日経ビジネスオンラインに40歳過ぎのランニングを否定するかと思われるインタビュー記事がありました(
こちらから)。読んでみると実際には、「健康に生きるには、医者に依存し過ぎず自分で考えられる<患者リテラシー>が必要」というハナシで、ランニングはほんの一部。でも、ランニングに関する主張はタイトルから受け取れる通りで、一部引用すると
若い人は精神力をつけるために多少はいいかもしれないけど、40歳過ぎてやるものじゃないです。体が下り坂に向かっている時に自ら痛めつけるというのは愚の骨頂です。
(中略)
走る人は寿命が短いというデータも実際あります。走ったら元気になるんじゃなくて、元気な人が走ってるだけ。元気を浪費してるだけ。
うーむ。。。 18歳、大学受験を終えたその日から続けてきたけれど、家族とできるだけ長く過ごすことのほうが大事。思い切ってランナー生活と縁を切ろう。来年の一月、知人と出る約束の
日本昭和村ハーフを最後にしよう。そう決心して、嫁さんにメールで伝えようかと考えて、はたと立ち止まりました。待てよ...
「<走る人は寿命が短い>って、ホントだろうか。この方は医者だから当然研究例に基づいて発言してるんだろうけど、そういう研究例が溜まってきてるんだろうか...」
そこで、「Running and longevity」という検索語でググったところ、やはりいくつかの研究があるようで、新しいものを見てみました。リンクの記事はCBSのもの(
ココ)ですが、根拠となっている研究は、European Society of Cardiologyという学会の2012年の国際会議(
こちら)における、デンマークの研究チームの"Mortality in male and female joggers"というタイトルの発表。
17,636人の健康な男女に1976年から2003年までの期間に4度調査をした結果、年齢、喫煙、飲酒、教育、収入などの影響を排除した上で、ジョギングをしている人のほうが寿命が男性で7.9歳、女性で7.4歳、長いという結果。炎症・組織破壊の指標であるCRPという数値もジョギングをする人のほうが低いそうです。
この他、二三の記事を見ましたが、同様にランナーのほうが長生きというものや、過度でないならば(あったり前)健康に寄与するというものしか見当たりませんでした。
一定の決着をつけたいならもっと探す必要があるんでしょうが、これでじゅうぶん。少なくとも、ジョギングは体に悪い、という決定的な結論は出ていないらしいということは分かりました。現時点の知見を総合すると「どちらとも言えない」というあたりだというなら、シャープに動けて、よく眠れて、好きなものが食べられて、持っている服が着られる、等々のメリットを考えると、私にはランナー生活を止める理由がありません。引退は撤回することにしました。
上記の記事で「情報収集よりも、大事なのは情報を取捨選択する力です。何が正しいか正しくないかという、見極めの力を持っているかどうか...」という「患者リテラシー」が提唱されています。この記事を見ただけでランナー生活引退を決心しかけたのはそれこそダメで、立ち止まって他の情報も参照して考え直したことこそ、そのリテラシーとやらに合致した行動と褒めていただけるのでは。インタビューには、
自然界で自ら好き好んで走る動物は人間以外いないんです。それは、走るということが有害だからです。
もちろん敵から逃げるとか、獲物を追う時は走りますが、あくまで短時間です。2時間も走っている動物はいない。
という箇所もあるんですが、前にマラソンの動向に関する記事(
こちら)でも書いたように、ヒトは、二足歩行になって、遅いけれども長く走れるようになり、長い距離をカバーして屍肉漁りをするという戦略で適応した、という仮説もあることだし、ゆっくり長く走ったっていいじゃない、と思います。