そしてその影響は今、オックスフォード英語辞典(OED)にまで及んだ。英オックスフォード大学が出版する「英言語の権威」である同辞典の最新版には、韓国語から新たに26語が収録された。OEDはこれについて声明で、「我々はみな、韓国の波のてっぺんに乗っている」と表現した。
「英語の海に広がる波紋」
OEDの最新版では、韓国料理の言葉が多く取り上げられた。その一部は以下の通り。
- パンチャン(名詞):野菜の小皿料理。典型的な韓国料理の一部として米飯と共に出てくる
- プルコギ(名詞):薄切りの牛肉や豚肉をマリネにした後、炒めた料理
- キンパ(名詞):米飯とその他の具材をのりで巻いて切った料理
また「イカゲーム」や2020年にアカデミー賞を受賞した映画「パラサイト」、そしてBTSといったエンターテインメント方面での国際的成功を受け、いわゆるK-POP文化からの収録も多かった。
- ハリュ(名詞):韓国のポップカルチャーに対する国際的な関心を指す言葉。音楽や映画、テレビ番組、ファッション、食べ物など多岐にわたる
- Kドラマ(名詞):韓国で制作された韓国語のテレビドラマの総称
- マンファ(名詞):韓国における漫画やコミック文化。多くは日本の漫画の影響を受けている
- モッパン(名詞):出演者が視聴者と話しながら大量の食べ物を食べる配信や動画
OEDは、韓国語が大量の収録された背景には、英語話者が使う言葉の変化があると説明している。
「こうした言葉は、大陸のさまざまな場所に住むアジア人が、現地の文脈の中で言葉を発明・交換し、それを英語話者の世界へ紹介していく流れを示している。その結果、英語の海に韓国語の波紋が広がり続けている」
「グローバル思考のたまもの」
英キングス・コレッジ・ロンドンのイ・ヘギョン博士は、「イカゲーム」や「パラサイト」の輸出が成功したのは、制作陣のグローバル思考に寄るところが大きいと指摘する。
韓国ドラマやK-POPの流行などから文化・美術を研究しているイ博士は、「初期のK-POPの成功から、すでに10年以上がたち、韓国の文化プロデューサーたちはグローバル思考を身に着けた」と述べた。
また、イギリス人をはじめとする韓国人以外の人たちは、地理的・言語的な違いにもかかわらず韓国ドラマに共感することが多いという。
「(韓国ドラマの)登場人物は希望や未来を持たず、ただ生き残るために奮闘しているので」
「こうしたドラマや映画は面白く、世界中の人々の琴線に触れる独特のものを持っている」
「また、作品の中で社会や経済の状況を批判するので、登場人物を通して共感することができる」
その上で、韓国のエンターテインメント業界は文化を作り出すという面で西洋諸国に追い付いており、今後も成長するだろうと分析した。
「技術や能力といった面で最先端を走り、高品質の作品を生み出す力強い能力がある」
近年の韓国文化の流行
イギリスでは少し前から、輸入された韓国文化の躍進が始まっている。
2012年のPhyによる「江南(ガンナム)スタイル」を覚えている人も多いだろう。Phyはこの曲で韓国人ミュージシャンとして初めて、イギリスのヒットチャートで1位を獲得した。
アカデミー賞を受賞した「パラサイト」は、イギリスにおける外国語映画の興行収入1位を記録している。
BTSもイギリスのチャートで初めて、韓国人アーティストとしてアルバム1位を獲得した。
「イカゲーム」は現在、ネットフリックスで最も視聴されたドラマシリーズとなる見通し。イギリスでもトップ10に入っており、視聴者の95%は韓国以外の地域に住んでいるとされる。