シューベルトは、『ピアノソナタ楽章』は他の曲に頻繁に転用した!
前号にて書いたように、ピアノソナタ第1番ホ長調は「D154」「D157」の2つのドイチュ番号を持っている。他にも第1楽章が2稿あるソナタは多々あるのだが(スケッチも含めれば、D566, D575, D845, D850, D894, D958, D959, D960)ドイチュ番号を2ケ振られたのは、このソナタだけである><
理由ははっきりしている。
ソナタ第1番ホ長調の第1稿(1815.02.11)と 第2稿(1815.02.18)の間に、他の器楽曲=ピアノ変奏曲D156(1815.02.15)が存在しているから
シューベルトは「異分野の曲は並行作曲するが、同分野の曲は並行作曲しない」と信じ込まれて来た。「ミサ曲D678とオペラ」や「交響曲D944とピアノソナタ」などは超有名。だが、ピアノソナタとピアノ変奏曲やピアノ小品は並行作曲しなかった、と考えられて来た。その為、ドイチュ番号が2つ振られたのである。
1つの曲を、時間が経過してから大改訂することは、(ブルックナー ほどは有名では無いが)結構多い。「ヴィルヘルム・マイスター」より「竪琴弾きの歌」op.12 D478 や ピアノソナタD567&D568 などが有名。ピアノソナタ第1番ホ長調もこのパターンと思われたようだ。
だが、ちょっと待って欲しい。「たった7日」だぞ!!!
ピアノソナタ第1番は、シューベルティアーデの仲間たちに「ピアノで演奏される交響曲代わり」として作曲されたので、第1楽章再現部が書かれていない。だが、作曲当時、サリエリに師事していたシューベルトは、このピアノソナタを見せて褒められたのでは無いだろうか! 第4楽章まで(第1楽章再現部を除き)きちんと作曲されていたソナタの内、第2楽章を特に褒められた、と推測される。
師匠サリエリに褒められた第2楽章だけを「10の変奏曲 ヘ長調 D156」として独立して献呈の辞を付けた、と考えると D154 - D157 は「連続した7日」の内に書き直されたソナタ
となる。
2月5日の「佐伯周子ベーレンライター新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲完全全曲演奏会第16回」では、最終改訂稿 = D157 で聴いて頂く。シューベルト自身が「サリエリから褒められたD156」を越えた出来、と信じていた第2楽章が秀逸な曲である。
第3楽章がロ長調で終わっており、このままでは終曲にならない。第4楽章問題については次号にて。