日経によると、NTTドコモとAGCは電柱などに自在に巻きつけられる次世代通信規格「5G」向けアンテナを試作した。電波が飛びにくい5G向け周波数帯を活用する場合、隅々まで電波を届けるためには数多くの基地局を設置する必要がある。柔らかい素材を使ったアンテナを構成できれば、電柱の表面や壁など様々な場所に基地局を設置できるようになる。開発を進め、数年かけて実用化を目指す考えだ。30ギガヘルツが対象というから、高価で設置が面倒なミリ波パラボラアンテナよりはるかに楽に低コストで取り付けられる。完成にはまだ数年というが急げら、日本の5G実用化、相当に弾みがつく。
ドコモとAGCが試作したアンテナは、28ギガ(ギガは10億)ヘルツ帯と呼ばれる5G向けの周波数帯の特性に合わせたもの。見た目は写真のフィルムのようで、薄くて曲げやすい柔らかな形状だ。このフィルムには様々な方向にアンテナが配線されているため、電柱などに巻くだけで360度の周囲に電波を飛ばすことができるという。
フッ素材料を使用
電柱などにアンテナを巻いた後は、電波を処理する無線機と接続するだけで基地局設置が完了する。通常の基地局設備は鉄塔などを建てた上でアンテナを設置したり、ビル屋上などにアンテナ設置用の支柱などを構築したりする必要がある。設置が容易なフィルム状アンテナを使うことで、エリア展開を迅速化できる期待がある。
素材は電子機器などのフレキシブルプリント基板に使われるポリイミドにフッ素材料を組み合わせたという。「通常のポリイミドを使った場合、アンテナとして利用するとエネルギーのロスが大きい。フッ素材料を組み合わせることで低損失を実現した」(AGC)としている。
試作物は既にアンテナとして機能するものだが、「雨風や温度など耐久性を実証して、さらに開発を進める必要がある」(同)。今後、実証実験を進めながら数年かけて実用化を目指す考えだ。
フィルム状の素材を使い、あらゆる場所に設置可能なアンテナ技術の開発は他社も取り組んでいる。スウェーデンの通信機器大手エリクソンは、ビニールテープにアンテナを配線し、あらゆる場所に貼り付けるだけでエリアを作れる技術を開発中だ。2019年2月に開催されたモバイル分野で最大級の展示会「MWC19バルセロナ」でコンセプト展示した。
ガラスアンテナも開発
ドコモとAGCは窓ガラスを基地局化するガラスアンテナを18年に共同開発している。19年末から4G向け基地局用アンテナとして既に実運用を開始している。両社は5G向けのガラスアンテナの開発にも取り組み、20年中のサービス開始を目指している。
電柱や窓ガラス、ビルの壁面などに目立たないアンテナが設置されれば、町の景観を崩さずに電波がつながりやすくなる。今後も町中に溶け込むアンテナ技術の開発は加速していきそうだ。