『20世紀のイタリアオペラブッファ作曲家 として大成した ヴォルフ=フェラーリ、処女作オペラを見事に復元した 飯坂純指揮東京オペラプロデュース、圧巻だった タイトルロール = 鈴木慶江
日本初演演目を延々と続けている 東京オペラプロデュース の新作は、ヴォルフ=フェラーリ「シンデレラ」で勿論日本初演。招待状を頂いてから予習をしようと思って、アマゾンやらHMVやらタワーに検索を掛けたのだが、猫頭ヒョーロンカ=私高本には(DVDどころか)CDさえも見付からず、予習できなかった。
・・・と言うことは、東京オペラプロデュースのメンバーも「ゼロからの出発」だったと想像した。どんな演奏になるのか? 全く一切の推測が出来無いママに新国立劇場中劇場に向かった。
開演前、『新国立劇場制作首脳』など、「日本のオペラ界」注目な公演、と言うことは察知できた。やたらと出演者が多い演目。プログラムノートを読むと「出演者数も時間も削減した改訂版」を「ドイツ語版 → イタリア語版」にした、とのこと。う~ん、これじゃ録音無くて已む無し。(ブルックナーどころか、シューベルトにも多数存在している >< )
「ヴォルフ=フェラーリの音楽」って、「マドンナの宝石」間奏曲は頻繁に聴くのだが、他は知らなかった。ヴェルディ死後に活躍した作曲家だが、プッチーニの後半生と作曲時期が重なっていることが注目だ!
モーツァルト、ロッシーニ、ドニゼッティ を20世紀に蘇らせたかのような「ブッファの楽しさ」 + 重低音やオルガン、チェレスタ まで追加した「モダンな響き」の融合が ヴォルフ=フェラーリ の原点
他に ライトモティーフの活用もはっきり耳に残る。その音楽特性をそのまま「目にしたような 太田麻衣子演出」は素晴らしい。特に衣裳が「出場した瞬間に誰だかわかる!」優れモノ!!!
プッチーニ「トスカ」以上に出突っ張りの ヴォルフ=フェラーリ「シンデレラ」。見事に歌い切り演じ切った「鈴木慶江
鈴木慶江 は(東京オペラプロデュース公演を中心に)何度も聴いているが、役が大きく、印象が深い役だったことと相まってか、本日が最高の演奏だった。歌い込んでいたことがはっきり伝わって来る演奏だった。ワーグナー風に「曲中の拍手やブラヴォー」を拒絶した作りになっているのだが、第3幕第1場冒頭のソロ(アリア?)の直後に思わず、会場から拍手が漏れてしまったほどの圧倒的な歌唱であった。
・・・で、最後になったが、この公演を引き締めたのは 指揮者 = 飯坂純 だと感じる。聴いていると、(効果が聴衆に伝わるかは疑問なところだらけなのだが)声部の交錯が激しく、しかも「シンデレラ役」以外はアリア(またはアリア風)の曲が皆無なので、出番が来ると(相方のことは配慮せずに)「張り」易くなりそうな曲である。それを徹頭徹尾「作曲家の意図通り」にバランスを取るように柁を切ったのが 飯坂純。
新国立劇場中劇場のピットを第9列まで撤去してのピット設置は今回も効果絶大。深さは「2mを超すおそらく最大の深さ」であった。オケの音の混ざり方が何と豊かなことか! 次回公演アルファーノ「復活」は 飯坂純指揮 と発表されているが、次々回の オッフェンバック「青ひげ」(フランス原語本格上演日本初演、のはず)も是非是非 飯坂純指揮 で聴きたい。東京オペラプロデュースには切に願う次第である!
最後に。
前回公演の「戯れ言の饗宴」とは真逆に、「出演者全員に聴いた後の爽快感のみが残る」演出。台本の影響が大、だろうが 太田麻衣子 の演出は見事だった、と感じる次第である。
明日公演は読者の皆様には是非是非聴いて欲しい。だが、とっくの昔に全日全席完売になっている。「チケット求む」を出しても聴いて欲しい素晴らしい公演である!