ロイターによると、 中国共産党の中央規律検査委員会は2日、傅政華・前司法相(66)を「重大な規律違反や違法行為」の疑いで調査していると発表。習近平・国家主席は昨年以来、公安や司法部門の高官を相次いで失脚させており、習氏への絶対的な忠誠の要求を強めている。
傅氏は数々の大型捜査や取り締まりを率いてきたほか、司法相に就く前の2015年からは気功団体の法輪功など、共産党が「邪教」とみなす団体への弾圧でも指揮を執った。
さらに、孫力軍・元公安次官についても、重大な規律違反や違法行為の疑いとして党籍剥奪の処分を発表している
日経も、中国共産党中央規律検査委員会が、「規律違反」疑いで傅政華前司法相を調査していることを詳細に報じている。
日経によると、傅政華前司法相は66歳になった現役の中央委員でこれまで傅政華が指揮した捜査で捕まった人物は多い。本人が同じく摘発された以上、かつての捜査の正当性にも疑義が生じかねない重大な事態だ。
警察エリートとして君臨し、実績もある傅政華は、習近平に忠誠を誓ったはずなのに突然、失脚した。なぜなのか。純粋な習派ではない「外様」としての経歴である。習側からみれば、能吏ではあるが、決して気を許せない人物だったからだという
習はそもそも警察組織に根深い不信を抱いており、習政権が2期目に入った18年以降だけでも公安次官経験者の摘発は3人目だ。18年には中国が国際刑事警察機構(ICPO)のトップとして送り込んでいた孟宏偉、そして20年4月には孫力軍、そして今回の傅政華である。重慶や上海の公安局長も摘発されている。中国の治安を担ってきた警察上層部は総崩れ状態といってよい。
生き残ったのは誰か。結局、習が信用できるのは肝胆相照らす何十年も前からの知己だけ。警察では若い頃、長く過ごした福建省からわざわざ中央に引っ張り上げた王小洪である。2人は既に30年以上の付き合いだ。
王小洪は20年8月末、意味深な発言をしている。「面従腹背の輩、日和見主義者は徹底的に排除する」。警察関係の機関紙を通じて政治規律に関する号令を発したのだ。面従腹背を意味する「両面人」といった言葉は、共産党の規律処分条例にも盛り込まれている。習が過去の「反腐敗」運動で繰り返し使った特殊な政治用語だ。
王小洪は要人警護チームの責任者でもあり、様々な機密情報を知り得る立場にある。1年前に言及した「面従腹背の輩」の代表として傅政華を想定していたと考えれば一連の動きがつながる。1年前に閣僚から退いた「功労者」を今、あえて摘発するのだから、罪状に政治的問題が含まれるとみるのが妥当だ。
習は9年かけて警察組織の全権掌握を進めてきたが、政治的な安全を完璧に確保しようとすればきりがないく、さらなる大物への波及も噂されるとの事。5年に1度の共産党大会まで残り1年。トップとして異例の3期目を狙う習にとってこれから先が本当の勝負になる。