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中国産EV、輸出始動 テスラ・BMWまず欧州へ

2020年11月21日 16時28分22秒 | 日記

日経によると、中国のEV車、まずは欧州へ輸出開始という。まずはテスラとBMW そしてルノーさらには中国独自の企業2社という。日本勢とくにトヨタはどうするのあろうか? 日産は、リーフなどでの実績があるから、頑張ってもらいたい。

BMWが中国で生産し欧州に輸出するEV「iX3」=同社提供

BMWが中国で生産し欧州に輸出するEV「iX3」=同社提供

 

【フランクフルト=深尾幸生、北京=多部田俊輔】中国が電気自動車(EV)の世界への輸出拠点になってきた。米テスラや独BMWが2021年初めまでに中国から欧州にEVの輸出を開始。中国メーカーの輸出も弾みがついている。中国はEV普及に向けた新エネルギー車(NEV)規制でバッテリーなど関連の部材企業も集積。販売だけでなく生産面でも世界を主導する「EV強国」として存在感を増している。

 

 

英LMCオートモーティブによると2020年1~6月の世界のEV生産台数66万台のうち中国が約4割の25万台を占め、米国(23%)や日本(2%)に差をつけた。1~6月の中国の自動車輸出は減少したが、EVを中心とするNEVは前年同期の2.4倍の3万6900台に拡大。輸出額は3.7倍の11億ドル(約1100億円)に伸びた。

EVの輸出はさらに増えそうだ。BMWは遼寧省で生産する新型EV「iX3」を欧州に輸出し21年初めにも納車を開始する。米国への輸出も模索する。欧州への乗用車輸出は10%関税がかかり販売価格は約6万5000ユーロ(約800万円)。テスラも10月、上海工場で生産した「モデル3」を欧州へ送り出した。

中国で民営自動車大手の浙江吉利控股集団傘下の電動車メーカー、ポールスターは欧州や北米にEV「ポールスター2」の輸出を始めた。ポールスターの生産台数の多くは輸出向けだ。EVが市場の過半を占めるノルウェーで9月新車販売全体の3位に入った。

新興勢も海外市場に狙いを定める。愛馳汽車は多目的スポーツ車(SUV)「U5」をフランスのレンタカー会社に500台販売したほか、年内にドイツやスイスでも販売する。小鵬汽車も9月に輸出を開始。ガソリン車では限定的だった先進国での中国ブランドがEVで浸透しつつある。

中国はNEVの販売台数で19年まで5年連続で世界1位。工業情報化省によるとNEVで累計2兆元(約31兆円)超が投資され、サプライチェーンの整備も進んでいる。

車載電池で中国最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)がテスラなどEV大手に供給している。冷却部品の浙江三花智能控制や高圧直流送電リレーのアモイ宏発電声などもEVに欠かせないという。日本の自動車産業は裾野が広い部品や素材企業が支えてきたが、同様の産業構造をEVで中国が世界に先駆けて構築している。

 

 

 

日本の自動車メーカーもコストも安い中国でのEV生産に乗り出す。日産自動車は東風汽車集団と合弁でEVを生産・販売する。来年に稼働する湖北省武漢市の生産拠点で新型EV「アリア」を生産するが、当面は中国で販売する。ホンダは合弁ブランドEVを中国で生産・販売している。中国で生産を計画する自社ブランドのEVについては「(将来的に)他国への展開も視野に入れる」(ホンダ)。

中国で拡大するEV生産の恩恵は日本の部品・素材企業にも及ぶ。EV用駆動モーターで世界大手の日本電産は中国での事業展開を強化。EVに欠かせないリチウムイオン電池の構成部材でシェアの高い旭化成や住友化学なども現地生産で取り込みを狙う。

自動車の主役がガソリン車からEVに移ることで、日米欧から中国を軸とした自動車産業の勢力図に変わりつつある。日本にとって基幹産業である自動車の輸出・生産に影響が出る可能性がある。

続けて日経は『中国シフト鮮明、欧州勢に日本車メーカーは勝てるか』という記事を載せている。

世界最大の自動車市場の中国で「新エネルギー車(NEV)規制」の導入が目前に迫ってきた。中国政府は電動車市場が2025年に年間700万台まで膨らむと予想する。だが、現実は甘くない。19年の規制開始とどう向き合うか。中国・北京で取材を進めると、日欧中メーカーに戦略の違いがあることが分かってきた。

