いつだって
風を感じながら生きてきた
奇跡を可能にするのは
愛だけさ
そういつもささやいて
傍らを過ぎていった風の声
利己的な愛は
すぐに霧散してしてしまうから
誰もがいつかは
この地上のあらゆるいのちを
愛さなければならないのだと
この国は
なんでもそろってる
とても豊かで立派な国なのだというけど
いちばん大事なものが欠けている
それは
愛というせせらぎが
そこから流れだす
思いやりという湖や
ささやかな勇気という
凛とした水源のひとしずくや
いつだって吹いていた夕暮れ時の風
腰痛をおしての
年末年始だけの老人ホームでのバイトだった
そこのテレビの前に
日がな一日じっと座りこんでいたのは
盲目や 歩けなかったり
寝たきりや 認知症の
傷だらけになりながら
懸命に生きてる老人たちの姿に
風を感じた
ぼくがたったひとつだけ心がけたのは
その話に耳を傾けることだけ
「もうこれ以上生きててもしょうがない」という人が多かった
特に盲目や歩けない人には
「ここでも虐めや虐待があるのよ」と
ひそひそ声で囁いていた人
話しかけると
断っても断ってもエプロンのポケットに
飴をごっそりと入れてくれて
「ありがとう、ほんとにありがとう」と
何べん何べんもお辞儀していた人
「外へ出たら怒られた」という人
「ほとんど一日テレビでは飽きる」という人
忙しい仕事の合間に
半日振りに話しかけにいくと
「どうしたのかと思ってたよ、淋しかったよ」と涙ぐんでた
大昔の文学少女で盲目で車椅子の○子さん
『老人は新しい場所に移されるたびに、10パーセントの能力を失っていくことが調査で明らかにされている。生活能力だけではなく、生きがいも失われていく』
という言葉が身に沁みた
年末年始だけの1週間の老人ホームでのバイト
身体の痛みは
薬で治したりして
なんとか誤魔化すことができるけど
こころの痛みや
社会で生きてきた時の痛みや
社会から隔離されてしまった哀しみは
忘れた頃にやってきて
こころの奥底に落葉のように
降り積もってゆくばかり
それが
ぼくらの誰もに訪れる人生の晩秋だということを
ぼくらの誰もが想像しなければならない
暖かく見守ってやらなければならない
暖かい言葉をかけてやらなければならない
その運命こそが
ぼくらを待っている未来だし
冷酷無比なこの国でのぼくらの未来は
ずっとずっと過酷なはずだから
昨日の痛みがあって
今日の覚醒がある
今日の痛みがあってこそ
明日もまた
歩きだそうという意志が
ふつふつと湧いてくる
希望はたぶん 今日もまた
風の中に舞い続けている
風を感じながら生きてきた
奇跡を可能にするのは
愛だけさ
そういつもささやいて
傍らを過ぎていった風の声
利己的な愛は
すぐに霧散してしてしまうから
誰もがいつかは
この地上のあらゆるいのちを
愛さなければならないのだと
この国は
なんでもそろってる
とても豊かで立派な国なのだというけど
いちばん大事なものが欠けている
それは
愛というせせらぎが
そこから流れだす
思いやりという湖や
ささやかな勇気という
凛とした水源のひとしずくや
いつだって吹いていた夕暮れ時の風
腰痛をおしての
年末年始だけの老人ホームでのバイトだった
そこのテレビの前に
日がな一日じっと座りこんでいたのは
盲目や 歩けなかったり
寝たきりや 認知症の
傷だらけになりながら
懸命に生きてる老人たちの姿に
風を感じた
ぼくがたったひとつだけ心がけたのは
その話に耳を傾けることだけ
「もうこれ以上生きててもしょうがない」という人が多かった
特に盲目や歩けない人には
「ここでも虐めや虐待があるのよ」と
ひそひそ声で囁いていた人
話しかけると
断っても断ってもエプロンのポケットに
飴をごっそりと入れてくれて
「ありがとう、ほんとにありがとう」と
何べん何べんもお辞儀していた人
「外へ出たら怒られた」という人
「ほとんど一日テレビでは飽きる」という人
忙しい仕事の合間に
半日振りに話しかけにいくと
「どうしたのかと思ってたよ、淋しかったよ」と涙ぐんでた
大昔の文学少女で盲目で車椅子の○子さん
『老人は新しい場所に移されるたびに、10パーセントの能力を失っていくことが調査で明らかにされている。生活能力だけではなく、生きがいも失われていく』
という言葉が身に沁みた
年末年始だけの1週間の老人ホームでのバイト
身体の痛みは
薬で治したりして
なんとか誤魔化すことができるけど
こころの痛みや
社会で生きてきた時の痛みや
社会から隔離されてしまった哀しみは
忘れた頃にやってきて
こころの奥底に落葉のように
降り積もってゆくばかり
それが
ぼくらの誰もに訪れる人生の晩秋だということを
ぼくらの誰もが想像しなければならない
暖かく見守ってやらなければならない
暖かい言葉をかけてやらなければならない
その運命こそが
ぼくらを待っている未来だし
冷酷無比なこの国でのぼくらの未来は
ずっとずっと過酷なはずだから
昨日の痛みがあって
今日の覚醒がある
今日の痛みがあってこそ
明日もまた
歩きだそうという意志が
ふつふつと湧いてくる
希望はたぶん 今日もまた
風の中に舞い続けている