他の高校から入学した優秀な学生たちの中に入ると、我々高等部出身者は肩身の狭い思いをした。大学入試のための受験勉強をやってこなかったことに劣等感を感じていた。学力にそれほどの差があるとは思わなかったが、彼等は我々にはない哲学を持っているような気がしていた。非常に緊張して彼らと付き合っていたのを覚えている。
だが、一カ月もするとその壁は徐々に取れ始めた。特に地方の高校から来た学生は「東京の奴らなんかに負けるか!」との強い対抗心を持っていたようだ。だが、付き合ってみると、違いは言葉のイント―ネーションぐらいだと理解し、我々にも心を開いてくれた。打ち解けた仲間同士で夏休みに旅行をすることが決った。だが、我々にあるのは時間だけで、先立つものはない。一人が、「俺は行けないよ。金がない」と云った。他の連中は親に泣きつくか、アルバイトをするかで費用を何とかすることにしていた。「金がない」のは全員が同じだった。「お前な、実家はかなり裕福なんだろ。セガレタッシャダマルオクレと電報を打て」と云った奴がいた。彼は素直にその通りにした。返事は「オヤモタッシャダマルトハナンダ」(親も達者だ。マルとは何だ)と返電が来た。「授業料と生活費、それに小遣い迄仕送りしているのに、その上まだ金を送れとはどういう了見だ」とその電報では云っていると私は理解したが、素直な彼は「マルトハコライカラカネノコト」(マルとは古来から金のこと)と電報を打ってしまった。その返事は「フザケルナバカムスコ」(ふざけるな馬鹿息子)。そして友人はまた「フザケテナイ」と電報を打ち返した。処置なしだ。
結局我々でアルバイト先を探してやり、素直な友人を働かせた。漫画のような電報の応酬だったが、今から想い出すと懐かしい、よその世界のような話だった。メールや携帯のない時代は地方との通信は電報が主流だった。電話をすればよかったが、公衆電話から地方に電話するにはかなり高額の料金がかかった。素直な友人と父親との間はこじれたが、我々の間の垣根は完全に取れ、より深い友情が芽生えた。
この原稿を書いている時点では、上野動物園の再開は全く不明であった。東京都の公園は「当分の間」の休園とホームページに載っているだけで再開の時期は明記していない。江戸東京たてもの園は5月11日までは休園を継続するとなっているが、12日から再開とは記していない。夜間に飲み行くのではなく、写真を撮りに行くのも不自由している。仲間と気に入った場所に行きたくとも躊躇している。お昼には皆と食事をする。無言での食事は考えられない。コロナのワクチン接種を終えるまで、じっと我慢するしかない。せめて写真ぐらいは自由に撮りに行ける世の中に、一日も早くなって欲しいものだ。
以前に上野動物園で撮ったリキの幼かった時の写真である。今はもっと大きくなり、やんちゃな男の子になっているだろう。野生のゴリラの群れのオスはボスだけである。幼いリキは二匹目のオスとして同じ群れの中にいる。母親だけではなく、群れのボスの父親や姉、それに叔母さんたちにも可愛がられている。幸せなリキである。
キャノンEOS7DにEF100-400mm、4.5-5.6Lを装着。 f11、 1/160 露出補正:-1、 ISO:400、 WB:オート、 PLフィルター使用。
キャノンEOS7DにEF100-400mm、4.5-5.6Lを装着。 f11、 1/200秒、 露出補正:-1、 ISO:400、 WB:オート、 PLフィルター使用。
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だが、一カ月もするとその壁は徐々に取れ始めた。特に地方の高校から来た学生は「東京の奴らなんかに負けるか!」との強い対抗心を持っていたようだ。だが、付き合ってみると、違いは言葉のイント―ネーションぐらいだと理解し、我々にも心を開いてくれた。打ち解けた仲間同士で夏休みに旅行をすることが決った。だが、我々にあるのは時間だけで、先立つものはない。一人が、「俺は行けないよ。金がない」と云った。他の連中は親に泣きつくか、アルバイトをするかで費用を何とかすることにしていた。「金がない」のは全員が同じだった。「お前な、実家はかなり裕福なんだろ。セガレタッシャダマルオクレと電報を打て」と云った奴がいた。彼は素直にその通りにした。返事は「オヤモタッシャダマルトハナンダ」(親も達者だ。マルとは何だ)と返電が来た。「授業料と生活費、それに小遣い迄仕送りしているのに、その上まだ金を送れとはどういう了見だ」とその電報では云っていると私は理解したが、素直な彼は「マルトハコライカラカネノコト」(マルとは古来から金のこと)と電報を打ってしまった。その返事は「フザケルナバカムスコ」(ふざけるな馬鹿息子)。そして友人はまた「フザケテナイ」と電報を打ち返した。処置なしだ。
結局我々でアルバイト先を探してやり、素直な友人を働かせた。漫画のような電報の応酬だったが、今から想い出すと懐かしい、よその世界のような話だった。メールや携帯のない時代は地方との通信は電報が主流だった。電話をすればよかったが、公衆電話から地方に電話するにはかなり高額の料金がかかった。素直な友人と父親との間はこじれたが、我々の間の垣根は完全に取れ、より深い友情が芽生えた。
この原稿を書いている時点では、上野動物園の再開は全く不明であった。東京都の公園は「当分の間」の休園とホームページに載っているだけで再開の時期は明記していない。江戸東京たてもの園は5月11日までは休園を継続するとなっているが、12日から再開とは記していない。夜間に飲み行くのではなく、写真を撮りに行くのも不自由している。仲間と気に入った場所に行きたくとも躊躇している。お昼には皆と食事をする。無言での食事は考えられない。コロナのワクチン接種を終えるまで、じっと我慢するしかない。せめて写真ぐらいは自由に撮りに行ける世の中に、一日も早くなって欲しいものだ。
以前に上野動物園で撮ったリキの幼かった時の写真である。今はもっと大きくなり、やんちゃな男の子になっているだろう。野生のゴリラの群れのオスはボスだけである。幼いリキは二匹目のオスとして同じ群れの中にいる。母親だけではなく、群れのボスの父親や姉、それに叔母さんたちにも可愛がられている。幸せなリキである。
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