 

中国・北京の様子。写真左はBYDのEVで、NEVに割り当てられる緑色のグラデーションのナンバープレートを付けていた

 

■自動車メーカーに義務付け

19年、中国でいよいよNEV規制の導入が始まる。自動車メーカーに電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の生産・輸入を一定割合で義務付けるものだ。

エンジン車の生産台数にある係数(要求比率)をかけて求めたクレジット(生産枠)で管理する。NEV生産枠の要求比率は、19年に10%、20年に12%となっている。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダの日系3社は20年時点で130~140万台のエンジン車を生産する計画。NEV規制をクリアするためには、EVなら5万台程度、PHEVなら8万台程度の生産が必要になる。

ハードルは高い。それでも、「初年度から規制をクリアするつもりでEVを用意した」(日産の理事で中国事業本部本部長の西林隆氏)。日産は18年後半から中国でEVの現地生産を始める。

NEV規制とどう向き合うか──。18年4月27日から5月4日まで開かれた「北京モーターショー」では、自動車メーカー各社の「姿勢」がはっきりしてきた。

 

日欧中の自動車メーカー各社の取り組み

日欧中の自動車メーカー各社の取り組み

 

日本メーカーは中国専用のEVを用意してしのぐのが基本方針。それに対してより積極的なのが欧州勢だ。NEV規制への対応を世界戦略の中で位置付け、EVの量産規模を一気に拡大させようと目論む。中国メーカーでは新興のEVベンチャーの勢いが目立つ。

 

■EVが急増 ナンバープレート取得しにくく

2年ぶりに訪れた北京で驚いた。街を走るEVの数が急増していたからだ。北京は17年12月にNEV専用のナンバープレートを導入している。緑色のグラデーションを施したもので、税制優遇や「駐車料金をエンジン車よりも安くしてくれるところもある」(ある中国メーカーの商品企画担当)といったメリットを享受できる。

それでも、「クルマとしての魅力でEVを購入する消費者は少ない」(前述の商品企画担当)。大きな購入動機は、エンジン車のナンバープレートを取得できないことだ。大気汚染や交通渋滞が深刻な中国は、エンジン車のナンバープレートの発給枚数を厳しく絞っている。3年待っても取得できないことがざらだ。オークションで競り落とすことも可能だが、北京では1枚の価格は9万元(約150万円)を超える。

EVの方がナンバープレートを取得しやすいが、北京や上海のような大都市では争奪戦になってきた。北京のNEV用ナンバープレートの発給上限は、18年は6万台である。関係者によると「申請者は既に23万人を超えている」ため、「待たずに買える」というEVの利点が薄れつつある。

さらに、EVへの補助金政策も20年末で打ち切りになる。車両価格の面でもEVの立場は厳しくなってきた。EVを普及させたい中国政府の後ろ盾だけに頼らず、EV自身の魅力を高めることが強く求められている。

 

■中国専用EVでしのぐ日本メーカー

NEV規制への対応策として日本メーカー各社が打ち出したのが、売れ筋の車種を中国専用EVとして仕立てる戦略だった。現地生産や部品の現地調達を強化し、エンジン車との価格差を抑える。

日産は、セダン「シルフィ」のEVを18年後半から販売することを決めた。人気のある既存車種をEV化することで、手堅く売っていく方針である。シルフィは日産車としては中国で最も売れている。17年は「約42万台」(日産)も売った。

 

日産「シルフィ」のEV。18年後半から販売予定

日産「シルフィ」のEV。18年後半から販売予定

 

シルフィのパワートレーンやアンダーボディーなどのプラットフォームはEV「リーフ」と共用する

シルフィのパワートレーンやアンダーボディーなどのプラットフォームはEV「リーフ」と共用する

 

 

シルフィEVは、アンダーボディーやモーターなどのプラットフォームをEV「リーフ」と共用する。ただし、リチウムイオン電池セルは変えた。リーフはオートモーティブエナジーサプライ(AESC)製だが、シルフィのEVでは中国の寧徳時代新能源科技(CATL)から現地調達するようだ。日産専務執行役員で東風汽車の総裁を務める内田誠氏は、「電動化に関わる部品やシステムの現地調達を増やす」と述べた。

 

■トヨタ、ホンダ 小型SUVをEVに

 

