいくつもやって、「飽きた!」と途中で放棄。

一方、進度はめちゃくちゃ速い。話し方も、話題の移り変わりも、これまで受けてきた中で一番。ネイティブでも「すっ飛ばしてる」と感じるでしょう。なので、予習をして授業に出ています。

課題は多い。他の授業でもそうですが、授業以外で勉強している時間のほうがずっと長い。まず2日に1度、宿題を提出。その内容も踏まえて、だいたい2日に1度、授業時間外にオンラインで小テストを解く(スコアは自動で記録される)。今日第一回をやってみましたが、基礎的な問題が45問。100点を取って初めて点数として加算される。復習内容で、しかも4回まで挑戦できるから。ゆっくり確認しながら1時間くらいで解きましたが、幸い初回で全問正解。

この「問題は簡単だが、高得点を要求する」という傾向はどの授業にも見られるのですが、悪くないと思います。成績もAは93%以上。ミスが出来ないのでプレッシャーがかかりますが、それだけに最終的な習熟度は高くなる気がします。

そして4回の本試験。小テストはそのまま試験勉強になりそう。この「授業→宿題→小テスト→試験」という基本パターンを繰り返すことで知識・技術の習得が進むようになっています。最後に統計ソフトのSPSSを使う分析課題が出るそうです。これだけの教材を開発し、採点などの成績管理をする(ここはTAが担当)というのは大変な手間だろうと思います。Brianにこの先生(C. Hoffmanという講師です)の授業がお奨めだと言われたのですが、間違いないようです。

それでも、Nさんが言うように、「いまさらあんたには簡単すぎるだろう。金払って受講するのはもったいないのでは?」という疑問もあります。Ken先生もそう言ったし、私もちょっと悩んだのですが、実際やってみて、私は意義を感じています。

まず、「分かっているつもりで分かってなかった」をつぶせること。来学期から、大学院の統計の授業を二学期にわたって積み上げていくのですが、その前に基礎固めをするのは重要だろうと。つぎに「統計を英語で読み・書き・考えるに習熟できる」ということです。発表したり、論文を書いたりするには重要なスキルですが、これだけ反復してくれれば大丈夫かなと。だいたい分かって多少の経験もある現時点で、こうやって基礎をしっかりおさらいするのは負担が低く、理解度が高くなって、ちょうどいいタイミングだったのではないか、と思います。

それからついでですが「関数電卓の使い方を練習できること」。来学期の統計学の授業で関数電卓が必携で、ついこの間購入。また日本製(SHARP)です。初めて使ってみましたが、非常に多機能なので、操作が難しい。出来の悪いマニュアルを見ながら、四苦八苦しています。同じく秋学期に受講する予定の「音声科学のための数学(Mathematics for Speech and Hearing Sciences」でも関数電卓を使いまくると思われるので、その前に操作に習熟しておきたい。そのためには実際利用するのがいちばん。分散の計算にΣx2(平方和のつもり)の機能を使ったりして、キーの使い方を覚えるようにしています。

ということで、これだけのことを自分に課して、達成度を追いかけてくれて、さらにそれを社会に証明してくれる値段としては、まあ、$2,000は悪くないかも、と思います。小テストのサイトも、当然ながら対価を払った人しかアクセスできません。聴講ではなく登録して、正解だったと思っています。

この授業、金を取るならかくあるべし、という見本に思えます。過去の自分の授業が、授業料や自分の給料分の利益を学生に与えていたかと考えると、大変疑わしい。秋からは自分自身TAとなり、教育にかかわっていく予定。「授業料が高い」と思われないようしっかりやらねば。評価シートも書かれるし(怖)。

写真は電卓とマニュアル。ご覧のとおり冊子ではなく、一枚の紙。文字も小さいし目次もないし、必要な操作が探しにくい! これに限らず、こっちのマニュアルはいい加減だと思います(日本のマニュアルが律儀すぎ?)。そのかわり必ず最低でも、英語版・スペイン語版の2種類はついてきます。

身長を言え

2006年05月11日 | Bloomingtonにて
情けない話ですが、恥を忍んで書きます。先日始まった夏季集中授業の初日。朝8:55からの授業に間に合うよう、自転車を飛ばしました。で、心理学科のビルに到着、自転車を止めて入ろうとすると、後ろから「待て、建物に入るな!」という声。振り返ると体の大きなお兄さんが近づいて来ます。何? なんかあった? このビルが危険なの???