トヨタは小型SUV「C-HR」をEVに。写真は北京モーターショー直前にトヨタが実施した新車発表会の様子

トヨタは小型SUV「C-HR」をEVに。写真は北京モーターショー直前にトヨタが実施した新車発表会の様子

一方、トヨタとホンダは世界的な売れ筋である小型の多目的スポーツ車(SUV)に目を付けた。トヨタは20年に「C-HR」と兄弟車「IZOA」のEVを出すことを明かした。「モーターやインバーター、電池という基幹部品の現地化を急速に進めていく」(トヨタ専務役員で中国本部本部長の小林一弘氏)との決意だ。

トヨタは、EVに先行して19年に中国専用のPHEVを投入し、NEV規制のクリアを狙う。車種は、ハイブリッド車(HEV)で人気を集めている「カローラ」「レビン」だ。カローラやレビンのHEVは、ガソリン車と同等の戦略価格に設定したことで17年は約14万台も売れた。この成功体験をPHEVにも生かすとみられる。

 

ホンダが18年に出すEVのコンセプト車。小型SUV「ヴェゼル」をベースに開発した

ホンダが18年に出すEVのコンセプト車。小型SUV「ヴェゼル」をベースに開発した

ホンダは北京モーターショーで、中国専用EVのコンセプト車「理念EV CONCEPT」を公開した。広州汽車との合弁会社である広汽ホンダの「理念」ブランドから18年内に発売する。

ホンダ執行役員で中国本部長の水野泰秀氏は、「現地の技術・部品を活用することから、現地の自主ブランドでの投入とした」と語った。

 

■世界戦略車を用意する欧州勢

欧州メーカーにとっても中国市場は生命線だ。「EVシフト」を推し進める世界戦略の中で、最大市場でつまずくわけにはいかない。

「中国では20年までに15車種、25年までに40車種の電動車両を投入する。総額で100億ユーロ(1ユーロ=133円換算で1兆3300億円)の投資を計画している」。独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース社長が宣言した。

VWはNEV規制対応の1つとして、中国専用のEVを展開していく。中国の江淮汽車(JAC)との合弁で設立した江淮大衆汽車のブランド「SOL」にEVをラインアップしていく。

 

VWの中国専用ブランド「SOL」で展開するEVと電池パック

SOLではJACが量産中のEVと同じプラットフォームを使う。SOLブランド初のEVは、小型SUVのEV「E20X」である。18年第3四半期に発売する予定。JACの小型EV「iEV7S」をベースに開発したとみられる。

VWブランドとしては、20年からEV専用の「I.D.」シリーズを展開していく。中国では、21年までに少なくとも6工場でEVを現地生産できる体制を整える。

 

BMWは北京モーターショーで披露したコンセプト車。20年に量産する「iX3」を示唆した

BMWは北京モーターショーで披露したコンセプト車。20年に量産する「iX3」を示唆した

ドイツのBMWやダイムラーといった高級車メーカーは、ブランド力を生かした戦略を採る。BMWは20年からSUVタイプのEV「iX3」の量産を始める計画だ。価格競争を強いられる日本メーカーとは別の土俵で勝負できる。

 

■中国メーカーは「新世代」が台頭

政府主導のEV推進の波に乗って、中国メーカーの存在感も高まってきた。特に目立つのが、新興のEVベンチャーである。旧来の中国メーカーの多くもEVを販売しているが、デザインや航続距離は似たものが多く、価格だけで比較されているのが現状だ。

こういったメーカーとは異なり、新興勢は競争軸をずらすことに成功しつつある。参考にするのは米テスラ。注目株は、蔚来汽車(NIO)やフューチャー・モビリティー(FMC)などだ。FMCは17年にブランド「BYTON」を立ち上げている。これらのメーカーは、洗練されたデザインや最新技術の積極採用で、旧来の中国メーカーと一線を画す。

 

NIOの大型SUV「ES8」

NIOの大型SUV「ES8」

NIOの最初のEV「ES8」は17年12月に発売し、18年5月に納車が始まったばかり。BYTONは19年末の発売を目指す。両社は米国や欧州にも進出する計画だ。量産化に際しては、旧来の中国メーカーの力も借りる。NIOは広州汽車と提携済みで、BYTONは第一汽車の出資を受け入れた。

EVは部品点数が少ないので簡単に安く造れる、という考えは甘い。価格にブランド力、量産能力─。NEV規制を乗りこなすのは誰か。間もなく19年の決戦が始まる。