・・・・警官でした。で、「お前さっきあそこの交差点で信号無視しただろう、それにな・・・」と早口でまくし立てて、「IDはあるか? 出しなさい」と言う。一瞬で観念しました。どこかに連れて行かれてしまうのではないかとすら思いましたが、書類を出して書き始めたので、どうやらそれはなさそう。何が起きるかもほとんど瞬時に想像がつきました。

で、尋問の末、罰金。Brianさんに話すと「えーー、そんなのことあるのー」と驚いていました。午後Ken先生にも話すと、笑いながら聞いてくれて、自転車が捕まっていきなり罰金はあまりないんじゃないか? との話。実際、自転車も歩行者も車がこなければ赤でもどんどん行ってるので、つい、そういうものかと思ってしまいました。

今後のためと思って、何を言ってるのか警官に確認したところ「信号待ちしている車の横を自転車ですり抜けてはいけない。後ろで待て。これも違反だ。」とのこと。早く着こうと思ってけっこう飛ばしていたし、大胆に信号無視をしたので、警官も目に余る乱暴な自転車だと思ったんでしょう。反省します。。。

尋問では、住所・年齢・生年月日・免許を持っているかを聞かれました。どこでも必ず聞かれる「社会保障番号は?」という質問もされましたが、「持ってません」。これでアメリカ市民でないことは明確なのですが、「国籍は?」とは聞かれませんでした。パスポートのコピーも携帯してましたが、不要だといわれたので、国籍は確認していないはず。でも、渡された出頭命令には「Race」という欄があって、ちゃんと「A」と書いてある。分かるんですね(当たり前か)。ともかく、「アジア系だ」というレベルの記録をする義務はあるようですが、そこまででいいらしい。ちょっと驚いたのが「身長は?」と聞かれたこと。「分からない。FeetやInchでは言えない」と答えたら、「分かった、いい」ということになりました。

さて、この取調べのおかげで遅刻ぎりぎり。K-300=Statistical Techniquesの授業が始まりました。最初に紙が回されて「宿題のデータとして使いますから、皆さんの身長をインチで書いてください」(!)。立て続けに2回も、なじみのない尺貫法・・・じゃなかったフィート=インチで言えといわれて苦笑。「だ~から、アメリカ・ローカルの単位で聞かれても分かんないって!」と、軽く途方にくれました。でもなぜか「1 inch=2.54cm」というのを思い出して、電卓で計算。私は166cmなので、65インチ。フィートを使うと、5/5(5Ft 5Inch)ほど。

警官が書いた書類を見ると、「5/4」と書いてあります。目算でだいたい合ってるのがなんか癪に障る。職業柄ですね。でも体重は、130ポンド(約59Kg)とあって、ハズレ。54Kg弱なので、120ポンド弱。アメリカ人は平均的にもっと重いので、この身長で120ポンドというのはちょっと考えられないのでしょう。

さて、最後に罰金。恐ろしいほど多額なのでは、と思っていましたが・・・$113.50。たいていの軽い交通違反がこの額。速度違反とか重い違反は$146.50でした。もちろんとても痛いですが、気が遠くなるほどではなくてほっとしました。

受講者の身長の情報は宿題として配布されました。画像でご覧いただけるようにヒストグラムにしてみたのですが、きれいな分布ではありません。受講者に占める男性の比率がかなり低いため、女性のほうだけ分布の山がきれいに出た結果ではないかと推測します。私の身長、65インチはちょうどこの分布の最頻値のところにあたります。周りを見て、自分の身長はこちらの女性の平均かそれよりちょっと高めかな、という印象でしたが、ほぼ合っているようです。